神の国を侵略した龍 20

 女神隊員の剣は怪獣の左側の翼の付け根にぐさりと刺さりました。そのまま2つの身体は絡み合って地面に激突。その瞬間剣はさらに深く刺さり、怪獣は悲鳴をあげました。

「うぎゃーっ!」

 針葉樹に吊るされたままの橋本隊員は、それを見て思わずガッツポーズ。

「やったーっ!」

 が、その右腕に激痛が。

「あたた・・・ ちっ、骨折か?」

 一方女神隊員の身体は山肌を転がり、ダム湖に落ちてしまいました。怪獣は消え消えの意識の中で、湖畔の道路に手をかけ、陸に上がろうとしている女神隊員を見ました。

「あは・・・ やっぱり女神だ。とても強いや・・・」

 怪獣は最後の力を振り絞って、翼をはためかせ、浮上しました。と、怪獣の目の前に巨大な魔法円が現れました。

「この次元には何もなかった。あったのは私の敗北だけだった・・・」

 怪獣は魔法円の中に入っていきました。そして魔法円は消えました。女神隊員はそれをただ見送りました。


 それから数時間後、ここは隊長が入院してる大病院。その1人部屋の病室のベッドに上溝隊員が寝かされてます。その左脚には骨折治療用のコルセットがあります。上溝隊員はつぶやきました。

「ああ、もう・・・」

 別の1人用の病室のベッドに寒川隊員が寝かされてます。その左腕には骨折治療用のコルセットがあります。寒川隊員はつぶやきました。

「参ったなあ・・・」

 別の1人用の病室のベッドに倉見隊員が寝かされてます。その右脚には骨折治療用のコルセットがあります。倉見隊員はつぶやきました。

「くっそーっ・・・」

 別の1人用の病室のベッドに橋本隊員が寝かされてます。その右腕には骨折治療用のコルセットがあります。橋本隊員が申し訳なさそうに発言しました。

「すみません・・・」

 その橋本隊員を香川隊長が見てます。隊長は車いすに乗ってました。

「まったくお前ら、揃いも揃って・・・ おまえらのせいでオレは今日退院になったよ。まだ1週間は寝てなくっちゃいけないていうのにさ・・・」

「女神がいるじゃないですか」

「おいおい、あいつはストーク号の操縦免許もヘロン号の操縦免許も持ってないんだぞ。それ以前にクルマの免許も持ってないし・・・

 そーいや、さっき警察から抗議の電話が来たなあ。あいつ、バイクを盗んだうえに、そのバイクを無免許で乗り回したんだそうだ」

「バイクを? それで現場に来たんですか?」

「ああ、その通り。こいつはいくらなんでも正当な理由だろう。この抗議は無視することにしたよ」

 隊長は車いすを回転させました。

「じゃ、今から退院の手続きをしてくるよ」


 すでにあたりは暗くなってます。ここは病院の玄関の前です。今自動ドアが開き、白いワンピース・白い帽子姿の女性と、ロフストランドクラッチをついた私服姿の隊長が出てきました。それを遠くから見ている2人1組のパパラッチが色めき立ちました。

「お、おい、あれはテレストリアルガードの隊長じゃなのいか?」

「じゃ、隣りにいる女はヘルメットレディ?」

 パパラッチたちは慌ててカメラのシャッターをバシャバシャと切り始めました。超望遠レンズを取り付けた一眼レフカメラです。

「よーし、特ダネだ!」

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