第432話 紛失?喪失?4

ガチャ。


玄関の方で鍵の開く音とドアの開く音が聞こえてきた。

俺の家に勝手に入って来れる人と言えば……と俺が思っていると。


「ただいまー。ってあれ?なんか靴いっぱい……?どうなってるの?楓君?」


うん。海織の声が聞こえてきた。


「あっ、海織ちゃんかな?」

「鍵を持っているのは海織です。他に居たらびっくりだわ」

「じゃお出迎えしてこようかなー。七菜ちゃんも行く?」

「あっ、はい」


斎宮さんと七菜が玄関の方へ行き……すぐに女の子3名の声が玄関の方から聞こえてきていた。


そしてその間に男2人は……。


「で、楓。復元方法とか?」

「ない」

「実はできたりしないのか?」

「無理」

「そこを何とか?」

「無理なものは無理」

「……」

「か」

「なんかあるのか!?」


うん。柊が目を輝かせたが……そんないい情報ではない。


「いや、お金払って……。復元とか?」

「……地味に高そう」

「まあ卒論も大切と言えば大切だが……再度作れなくないものに大金はね……」

「あー。やっぱり作るしかないのか……間に合うのか?」

「いろいろ言っている間に再開した方がいいかと」

「……確かに」

「もうそんなに時間はないからね」

「やるしかないのか……ってことで楓。サポート」

「お疲れ様でした」


俺は柊に頭を下げた。うん。俺のサポートはここで終了という意味だったのだが……伝わらなかったらしく。


「いやいやなんで!?」

「いやいや自分の方だけで大変だから」


俺が距離を取ろうとしても……柊が寄ってくる。何だ来れだな。


「そこを何とか。少しくらいは俺のも覚えて居るだろ?」

「いや……欠片レベルでだし……そんな詳しくはさすがに他の人の覚えてないよ。それにデータとかそんなのも見てないというか……うん。わからないから」

「……マジでやばいな」

「だから早く始める事をお勧めするって言ってるじゃん」

「ってことで楓の部屋をしばらく借りる」

「なんでだよ」

「食事が出てくる。癒しの宮町さんも居る。最近はかわいい後輩ちゃんも居る。俺の家だと暴力女しかいないし」

「意味が分からん」


とかなんか男2人が話していると……。


「楓くんー。海織ちゃんがデパ地下スイーツ買ってきたから食べよー」


斎宮さんの声とともに机の上にケーキ?の箱が置かれた。


「朝ご飯からおやつまでが早い」


と。俺がつぶやくと……。


「ただいま。楓君」


後ろから海織の声がした。俺は振り向きながら……。


「おかえり。お早いお帰りで」

「さすがにね。七菜ちゃん所の鍵とかカバン持ったままだと……だから」


海織は大きめのカバン1つで帰宅した。まあ昨日持っていたやつですね。ちょっと顔を見せに行ったという感じか。と俺が勝手に思っていると……海織は俺の横に座った。


「あー。朝から移動はは疲れるよ」


座ると同時に海織はそんなことを言っていた。


「ならゆっくりでもよかったのでは?七菜はここに居るのわかってたし」

「あれー。楓君は七菜ちゃんと2人で居たかったのかな?」

「違います。ってか。荷物は確認して持って行きましょう。七菜めっちゃ昨日気にしてたし」

「あはは。だね。七菜ちゃんおいで。甘やかしてあげるから」

「な。何ですか。それ」


海織の後ろに立っていた七菜がちょっと下がったが……。


「あっ私も七菜ちゃんかわいがりたい」

「はい!?」


隣から斎宮さんの手が伸びてきて……七菜確保。そして海織も七菜を捕まえに行ったので……うん。七菜お疲れ様。という感じだった。


そんな光景を俺は見た後。とりあえず飲み物が要るかな?ということで俺は飲み物の準備をすることとした。

その際2人の声が聞こえたが……。


「楓ー。タイトル忘れたー」

「加茂先輩ー、助けてくださいよ」

「……」


うん。2人の声が聞こえたが……今は飲み物の準備を優先することとした。


それから俺が飲み物を5人分……地味に多いな。うん。なんで俺の部屋こんなに賑わっているんだ?とか思いながら飲み物の準備をすると……おやつタイムが始まった。

なおそこに普通に柊が参加していたのだが……柊よ。パソコンの画面は数文字で止まってますが?だった。


少ししておやつタイム終了後……。


「宮町先輩ありがとうございました。昨日買えなかったのが食べれました」

「いいのいいの。荷物間違っちゃったからねー」

「私は朝から柊に付いてきてラッキー。ってか海織ちゃんなんで余分に買ったの?」

「あっせっかくだからあとで沙夜ちゃん所に持って行こうかなー。ってちょうど思ってたんだよ」

「さすが海織ちゃん!」


なんか斎宮さんが海織に抱きついてますが……それはいいか。と思っていると。


「楓ー。書き始めが忘れたー」


うん。柊はうるさい。であった……これ卒論が出来ていたところまで出来ないと……ずっと柊はうるさいのかな……と俺が思っていると。


「あっ。そういえば。私ちゃんと聞いてないけど。白塚君は何をバタバタしてるの?」


そういえば海織には柊の事をちゃんと話してないか。と俺が思っていると斎宮さんが笑いながら説明を開始した。


斎宮さん説明後……。


「……っていうこと。で朝から楓くんの家に乗り込んでいたってこと」

「なるほどね。それは大変だね」


斎宮さんの説明が終わると、海織も状況がわかったらしく……ってあれ?なんかにやけてる?うん。なんか海織の表情が気になるが……と俺が思っていると。


俺の腕が引っ張られた。


「楓ー」

「柊。人を呼びすぎ」

「仕方ない。沙夜に聞いても何も答えてくれないからな」

「ははは……」

「白塚先輩。ダメダメですねー」


すると俺の横に七菜が来て柊のパソコンを覗き込んだ。ってか……七菜?再度言うが……柊は先輩だぞ?と俺が思っていると……。


「後輩にぼろくそ言われるのもありだな」

「……加茂先輩。おかしい先輩が居ます」

「……うん。居たな」


なんか柊が七菜に対しておかしいというか……いろいろなものに目覚めそうだな。と俺が思っていると……。


「ところで白塚君」

「うん?なに?宮町さん」

「私さ。何回かに1回あった。みんなにも製作途中の卒業論文を見てもらう。って時に白塚君からもらった紙まだ持ってると思うよ?12月の時くらいのだったかな?」

「「「「……」」」」


海織がそう言った瞬間4人が海織を見たのだった。

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