赤ン坊殺しの英雄 16

 プレハブ小屋の中、今ドアが開き、リポーターを先頭にカメラクルーが入ってきました。プレハブ小屋の中には園児服を着た幼児が20人ほどいて、みんな床にべたーっと座ってます。全員泣いてます。その前には日本刀のような武器を持った田村佐恵子がいました。田村佐恵子は不気味に笑いました。

「ふふ、ようこそ」

「うっ・・・」

 リポーターは一瞬ビビリましたが、すぐに気を取り直し、田村佐恵子に質問しました。

「な、なんで子どもたちを誘拐したんですか?」

「ふん、さっきから言ってんでしょ! 私はテレストリアルガードの橋本に会いたいの!」

 テレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。テレビを見ている橋本隊員。

「あんにゃろーっ、実力行使に出やがったな!」

 再びプレハブ小屋。

「それに須賀至と長瀞瑞樹、この2人も連れて来て。この3人が来ない限り、誰1人解放しないわよ」

 女性リポーターの質問。

「もし来なかった場合は?」

「ふん」

 田村佐恵子は足下にいる女の子を見ました。比較的大きなクマの縫いぐるみを抱いた園児です。

「貸して!」

 田村佐恵子は女の子から無理やり縫いぐるみを奪い取りました。そのとき女の子の身体は引きずられ、前方に倒れました。

「うわっ!・・・

 ママーっ!」

 女の子はけたたましく泣き始めました。それを見て女性リポーターは唖然としました。

「もし来なかったら、ここの子どもたちはこうなるよ!」

 と言うと、田村佐恵子は手にした縫いぐるみを放り上げました。落ちてくる縫いぐるみを凝視してる田村佐恵子の眼。

「ふふ。

 てやーっ!」

 田村佐恵子は日本刀のような武器を横一文字に振り抜きました。すると縫いぐるみの胴体と首が分離。さらに田村佐恵子は武器を真横に何度も振ります。

「ふん! ふん! ふん!」

 ばらばらになった縫いぐるみが床に落ちました。ビビるカメラクルーたち。

「うう・・・」

 田村佐恵子は武器の切っ先をカメラに向け、

「待ってるぞ、橋本!」


 再びテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。隊長が橋本隊員を見て、

「どうする?」

「そりゃあ、行かなきゃならんでしょ!」

「ふふ、わかった。よし、橋本と倉見と寒川はオレと一緒に来てくれ」

「はい!」

 隊長は女神隊員を見て、

「それに女神隊員」

「あ、はい!」

「ちょっと行ってきて欲しいところがあるんだ」

「え?・・・」


 テレストリアルガード基地の門。普段は女神隊員の単眼を狙ってるマスコミがたむろってますが、今日はこんな事件が起きてるせいか、さらにたくさんのマスコミが集まってました。

 そこに基地内からワゴンタイプのクルマが1台現れました。テレストリアルガードのカラーリングが施されてます。運転してるのは寒川隊員。助手席に隊長。後部座席には橋本隊員と倉見隊員がいます。それを見てマスコミが騒めきました。テレビ局のリポーターが慌ててマイクを握りました。

「あ~ たった今、テレストリアルガードの基地に動きがありました!」

 テレストリアルガードの車両がけたたましくクラクションを鳴らします。けど、マスコミもなかなかスクラムを解きません。クルマは低速です。

 車内。隊長がハンドルを握る寒川隊員を横目で見て、

「そうそう、そのスピードで」

「はい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る