第400話 帰宅後

「柊早く歩く。電車乗り遅れるよ」

「俺のメンタルはボロボロだ……」

「早く行けって言ってるの!」

「痛っ!?マジで蹴るなよ!?」

「……あの。マジで時間が時間だから人の家の前で騒がないで」


現在俺の部屋の玄関にて斎宮さんと柊がそんなこと言い合っていた。


玄関に居るということは……お帰りになるという事です。うん。よかったよかったである。柊がこの部屋に置いていかれるということはなく。普通に自分で歩いて帰れるみたいですからね。それもよかったである。

なお。今の「痛っ!?」という柊の声は普通に歩くスピードが遅かった柊が後ろから斎宮さんに蹴られたからである。

まあ先ほどの室内のやり取りで蹴られることは確定していたので……斎宮さんが有言実行した。というところですね。

っか、斎宮さんは斎宮さんで……柊相手の時は人変わるよね……と俺は思いつつ。とりあえず。騒がないでね。という事を2人に言っているところだった。


すると俺の後ろから……。


「沙夜ちゃん。スマホ忘れてる。沙夜ちゃん」


部屋の中から海織が斎宮さんのスマホを持ってやって来た。


「あっ。ホントだ。ごめんごめん。机の上に置いてそのままだった。ありがと海織ちゃん」


斎宮さんがちょっとこちらに戻って来て……海織からスマホを受け取った。


「いえいえ、じゃ、沙夜ちゃん気を付けてね」

「うん。またねー。楓くんも七菜ちゃんも」

「あっ。うん。また」

「今日はありがとうございました」


七菜は海織の横でぺこりとお辞儀をした。


「あー、海織ちゃん。ホント七菜ちゃんかわいいね」

「でしょー。抱きしめたくなるんだよね」

「わかる。うん。良い香りだし」

「いい香りだねー」

「ちょ。先輩方!?」

「海織。斎宮さん。玄関で騒がないで。あと何度も言うけど次の電車。川島駅05分ですから。23時05分だからね?」

「おー、楓くんは海織ちゃんが居ながら……七菜ちゃん派ですか」

「話聞いてないというか……斎宮さんは何を言っているのでしょうか?」

「ホント楓君には困ったものだよ」

「海織も何を言ってるのかな?」

「先輩方……元気ですね」

「……ははは。っか真面目に電車乗り遅れるよ?」


うん。なんかそんなやりとりの後……気が付いたらボソボソ言っていた柊は少し離れたところをすでに1人で歩いていたので……って多分斎宮さんが付いてきていないことに気が付いて……るな。こっち見たわ。


「沙夜。置いてくぞ」

「はいはい。後輩ナンパしておいて。自由なんだから。じゃ。乗り遅れるとだから行くね」


と。斎宮さんが小走りで柊を追いかけていき……俺と海織。七菜が見送っていると…。斎宮さんが飛んだ。そして――。


「ぐはっ――!?って何するんだよ。沙夜。危ないだろうが」

「ぼーっと歩いてるからでしょうが。ナンパ男」

「何がだよ。後輩ちゃんと話していただけだろうが。っか後ろから飛び蹴りはないだろうが!?マジ危険だからな」

「うるさいなー」


うん。柊が再度後ろから斎宮さんに蹴とばされていたが……まああれがあそこの普通なのかな……っか斎宮さん……運動神経いいよな。と俺が思っていると。


「じゃ。楓君私七菜ちゃんとお風呂入ってくる」

「「はい!?」」


うん。海織がそんなことをいきなり言ったので俺と七菜が同時に海織の方を見たのだった。もう柊と斎宮さんの行動は見ることなく。海織を見たのだった。


「七菜ちゃんまたゆっくり話そう」

「えっ。いや……またですか?」

「もちろん。七菜ちゃんも楓君の事聞きたいでしょ?何かの時に使えるかもしれないし」

「海織。マジで何を話しているのでしょうか……この前もなんかそんなことを言っていた気がするが……」

「にひひー。まあまあ。あっ今日はちゃんと着替えとか自分で持って行くからねー」


そういいながら海織へ部屋の中へと戻って行った。


「七菜。今のうちに部屋に戻った方がいいんじゃないか?」

「ですね。そうします」


と。七菜も自分の荷物を持っていたらしく。そのまま靴を履いて……。


「じゃ。先……」


と。言いかけたところで。部屋の中から……。


「七菜ちゃん。七菜ちゃん所の部屋の鍵ここにあるよ?」


と。室内から海織の声が聞こえてきて……。


「—―えっ?」


自分のカバンをチェックする七菜。そして……。


「なんで!?」


海織の方を七菜が驚いた顔で見た。


「……海織。何してるの」


俺が声の方を見ると……ちょうど海織が着替えやらやらを持って玄関へと戻って来た。その手には鍵が1つ。かわいいキャラクターの小さなぬいぐるみ?を付けた物を持っていた。


「さっきね。七菜ちゃんがスマホとか出した時にカバンからこぼれてたから回収しておいたよ」

「人の物を回収しないように。そして拾ったらその場で渡すように」

「てへっ?」


俺と海織がそんなやりとりをしていると……。

俺の後ろに居た七菜が小声で……。


「先輩。実は宮町先輩が一番ヤバイ人だったりします?」

「……それはあるかもしれない。前も言ったけど……ホント何かとうん。気を付けて。だね」

「……やっぱり私関わる人を間違った?」

「ははは……」

「あっ加茂先輩は大丈夫ですよね?」

「一応普通のはずなんだけどね……」

「普通なのに……美少女彼女さん居て。友人になんか人の事をチビと言ってくるダメな人と。もう1人かわいいお友達さんが遊びに来る加茂先輩……」

「七菜。途中になんか変な事混じってなかった?」

「そうですか?普通に……チビって言われたから。ですけど」

「……ホント根に持ってるのね」

「チビじゃないですから」

「ははは――」


七菜と話していると。


「じゃ、七菜ちゃん行くよー」


そう言いながら海織が七菜の背中を押していった。


「やっぱり捕まりましたか」

「七菜。お気をつけて」

「加茂先輩。私が叫んだら助けに来てください」

「その場合下手をすると本当にお巡りさんが来る可能性があるかと」

「あっ。そうですね。どうしようかな……」

「七菜ちゃん。ほらほら。楓君の弱点教えてあげるから」

「海織はホント何を後輩に教えているのかな?」

「先輩の弱点は……知っていたらいい事あるかも……」

「七菜。聞こえてる。っか知ろうとしない」

「宮町先輩。行きましょうか」

「ちょっと!?」

「楓君。女の子2人のお風呂に突入はダメだよ?」

「しませんからね!?」


うん。なんか5人から3人に減ったのだが……。

まだまだバタバタしているアパートの一角でしたとさ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る