第621話 とある乗り鉄の人4

賢島駅へと到着したのは12時前。その後の俺はしばらく賢島駅周辺を散策していた。


次に乗る予定の電車は賢島駅13時30分発名古屋行き特急。1時間30分ほど時間があるため。駅に着いてからは、まずお昼ごはんを食べていた。賢島駅のところにあったカフェ。喫茶店で昼食タイム。少しここでのんびりと昼食を楽しみ――その後はあまり遠くまでは行く時間がなかったため。徒歩圏内を散策。ちょっと海の方を見に行ったりして――乗る予定の電車の発車時間の15分前くらいには賢島駅へと戻ってきていた。

これが今だ。少し早めに戻って来たのは――お土産を買うためだ。いや、親がね。行くなら何か買って来いということでね。この後まだ名古屋に寄ってからなので荷物が増える――だが。まあせっかく来ているので、まず賢島にてお土産を買うことにしていた。改札近くのコンビニでいろいろ売っていたため適当にそこで商品を購入して、その後は賢島から名古屋への特急券を購入しに窓口へと向かった。


窓口で特急券を買った後は既に電車はホームに止まっていたので、僕は改札へと向かいだした。滞在時間短っ。と言われるかもしれないが。僕の目当ては電車に乗ることなのでね。ちなみにだが、賢島から名古屋間は通常の特急である。本当はこの後に出る近鉄名古屋行き特急。えっと――14時40分発の電車は伊勢志摩ライナーで名古屋方面への1日1本のノンストップ特急だったので、こちらも乗ってみたい――だったが。今回はひのとりの発車時間もあるので、賢島から名古屋へは普通特急を選択した。まあしまかぜという選択肢ももちろんあったのだが――しまかぜも時間の都合でね。今回はひのとりが最後に待っているので――うん。これはこれでいいんだよ。それに普通の特急に乗ってから、ひのとりに乗った方が豪華さがさらにわかりそうだったんでね。などと思いつつホーム内を僕が進もうとしていると――。


「いやー、急にすみません。おまけにこんなたくさんもらっちゃって。がははははっー」


どこかからか。よく知っている声。今日午前中に何度か聞いた声が唐突に聞こえてきたのだった。


「いいの――わざわざ――らって――もうホント――良ければ」

「いやいや、あいつはいいやつですよ。ホント。がはははっ」

「——ますね」

「がはははっ。ホントバタバタですみませんね」

「いやいや——に拾ってもらえるなんて」

「がははははっ」

「——」


電車へと向かっていた僕の足は止まり声の方を――見てしまった。いやさすがに反応するよ。うん。まさか!?って感じでね。ってことで声の方を見てしまった僕は――距離はそこそこ離れているのだが――とってもとってもとってもとっても――知っている姿をまた見つけてしまったのだった。


あの身体の大きな人は、行きの電車で僕の前に居た人。今は――男の人と女の人と一緒に駅のロータリーのところで話していた。男の人と女の人の声ははっきりとは聞こえてこなかったが――身体の大きな人の声ははっきり聞こえてきていた。

どうやらあの身体の大きな人も――用事が終わったのだろうか?なんか雰囲気的に――話し合い?でも終わって――いい感じにまとまって、これから帰るところのように僕には見えた。えっ?まさか帰りの電車も同じ――って……それはないか。そうだよな。あの人は――どこだっけ?上本町?鶴橋?だったかな?あの辺りから乗って来た人なのでね。僕がこの後乗ろうとしている電車は名古屋行き。なので大阪方面に帰るであろうあの身体の大きな人は僕の乗る予定の特急には乗ってこないだろう。多分だが――この後に出る14時発の大阪難波行き特急に乗るために駅に来たのだろう。


僕はそう思いながら、このまま立ち止まっていると怪しまれる。気が付かれる可能性があったため。この後発車の名古屋行き特急。以前は近鉄の特急といえばオレンジと紺色の車両だったが。今では……これは白とオレンジ?黄色かな。うん。色が変わった特急車両へと乗車するために僕は再度歩き出したのだった。そして特急券を見つつ号車を確認して、その後は指定番号の席へと向かったのだった。


ちなみに余談だが。今の色の特急も好きだが――うん。オレンジと紺色の特急も好きだよ。うん。今も――臨時列車用で数両オレンジと紺色の特急は残っているみたいだが――営業運転では乗れないのでね。あっ、そういえば、まだ大井川鐡道では近鉄の特急車両走っているのでは――うん。ちょっと調べてみようか。乗りたくなったよ。


ちょっと余計なことを考えつつ座席に座った僕。

車内はかなり空いており。数えれるくらいしか今のところ人は乗っていなかった。多分途中の駅から増えてくるとは思うが――まあお昼の電車なのでね。観光に来た人はもう少し後の電車に乗るか。などと僕は思いつつ。僕は再度特急券を見つつ近鉄名古屋駅への到着時間を確認する。近鉄名古屋到着は15時37分。予定通りだ。このまま問題なく走ってくれれば近鉄名古屋駅16時25分発のひのとり766列車には、余裕で間に合う。

ちょっと名古屋駅でも余裕をもって――という時間設定をしているのは、先ほどと同じ理由だ。お土産をね。買う時間が必要なんだよ。ギリギリの時間設定だと――なのでね。せっかく言ったのに何もお土産ないのかよ。的な事を言われてもなのでね。僕はそんなことを思いつつ。ひじ置きのところに収納されているテーブルを出して、先ほどお土産とともにかった飲み物を置いた。まったり移動する準備OKである。すると車内アナウンスが流れだした。どうやら発車時刻になったようだ。

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