第485話 続・ボウリング6

――――。


「あー、曲がって曲がって―」


七菜が念力でも送るかのように投げたボールに向かって手を動かしている。


「—―惜しい」

「むー、曲がらなくていい時に曲がって欲しい時に真っすぐいったー」

「でも七菜、上手いよ。ちゃんとピンに当たってるから」

「でも私もストライクバンバン欲しいですよー」


そんなことを言いつつ七菜がボールを投げてこちらへと戻ってきた。


現在俺たちはボウリングをプレイ中。まあこちらはこちらで楽しんでいます。

ちなみに既に2ゲーム目の後半である。

まあ2人で交代交代投げているだけなのでお隣よりは早く進んでいます。


あー、そういえばあまり触れなくてもいいかと思いますが――1ゲーム目の結果は大変悲しい結果となりました。はい。


俺—―何か溝掃除が多すぎて――うん。41点だったんですけど。これ低いですよね。はい。めっちゃ低かったです。


最初こそ、ピンに当たったー。だったのだが――その後悲しくなりました。

何故かどんどん横にボールがそれていき――途中5回連続ガーター?うん。溝掃除をしていました。レーン傾いてない?とか思いましたよ。はい、さすがにその時は悲しかったですね。七菜にも励まされてました。

あとは――。


「加茂先輩、普通に投げてるように見えるんですが――変化球の練習?」


みたいなことも七菜に聞かれました……もちろん俺がそんな練習をするわけなく。普通に投げていたのに急にカーブ。とか意味の分からない動きをボールがしていたんです。はい。


とまあ1ゲーム目……俺は悲しいことになりました。

ちなみに七菜は――72点。うん。俺から見れば高得点なんですよ。でも七菜は隣のレーンを見つつ……。


「……隣見ちゃうと――めっちゃ悲しくなりますね」


そんなことは1ゲーム目が終わった時につぶやいていたが――いやいや七菜よ。七菜が悲しかったら俺――なんて表現したらいいの。だったのでね。


まああそこから俺と七菜はとりあえず今のは久しぶりだったから練習練習。ということで、2ゲーム目を開始したのだった。


まあ2ゲーム目はまだマシだったな。

うん。マシだった。


やっと七菜とともに楽しむというか――うん。俺と七菜は隣を完全に気にしない事にしたのでね。


「さあ、加茂先輩。そろそろストライク見せてください」

「いやいやヘッドピンに当たらない俺にそれキツイ」

「大丈夫ですよー。そろそろ出ますって」


七菜にそんなことを言われながら投げる俺。


――ポン。


うん。綺麗に1本だけピンを弾き飛ばしたのだった。音か――空しい。


「加茂先輩。隅っこ好きですね」

「なんかね。そっちに流れるんだよね」


苦笑いしつつボールが戻って来るのを待っていると……。


――スパン!


「「……」」


うん。俺と七菜。黙るというか。何かもう次元が違い過ぎて――横を見ると固まっていた。


ちょうど今は柊がお隣でスペアをとっていた。


うん。固まったところで、隣の1ゲーム目の結果をお知らせしておこうか。

ちょうど先ほど終わったみたいなのでね。


結果。


海織164点。斎宮さん170点。柊――193点。


もうなにも言わなくていいかな?うん。いいよね?触れなくていいよね?さっきの俺の点数みんな覚えているよね?うん。おかしいんですよ。レベルが。

ここ――プロというか――うん、上級者が隣に居るんです。はい。

俺と七菜から見れば。2ゲーム。3ゲームしての合計点数をさらっと1ゲームで3人ともに出されているんですよ。はい。俺に関しては、もしこのまま3ゲームとも41点だと……海織にすら勝てないという。うん。何かもうおかしいんですよ。はい。全然手も足も出ないというか――うん。帰りたくなりますね。

だからあのチームには入りたくなかったのです。はい。

あの中に――41点が居たら……ですからね。


って柊が1位だったので――。


「な――!?なんで柊に負けたの?意味わかんない。柊不正した!?」


斎宮さんのお怒りが少し聞こえてきていましたね。

まあ柊曰く。始める前にも言っていたが。最近やったのと、以前行った後も何回か行く機会がそこそこあったから、調子がいいとか言っているのが聞こえましたが――はい。変にこちらに話が来てもなのでね。このくらいにしておきましょう。


俺と七菜は隣とは触れないように普通に2人でボウリングという遊びを楽しんでいます。って固まったままでしたね。ということで。再開。


「……よし」


やっと2回目を投げる俺……結果。


――ポン。


また端っこのピンだけが綺麗に吹き飛んだ。


「……加茂先輩、両端1本ずつの方が難しいと思います」


後ろを見ると七菜が拍手をしながらそんなことを言ってきた。


「……狙ってないからね?」

「もしかして私を楽しませてくれようと。わざとレベルを下げてくれてますか?」

「いやいや勝とうと本気。これマジで」

「まあ加茂先輩は優しいですからねー」

「ははは――マジでなんで狙ったところに行かないんだろうか……」

「ってことで私行きます」


俺と交代して七菜が――投げる。すると――。


――ドン。


ちょっとまたボールが浮いたのだが……そのまままっすぐボールは転がって……。


――――パタ……パタパタパタ……。


「お……おっ!キター!」

「す、すごい」

「先輩!ストライク!いぇーい!」


ドミノ倒し。とでも言うのだろうか。中心に刺さった。うん。刺さった七菜のボール。そしてそのまま綺麗に後ろへとピンが倒れていき――こちらのレーン初のストライクが2ゲーム目で誕生したのだった。


パチパチ……。


俺が拍手で迎えると――。


「さあ次は先輩です」

「ははは。ヤバイ。また七菜と点差が出来そう」

「ファイトです」


ストライクで機嫌が良くなった七菜に背中を叩かれつつ俺はボールを取りに行ったのだった。

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