神の国を侵略した龍 11

女は立ち上がると、

「ほっといて!」

 と怒鳴って、歩き始めました。2人の隊員は、

「お、おい!・・・」

 が、2人はすぐに諦めたようです。

「しょうがないなあ・・・」

 と言って、別の方向に去って行きました。

 女の足取りはかなり重そう。息もかなりきつそうです。

「くっそーっ、痛い、全身が焼けるように痛い・・・ こんなに痛めつけられたのは、いつ以来だ?・・・

 どうやって帰ろう。ふふ、神の国を侵略した罰かな・・・」

 女の耳にふと異音が聞こえてきました。女が顔を上げると、ヘリコプターが飛んできました。報道用ヘリコプターです。そのヘリコプターが女の頭上を通り過ぎて行きました。

「くそーっ、ヘリを飛ばすなと言ってんだろ! ぜんぜん心音が聞こえないじゃないか!」

 突然の怒鳴り声。女ははっとしてその声の方向を見ました。すると数人の捜索隊員が集まってました。捜索隊員たちは何か探索機械を持ってます。女は思いました。

「この世界には、微細な心音を聞ける魔法の機械がるのか?」

「いたぞーっ!」

 女はその声の方向も見ました。そこにも数人の捜索隊員がいます。すでに穴が掘られていて、今その穴の中から女性の身体が出てきたようです。が、捜索隊員がその身体に触れると、顔色が変わりました。

「だめだ、死んでる・・・」

 捜索隊員が女性の死体を引きずり出しました。すると別の捜索隊員が叫びました。

「赤ん坊だ! 赤ん坊がいるぞ!」

 その捜索隊員は赤ん坊の身体を抱き上げました。でも、すぐに顔色が変わりました。

「だめだ、こっちも死んでいる・・・」

 別の複数の捜索隊員がそれを見て、

「かわいそうに・・・」

「母親が身を挺して赤ん坊の命を守ろうとしたのに、その苦労は水の泡か・・・」

 その光景を見て、女は何か複雑な思いになってしまいました。


 女はさらに進むと、不思議な光景を見ました。先ほどと同じユニホームの捜索隊員数人が、手を合せ祈ってるのです。捜索隊員の前には穴が掘られてました。

 その反対方向を見ると、女性とその幼い息子とさらに幼い女の子がいます。女性と男の子は必至に祈ってますが、幼い女の子は理解してないようです。母親と兄にしつこく訊いてます。

「ねぇ、お父さんは? お父さんは?」

 それを見て女は愕然としてしまいました。女は今までいろんな次元の国を侵略してきました。そしてたくさんの町を破壊してきました。彼女にって町を破壊する行為は、最高の娯楽だったのです。しかし、自分が破壊した町がその後どうなったのか、一度も確認したことがありませんでした。初めて見たその光景は、あまりにも残酷でした。女は思いました。

「ひどい・・・ 私は今までこんなひどいことをしてきたの?・・・」

 と、女は突然ふらっときて、立っていられなくなり、その場にへたり込んでしまいました。

「あは、ついに天罰がきた。ここまでか・・・」

 女は自分に駆け付ける2人の男を見ました。しかし、ここまで。女は気を失ってしまいました。


 ここはふつーより高級な病室。ベッドは1つだけ。

「ありがとうございました!」

 ベッドに寝かされてる隊長に女神隊員は立ったまま頭を深々と下げました。彼女の衣服は病院服で、頭にはウィッグなど単眼を隠すものはありません。自動翻訳機のヘッドセットがあるだけです。隊長は立ち上がることができないようで、そのまま首を横に倒し、女神隊員を見ました。

「よせよ。お前だって医者に寝てろって言われてるんだろ。自分の病室に帰って、すぐに横になれよ。これは命令だ!」

「はい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る