私が愛した男《ひと》 13
お弁当屋さんのワンボックス車が3階建てのビルの前に停車し、そこから乗員が降りました。その数4人。ちなみに、運転席から降りた人はいつもサブオペレーションルームにお弁当を届けてる人です。
ワンボックス車のテールゲートが開き、4人はそれぞれ弁当が入った大きな箱をそこから取り出しました。
運転手の人の発言。
「それじゃ、いつものようにお弁当を配ってください!」
ほかの3人が応えました。
「はい!」
この光景を数メートル向こうから見ている眼があります。しかし、姿はありません。
運転手の人がビルの自動ドアの脇の装置にカードを差し、次にその横のテンキーをピッピッピッと押しました。すると引き分けの自動ドアが開き、4人が建物の中に入りました。閉まる自動ドア。が、その直前、1つの見えない人影が建物の中に入ったようです。
箱を持って廊下を走るお弁当屋さんの1人。運転手の人です。と、お弁当屋さんは何かを感じたようです。ふと立ち止まり、振り返りました。
「ん?」
しかし、お弁当屋さんの後ろには誰もいません。いや、正確には見えない人がそこにいるのですが、お弁当屋さんには絶対認識できない存在でした。
お弁当屋さんは首をひねり、はてなのボーズ。
「おかしいなあ。誰かついてきたような・・・」
お弁当屋さんは再び前を見て走り始めました。と同時に、彼を尾行してた見えない人影も動き始めました。
サブオペレーションルームの引き分けの自動ドアが開き、お弁当屋さんが入ってきました。
「ちわーす、猫猫弁当でーす!」
オペレーションルームのコンソールの前に座ってた女神隊員が振り返りました。頭にはいつものフルフェイスのヘルメットがあります。
「あ~ いつもいつもご苦労さん」
女神隊員はお弁当屋さんが持っていた書類にハンコを押しました。
「今日は減塩弁当はなくっていいんですね」
「今日は必要ないんですよ。いつも減塩弁当を食べてる隊長がいないから」
「あは、そうですか」
お弁当屋さんは自動ドアを開け、出て行きました。
「それじゃ、また~」
女神隊員は弁当の1つを持つと、それを海老名隊員の手元に置きました。
「はい」
「あ、ありがとえ。でも、今日は食べられないような気がするんだ・・・」
「食べられるだけ食べればいいんじゃないですか?」
「うん」
女神隊員はもう1つの弁当を持つと、オペレーションルームのコンソールの前に座りました。そしてヘルメットを取りました。すると女神隊員の特徴的な単眼があらわになりました。地球人の眼が10コ以上入っても余りある巨大な眼です。
女神隊員はお弁当のふたを取りました。その瞬間、出入り口の自動ドアが開きました。女神隊員ははっとしてその方向を見ました。
「ん?」
しかし、開いた自動ドアには誰もいません。
「あれ?」
次の瞬間、何もない空中で何かがピカッと光りました。光弾です。光弾が飛んできたのです。
海老名隊員はインターネットに夢中でしたが、女神隊員の
「うぎゃっ!」
という悲鳴を聞いて、慌てて顔を上げました。
「え?」
女神隊員はコンソールにもたれかかる状態で倒れてました。顔に被弾したようです。パネルやモニターには脳しょうが飛び散ってます。驚く海老名隊員。
「え? め、女神さん?・・・」
そのとき、海老名隊員の耳がカチャッという音を捉えました。海老名隊員はその音がした方向を見ました。するとやはり何もないところで何かが光りました。次の瞬間、海老名隊員の額のど真ん中に光弾が命中しました。
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