女神

女神の一番長い日 ３

　隊長は隣のシートの隊員に命令です。

「よし、離陸！」

「離陸します！」

　ストーク号が垂直離陸を開始、ヘロン号も垂直離陸を開始しました。垂直離陸というと通常下向きのジェットエンジンかヘリコプターのような回転翼を使いますが、両機ともそれがありません。まったくの無音です。実は２機とも反重力エンジンを使ってるのです。これはヴィーヴルから供与された軍事技術の１つです。

　隊長は再びヘッドセットのマイクに向かって発言しました、

「ヘロン号、位置情報を入力したか？」

　ヘロン号は縦に２座席の軍用機で、今２座席ともテレストリアルガードの隊員が座ってます。ベテランの隊員と若手の隊員です。こちらは２人とも戦闘機らしく、ヘッドアップディスプレイにマスクを装着してます。隊員の１人が隊長に応えました。

「はい、いつでもジャンプできます！」

「よし、ジャンプ！」

　隊長が号令をかけると、なんとストーク号もヘロン号もぱっと消滅してしまいました。

　ここは山に囲まれた町。空の青さがさらに増してきました。その上空にストーク号とヘロン号が忽然と現れました。瞬間移動、テレポーテーションです。これもヴィーブルから技術供与された軍事技術の１つです。なお、２機とも空中に無音で静止しています。

　ストーク号のコックピット。一般隊員がモニターを確認してます。

「チェック、オールグリーン！　機体に問題はありません！」

　隊長が応えます。

「了解！」

　一方こちらはヘロン号のコックピット。若手の隊員が下を見てます。下は新興の住宅地。鉄道の駅も見えます。

「おいおい、ここに墜ちてくるっていうのか？」

　再びストーク号のコックピット。今女性隊員から無線が入りました。

「隊長、墜落地点はさらに西になりました！」

「よし、通常飛行で西に行くぞ！」

　３人の隊員がそれに応えます。

「了解！」

　ストーク号とヘロン号のジェットエンジンが点火。２機が急発進しました。

　西へ西へと向かうストーク号とヘロン号。その真後ろから太陽が昇ってきました。さらにその太陽の中から巨大な何かが飛び出してきました。

「未確認飛行物体です！」

　それはシンプルな長方形の物体でした。その飛行物体がストーク号の真上を通り越して行きました。ストーク号は巨大な飛行機ですが、飛行物体はその数倍はありそう。隊長はそれを見上げて驚きました。

「思ったより大きいなあ、こりゃあ･･･」

　隊長の横に座ってる一般の隊員がつぶやきました。

「なんなんだ、こりゃ？･･･」

　板のような飛行物体は全面ダークブルー。表面は滑らかに加工されてるようです。が、ところどころボコボコになってます。どうやらスペースステーションＪ１に攻撃され、被弾した跡のようです。隊長はそれを見て、

「こりゃあ、かなりやられてんな･･･」

　一方ここはヘロン号のコックピット。若手隊員が再び下を見ました。そこは果てしなく続く森林地帯です。

「よかった。ここなら人は住んでなさそうだ」

　が、ベテラン隊員の意見は逆でした。

「いや、わからんぞ。登山者がいるかもしれないし･･･」

「この時間に登山者ですか？」

　いよいよ飛行物体は墜落寸前の高度となりました。ストーク号の一般隊員がそれを見て、

「まもなく地上に激突します！」

　と発言。隊長がそれに応えます。

「爆風と衝撃波に気を付けろ！」

「はい！」