第586話 お寝惚け電車2
大晦日。夕方に海織が俺の部屋へと登場して――俺がなんか嫌な予感がするのだが――と思っているのが今である。あっ、訂正。思っているではなく。確信しただな。うん。海織のこの笑顔。キラキラしているこの雰囲気は――危険である。
「今年は暇ってことだから――今から終夜運転乗りに行こう!」
ほら。
唐突に俺の前で話していた海織がそんなことを言い出したのだった。
うん。今回もホント突然にですね。ホント突然。びっくりというか。毎回毎回いろいろ思いつく海織さんすごい――かな?
俺の記憶があっていれば、最近の海織との話題で、終夜運転の話とか全くしていなかったはずなんですが――うん。唐突に海織がそんな提案をしてきたのだった。
そうそう終夜運転とは、近鉄が行っていること――でいいよね?ちゃんとまだ聞いてないからもしかしたら違う鉄道会社の事――といきなり海織が言う可能性も無くはないが――でもこのあたりといえば近鉄がメインで――JRはどうなんだろうか?しているのかな?ちょっと俺も乗車回数が少ないため――うん。その情報は今のところ持ち合わせていない。でもまあほぼほぼ近鉄の事だろうということで話を進めようと思う。
はい。終夜運転とは大晦日から元旦にかけて走る電車の事だ。
普段は深夜の時間帯に走る電車というのが無いのだが。大晦日から元旦にかけて臨時列車でいいのかな?初詣に行くためにかな。ずっと深夜。夜中も電車が走っていることである。そりゃ日中の本数では走らないが――でも深夜帯でも特急などが走る。
まあ確か全路線ではないがね。
今年の近鉄の終夜運転の予定というのは、俺は乗る予定がなかったため。ちゃんとは見てないので違うかもしれないが。基本名古屋、大阪から伊勢志摩方面で、この家の最寄り駅。湯の山線などは――多分走らないかな?まあメインのところだけだと思うが電車が深夜帯の時間帯を走ることを終夜運転という――でいいかな?
「もしもーし楓君?」
「あっ。ごめんごめん」
「聞いてる?」
「大丈夫です。聞いてます」
「ほんとかなー?」
ちょっと余計なことを考えていたため、海織の返事に遅れてしまった。
不思議そうに海織に顔を覗き込まれて――近い近い。そんな眉毛一本一本が見えるくらいまで近寄る必要ないよね?わざとだよね?まあちょっと余計なことを考えていた俺がいけないのだが――などと思いつつ。俺はこれ以上海織に近寄られてもなので、余計なことを頭の隅へと追いやったのだった。
「で、行こう」
「……マジですか」
「うん」
「ま、まあ俺は良いんだけど――ホント決定が急なことで」
「ふと思いついてね。せっかく予定のない年末年始だったし。電車乗りに行く方が楓君喜ぶかなーって。あっ、それとも楓君は年末年始2人で怪しいーコトしている方がいいのかな?にひひー。私はどっちでもいいよ?」
「明らかに海織がおかしなことを考えている顔をしているため。お出かけを採用しましょうかね」
「いいのかな?ニヤニヤ」
「ニヤニヤしない」
「にひひー」
誰かこの暴走娘さん何とかしてほしいですね。よからぬことをたくさん考えているのか。顔が溶けそうなほどいい笑顔でニヤニヤして――近寄ってきます。ってか完全に手が届く範囲まで近くに来てますね。何で室内でこんなに接近しているのでしょうか――。
「はぁ……って、海織。なんかいろいろ考えてもらって――って、あれ?」
いつも通りの海織だ。と思ったその時だった。あれ?何か頭の記憶の奥で――というちょっとした。ホントちょっとした引っ掛かりを俺は覚えていた。
「——?どうしたの楓君?」
「いや――なんか。ふと引っかかることが――うん」
「うん?あっ。もしかして楓君やっぱり寝てた?お寝ぼけさん?あっ、私の予想通りだった?」
「いや、寝てま――せんよ?」
「えー、怪しいなー監視カメラ仕掛けておけばよかった」
「そんなことしなくていいですから。ってかしないように」
「それはしてほしいっていうフリ?」
「違います」
――なんか海織さんがいろいろ言ってますが――まあ俺は、ちょっと寝てましたが。そんなに記憶があやふやということはありません……ありませんよね?うん。でも、海織と話していると、なんか引っかかることがある気がするが――何かを考えていた――お出かけ……?うーん。わからないです。
まあとりあえず余計なことを考えていると海織が楽しむネタを提供するだけになってしまうので再度俺は余計なことを頭の隅へと追いやったのだった。
「で、お寝惚け楓君行くでいいのかな?」
「お寝惚けは余計ですね。でもまあ予定はないし。乗って見たかったというのもあるから――って、今から行くんだよね?」
「うん。思いついたら行かないと」
「……本当に海織も思いついたら即行動なのね」
「あっ、でも夜ご飯だけ食べてから行こうか。食べ損ねてもだからね」
スマホで時間を確認しつつ海織が言った。まあ時間的には今からどっかへ――といってもなのでね。まあ店は開いているだろうが――うん。混んでいる予想が俺も出来たので――。
「あー、まあ確かに。どのくらい人が居るのかはわからないけど。だね。うん。ご飯は食べてからの方がいいかも。お参りは――どこに行くかだけど。まあすごい人だろうからね」
「——うん?楓君楓君」
「うん?」
「電車に乗りに行くんだよ?」
「——えっと――それはわかってるって――もしかして、お参りは入ってないと?」
海織が不思議そうに。あと電車。という言葉を強く言ってきたため俺が一応確認すると――。
「うん。さすがに混んでいると思うからね。だから。電車乗りまくりの年末年始ってどうかなー。って。初詣はまた行こうよ。まあ行ってもいいんだけどね」
うん。今回は電車オンリー年末年始見たいです。
ってことで、俺の平和な年末年始という予定は――早々に崩れたみたいです。さてさてこの後どうなるのか――。
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