侵略者を撃つな! 68

 顔面にノートパソコンの直撃を受けた女性を気遣う夫。

「大丈夫か?」

「ごめん、ちょっと眼が・・・」

 と、目尻から一筋の血がたらりと流れてきました。警官の1人がその夫に声をかけます。

「すみませんが、お2人にも事情聴取があります。私についてきてください」

 2人は警官の言われるまま、立ち上がり、そのまま歩き始めました。

 これらの行動を我関せずと見ていた金目家の3人。が、父親の前に腕っぷしの強そうな50代の男性が立ちました。

「お前らがいるからこんなことになったんだ! 出てってくれ!」

 さらに数人の男女が金目家の3人を立って取り囲みます。金目ひなたはその迫力に恐怖を感じました。

 結局金目家の3人は、この飛行機を降りることにしました。


 ここは先ほど金目家が使ってた有料のVIP室。会社の重役らしき白髪の男性が立ったまま大きく頭を下げてます。

「大変申し訳ございませんでしたーっ!」

 その男性の眼の前、ソファに座ってる父親。そばに金目ひなたと母親の姿もあります。父親はかなり厳しい顔をしてます。

「なんであんなクズどもにうちのチケット情報が流出したんだ、ええ?」

 頭を捻る男性。

「それが皆目見当がつかなくって・・・ ネットに侵入された形跡もないし・・・」

「お前らの社員の誰かがネットに書き込んだんだろ」

「そ、そんなことありません! うちの社員に限って・・・」

「うちの社員に限ってて・・・ またずいぶん懐かしいフレーズが出てきたなあ、おい。!

 ともかくこっちとしてはすぐに日本を離れたいんだ。飛行機の用意はできてんのか?」

「はい。午後3時30分発の便があります。今回はこちらの責任でファーストクラスをご用意します。それまでお待ちください」

 父親は腕時計を見ました。

「3時30分・・・ まだ6時間以上もあるのか・・・」

「はい、それまでファーストクラスのラウンジでお楽しみください。豪華な料理を揃えてますので」

「ふん。どうせカメラとノートパソコンだらけなんだろ」

「そ、そんなことありません! ちゃんとチェックしてます!」

 が、この時間ファーストクラスのラウンジには、ノートパソコンやゴープロなどのカメラを持ちこんでる自称ユーチューバーが何人かいました。どうやってここに入り込んだのか? それともほんとうにファーストクラスのチケットを入手したのか? まったくの謎です。

 結局金目家の面々はファーストクラスのラウンジにいっさい顔を出しませんでした。VIP室に籠りっきり。その判断は正解だったようです。

 なお、ファーストクラスのラウンジに潜り込めることができた自称ユーチューバーたちですが、数時間後、なんの目的か、一斉に撤退しました。


 いよいよその時間がやって来ました。まず金目家の3人がファーストクラスに乗り込みました。続いて乗り込む一般の乗客たち。

 なお、今回はファーストクラスとビジネスクラスの間に1人、ビジネスクラスとエコノミークラスの間に1人、いつもとは別の特別な警備員が乗り込みました。ともかくファーストクラスのエリアにビジネスクラスとエコノミークラスの客を入れない作戦です。


 そしてここはファーストクラスのエリア。金目ひなたには窓側の席が与えられました。なんとも広い席。窓4つ分の広さです。しかし、金目ひなたの心の中にはそれを楽しむ余裕なんてありません。いつまたやつらが現れるのか、わからないからです。今金目ひなたの心の中には、不安しかありませんでした。

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