神の国を侵略した龍 21

 2人の前にタクシーが停まりました。白い帽子の女性は、タクシーのトランクに持っていたかばんを入れました。女性がトランクを閉めると、隊長はその女性に会釈しました。女性も帽子を取って会釈しました。その女性の眼にカメラをフォーカスすると、眼はふつーに2つありました。それを見てパパラッチたちはがっくしです。

「ちっ、なんだよ。眼がふつーに2つあるじゃんか!」

 隊長が後部座席に座り、タクシーが走り始めました。


 そのタクシーの車内です。今隊長の横に頭が1つすーっと現れました。それはウィッグをかぶった女神隊員です。実は女神隊員は始めっからタクシーに乗ってたのです。ずーっとうずくまっていて、ここでようやくふつーの姿勢になったのです。隊長はその女神隊員を見て、

「あんたも大変だなあ」

 女神隊員は白い帽子を被りながら、

「あは、もう慣れました」

 隊長はタクシーの運転士に話しかけました。

「あ、運転士さん。下溝通りと片倉通りの交差点に行ってくれないか」

 タクシーの運転士はテレストリアルガードの基地に行くつもりだったので、ちょっとびっくりです。

「ええ?・・・ あ、はい、わかりました」

 隊長は女神隊員の白い帽子に注目しました。

「ん? 今日は魔女の女王クィーンの帽子じゃないのか?」

「あは、あれはやめました。女王は最後、脳みそを銃で腐っ飛ばされた挙句、自爆するんですよね、木端微塵に。私は自爆したくないですよ・・・」

「あは、そっか。でも、あの話には続きがあるんだぞ」

 それを聞いて女神隊員の声色は急に変わりました。

「え、続きがあるって・・・ あの女王、生きてるんですか?」

「いや、あの女王は死んだよ、自爆して」

「やっぱ死んだんじゃないですか・・・」

「けどな、輪廻転生の女神様に導かれて生まれ変わるんだ」

「う~ん、なんか都合が良すぎるような・・・」


 タクシーは快調に走ってます。車内では隊長と女神隊員の会話が続いてます。隊長の発言です。

「しかし、恐ろしいほど強い怪獣だったな。オレたちゃ6人も病院送りにされちまったな。えびちゃん以外全員・・・」

 今度は女神隊員の質問です。

「あの怪獣はなんだったんでしょう?」

「さあな、オレもわからんよ。ま、これはオレの推測だが・・・

 あの怪獣はどこか別の次元からやってきた。そしてまた別の次元に消えて行った。あの怪獣は次元の壁を乗り越える能力を有してたんじゃないか」

「あの怪獣は死んだんでしょうか?」

「さあなあ、さすがにそれはわからんな・・・ どちらかと言えば、あの怪獣に剣をぶっ刺したあんたの方がわかるんじゃないのか?」

「あは、私にもわかりませんよ。でも、剣で刺したとき、意外と手応えはなかったんですよ」

「そっか。じゃ生きてんかもな」

 タクシーの運転士が隊長に呼びかけました。

「そろそろ言われた場所に着きますが?」

「ああ、そっか。じゃ、その信号の手前の駐車場に入ってくんないか」

 タクシーが言われた通り、駐車場に入りました。なんとそこは牛丼屋でした。それを見て女神隊員は唖然としてしまいました。

「あ、あの、隊長?・・・」

 隊長の側のドアが開きました。隊長はそこから降りる体勢です。

「塩分か? お前も上溝と同じことを言うのか?」

 隊長はタクシーから降りたところで振り返りました。

「塩分が濃いみそ汁さえ飲まなきゃ、別に問題はないだろ。先に基地に帰っててくれ」

 隊長の発言はあきらかに不機嫌。それを聞いて女神隊員は再び呆れてしまいました。

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