君のテレストリアルガード 14
海老名隊員の発言が続きます。
「今日で私は16歳。法律上、今日から結婚できるんですよ」
隊長は横目で海老名隊員を見て、
「前にも言ったろ。オレはテレストリアルガードの隊長という絶対公人なんだ。18歳になるまで待ってろって」
隊長はドアのノブに手をかけました。けど、海老名隊員はさらに言葉を続けます。
「この部屋には監視カメラはありません。私は両手両脚がついてません。襲うんなら今ですよ!」
隊長は再び横目で海老名隊員を見ました。ちょっと怒ってる顔です。
「バカ言うなよ!」
隊長はドアを開け、部屋を出ました。閉まるドア。海老名隊員は残念な顔でドアを見てつぶやきました。
「ばか・・・」
天頂近くに太陽がまばゆく輝いてます。ここはテレストリアルガード基地にある3階建てのビルの屋上。今寒川隊員がギターを弾き、すみれ隊員がそれに合わせ歌を歌ってます。尾崎豊の卒業です。寒川隊員は心の中で感嘆してます。
「すごい! すごい! すごい! これほどまで感情がこもった卒業は今まで聴いたことがないよ! 今はまだ粗削りなところがあるけど、このまま毎日練習すればきっとプロに・・・」
寒川隊員は昔の自分を思い出しました。
「オレは一度プロになるチャンスがあった。けど、条件が合わなかった。オレは尾崎豊みたいな魂で歌うアーティストを希望したのに、向こうはヘビメタやハードロックを提示してきた。だからオレはその話を蹴った。
あのときのオレは、尾崎豊になれる力がなかった。でも、こんなにすごいヴォーカリストがいれば、レコード会社は絶体嫌とは言はないはず。オレはこいつとプロになる!
で、でも、オレもこいつも地球を守るテレストリアルガードの隊員。プロのアーティストになってもいいのか?・・・」
すみれ隊員が歌い終わりました。寒川隊員が話しかけます。
「OK! じゃ、次は僕が僕であるためにを歌おう!」
僕が僕であるために。これも尾崎豊の曲です。その呼びかけにすみれは反応しませんが、寒川隊員は委細構わずギターを弾き始めました。するとすみれ隊員は歌い始めました。これもまた見事なまでのヴォーカル。シャウトぎりぎりで歌い上げます。
ちなみに、すみれ隊員はこの曲は1回しか聴いたことがありません。それでも一言一句間違えずに歌いきりました。
歌い終わると1人分の拍手が起きました。寒川隊員はびっくり。そしてその方向を見ると、隊長がいました。たった今ペントハウスから出てきたようです。
「ブラボー、いい歌声だ!」
寒川隊員が応えます。
「隊長・・・」
隊長が寒川隊員に近づいてきます。寒川隊員。
「隊長、すみません。昼間っからこんなところで歌ってしまって・・・」
隊長が応えます。
「ふふ、何を言う。オレは君に感謝したい気分だ」
隊長は横目ですみれ隊員を見て、
「なんとしてもこいつを元の黒部すみれに戻してくれ。それが今のお前への命令だ」
寒川隊員は笑って、
「あは。ありがとうございます。
オレ、こいつとプロデビューしたくなりました!」
寒川隊員は思わず本音を言ってしまいました。もちろんそれは儚い夢だと重々承知してます。けど・・・
「ふふ、そっか。じゃ、プロになってくれ」
隊長の思わぬ返事です。寒川隊員は驚きました。
「ええ?」
「言ったろ。お前の今の任務は、この黒部すみれを社会復帰させること。そのためだったら何をやってもいいぞ」
想像とは違う応答を聞いて、寒川隊員の顔はぱっと明るくなりました。まるで天にも昇る気分です。
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