君のテレストリアルガード 11

 そうです。これらはいつものテレストリアルガードサブオペレーションルームの光景です。ただ、上溝隊員の姿がないようです。

 と、引き分けの自動ドアが開きました。5人が一斉に振り向くと、そこに上溝隊員が立ってました。上溝隊員は後ろを見て、

「さあ、入って」

 すると黒部すみれが現れました。黒部すみれはテレストリアルガードの隊員服に着替えてます。テレストリアルガード黒部すみれ隊員の誕生です。隊長は思わず立ち上がりました。

「うん、なかなか似合ってるじゃないか」

 隊長は右手ですみれ隊員の左手首を掴み、

「さあ、おいで」

 隊長は自分の横にすみれ隊員を座らせました。

「一緒に見よう!」

 隊長は着席して、再びアニメを見始めました。けど、すみれ隊員はアニメにはあまり興味がないようです。ま、当たり前ですよね。いい年こいてアニメに熱狂してる人はほんの一握りですよ、隊長。

 すみれ隊員はちょっとキョロキョロして、そして寒川隊員を見ました。寒川隊員は相変わらずノートパソコンで音楽を聴いてました。

 寒川隊員は頭で軽くリズムを取ってます。上機嫌です。が、その顔に何かの影が。寒川隊員ははっとして顔をあげました。そこにはすみれ隊員が立ってました。寒川隊員は慌ててイヤホンを取り、

「う、どうした?」

 すみれ隊員は黙ったままです。寒川隊員は自分の掌の上のイヤホンを見て、

「なんだよ。これ、聴きたいのか?」

 すみれ隊員は静かにうなずきました。寒川隊員は目の前のイスを見て、

「そっか。じゃ、ここに座って」

 すみれ隊員はその席に座りました。隊長は横目でこの様子をずーっと見ています。

 寒川隊員がすみれ隊員に無線のイヤホンを渡しました。そして自分の耳を指さして、

「これをここに入れてごらん」

 すみれ隊員は自分の耳にイヤホンを刺しました。その瞬間、すみれ隊員の顔が驚きに変わりました。初めて見せる喜怒哀楽です。寒川隊員はそれを見て、

「ふふ、どうだ。これは尾崎豊て人が歌ってる曲だぞ」

 曲を聴いてるうちにすみれ隊員の眼が輝いて行きました。曲が終わるとすみれ隊員は、

「ふぁ~」

 という感嘆な声を発しました。その声を聞いて隊長ははっとしました。そして立ち上がり、すみれ隊員と寒川隊員の前に来ました。

「ふっ、ようやく感情を出してくれたか!」

 寒川隊員はその隊長に、

「隊長、オレの部屋にこの人を連れてっていいですか?」

「ああ、いいけど、手は出すなよ」

「ふふ、わかってますよ」


 寒川隊員の私室です。一本引きの自動ドアが開き、寒川隊員と彼に連れられたすみれ隊員が入ってきました。

 寒川隊員は元ロックンローラー。いつもテレストリアルガードの隊員に自分の曲を聴かせたいと思ってますが、だれも興味をもってくれません。今日やっと自分の曲に興味を持ってくれる人が現れたのです。これは聴かせるしかありません。

 寒川隊員はさっそく部屋にあったアコースティックギターを持ち、ベッドに腰かけ、弾く体勢に。

「これはさっき聴いてた曲だよ」

 と言うと、寒川隊員はギター弾き語りで歌い始めました。熱唱です。さすがにすみれ隊員は引くかと思いきや、それとは真逆に熱心に聴いてます。その眼はキラキラ輝いてます。

 なお、すみれ隊員は立ったまま聴いてました。ふつーはイスに座らせて聴かせるものですが、寒川隊員はそんなマナーも忘れて熱唱してました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る