侵略者を撃つな! 14
寒川隊員はメガネをかけました。
「さっき15の夜をリクエストしたの、自分ですよ」
ユランはビクンとしました。そして寒川隊員を見て、
「ふっ、わかったよ。ちょっと付き合うか」
寒川隊員はニコッとして、
「OK!」
ここは今風の居酒屋。今1つのジョッキと1つのグラスがチーン!とぶつかりました。
「乾杯!」
寒川隊員はジョッキに満たされたビールをゴクゴク、プハーッと一気に呑みました。そして眼の前でウーロン茶を飲んでるユランを見て、
「あは、まさか宗教的理由でアルコールはNGだったなんて・・・」
ユランはグラスから唇を離し、
「君の相棒の女の子、すごい歌唱力じゃないか」
「いや~ あなたの歌唱力だって・・・ なんでレコード会社や芸能プロダクションから声がかからないんですか?」
「ふふ、自分は尾崎豊の曲しか知らないんだ。自分の曲は自分で用意しないとその手の話は来ないよ。
それに自分はいつ国に帰るのかわからないんだ」
「え?」
「自分は父親は日本人だが、母親はリントブルム人なんだ」
「リントブルムてヨーロッパの?」
「ああ。リントブルムは長い間レオンアム家が統治してたが、5年前革命が起きてレオンアム家は隣国のシァロに追放された。けど、今度はシァロがリントブルムに侵攻してきたんだ。
リントブルムが西欧化したら、シァロの隣国まで西欧になる。それはシァロにはとっても不都合なこと。シァロはそれをなんとか阻止したかったんだ。
お蔭でリントブルムは荒廃した。毎日のように国民は虐殺されて行った。西欧諸国は何度もシァロを非難したが、実際は介入しなかった。いや、介入できなかったと言った方がいいかな? さすがの西欧諸国でも、シァロとは戦争したくなかったんだ。
リントブルムは我が故郷。そんな国が荒れてくなんて、たまったもんじゃないな・・・ なんとか立て直さないと・・・ 自分もいつかはリントブルムに帰らないといけないと思うんだ」
あまりにも重たい話に寒川隊員は茫然としてしまいました。
「そ、そうなんだ・・・」
今度はユランが質問しました。
「君はなんで尾崎豊を」
「オレはずーっと平凡な生活を送ってました。こんな怠惰な生活を送ってていいのか? とずーっと思ってましたよ。そんなとき尾崎豊の曲を聴いたんです。15の夜。オレがほんとうに15歳のときでした。
オレはその曲を聴いて頭を殴られた気分になりました。これだ、自分が本当に求めてたものは尾崎豊だったんだ!ってね。オレはすぐにギターを手にすると、毎日のようにギターを練習し、尾崎豊の曲を片っ端から覚えました。
中学生から高校生になる間の春休みに初めてライヴハウスに立ちました。まあ、客は3人しかいなかったけど・・・」
寒川隊員は苦笑い。そして発言を続けました。
「でも、そのライヴは結果的に成功でした。初めて高校に行ったとき、4人組のバンドがオレの前に現れたんです。そいつらはその高校の軽音サークルのメンバーで、サークル加入のお誘いでした。そのサークルの1人がオレのライヴを見に来てたんです。
オレは誘われるまま、そのサークルに加入しました。そのバンドは3年生が抜けたせいか、方向性が定まってませんでした。1年生のオレが尾崎豊をやりたいと言ったら、その通りにさせてくれましたよ」
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