第389話 ~過去~ 楓の好きな時間8

「楓君。反対方向あったよ。13時35分と16時35分湯の山温泉発の難波行き特急あるよ」

「あー、海織。それ、13時35分は名古屋行きだよ」

「えっ?なんで……あっ名古屋行きだ。ごめんごめん。難波行きの隣だったから勝手に難波行きに見ちゃった」

「ってか。名古屋行きということは……四日市でスイッチバックか」

「あっ、スイッチバックってあれだよね。急な山とかを電車が走る時にする。えっと……走る向きが変わる?っていうやつだよね」

「そうそう。まあ近鉄四日市では単に湯の山線からだと名古屋へ行く線路が向きを変えないと……だからなんだけどね」

「あとその前には12時35分発に四日市行きの特急もあるね。ってこれだけあるってことはそれなりに?というか結構特急利用されていたのかな?」

「どうだろう……さすがにその頃の事はわからないからね」

「でも走ってるってことは。利用があったんだよね」

「だと思うよ」


うん。2人で時刻表見ながら勝手に盛り上がっています。

はい。なんやかんやでホント宝探し……いや、これはまちがいさがしか。とりあえず今は無いものを時刻表の中から見つける……という感じで俺と海織はずっと話しながら時刻表を見ている。


ちなみにずっと話している感じだが、先ほど紅茶のおかわりを海織が淹れてくれたため。俺と海織はまあ第2ラウンドというのか。うん。まだ時刻表のページがほとんど進んでいない気もするが……その中でずっと話し続けているが喉を枯らすことなく。近鉄の昔の時刻表を見る。ということを今もしている。


さすがに古いものだったからか。ページが取れそうになっているところもあるが……まあ問題なく今のところ2人で見ているな。


「そういえば。さっきマークが少ないな。って事話したけど。伊勢志摩ライナーのマーク出てこないね。メインのはずなのに」

「あー、そういえば。まあこれは大阪から名古屋だからじゃないかな?伊勢志摩ライナーは名古屋大阪から伊勢志摩への列車だから。多分今見ているところは…。あれ?でも鳥羽行きや賢島行きも乗ってるか……ってことは、多分全部の列車が載っているわけじゃないんじゃないかな?」

「そういうこともあるんだ」

「だと思うけど……まあ見ていったらわかるかと」


とか話しつつ俺が時刻表をめくると……あー、そうそう先ほどから俺が時刻表を持っています。はい。以上現状の報告でした。


「あっ、楓君。伊勢志摩ライナーのマーク発見。って……これ東京から伊勢志摩になってる!?」

「ホントだ……新幹線の時間が書いてある」


うん。確か俺と海織は近鉄の時刻表を見ていたはずなのだが……ページをめくるといきなり新幹線出て来たよ。だった。


「あれかな?東京。関東からのお客さんを伊勢志摩に、のためかな?」

「だと思うよ。名古屋駅での乗り換え時間の事とかも書いてあるから……だね。観光用というか。なんかすごく力を入れているのがわかるね」

「だね。ってか……伊勢志摩ライナー。ノンストップ?停車駅少ないね」

「あっ。確かに」


海織に言われて再度時刻表を見てみると……特急のみのぺージなのだが。上部には新幹線。東京から名古屋までの電車の時刻表が簡単に書かれていて……まあ名古屋駅で乗り換えできます。というのがわかりやすく書かれていたのだが……うん。その中で伊勢志摩ライナーのマークがある時刻を見てみると…。


確かに海織の言う通り。伊勢志摩ライナーは他の賢島行きの電車の停車駅と比べると……うん。簡単に言えば。三重県北部全通過だった。名古屋を出たら—―宇治山田までノンストップ。途中の駅には止まりません。というやつだった。


確か今も名古屋発の電車の中には――土日だったかな?賢島行きの特急。伊勢志摩ライナーが桑名や四日市。白子。中川、松阪とかの通常の特急が停車する駅を通過して……名古屋を出ると津、伊勢市、宇治山田—―と停車駅の少ない特急があったと思うが……今見ている特急は……津も伊勢市も止まっていなかった。


「これ名古屋を出ると1時間10分くらいドアが開かないってやつだね」

「ホントだね。確かに止まらずに一気に伊勢志摩。って言うのはなんか旅行とかで乗るなら……いいかな。観光列車に乗ってるみたいで」

「あー、確かに。今だとしまかぜが近いかな?停車駅少なくて伊勢志摩へ。だから」

「だね。あー乗りたいなー。しまかぜも」

「ホント。どこかでタイミングが……あと予約が取れたら。だね」

「うん。ってか。これ下半分は東京から奈良、吉野の時刻表なんだね」


海織が指差す方を見ると……うん。確かにまた違う時刻表が書かれていた。


「観光に力入れてるね。新幹線に乗って名古屋や……京都に来た人を各観光地に…。って感じかな」

「なるほどね……あっ楓君。吉野から東京のところにさくらライナーのマークあるよ」

「あっ、ホントだ。行きのところは……無かったから。あれか。たまたま東京からの電車で乗れる電車になかったのか……」

「かな?新幹線が付く前の時間は省略されているみたいだったからね。でもこれすごいよね。東京06時07分の新幹線乗ったら……名古屋に07時43分に着いて。08時10分の鳥羽行きに乗ったら……途中乗り換えがあるけど。10時19分には賢島駅に着くんだよねー。早い。今だともう少し早くなっているかもだけど……なんか東京って遠い感じだけど。これ見ると乗り換え……1、2回だけで伊勢志摩まで行けるんだよね」

「だね。なかなかの距離を移動してるんだけどね」

「なんかこれ見てると簡単に行けるって思うよね。何回もいろいろと乗り換えがあると……だけど。上手に乗れば1回の乗り換えでいいんだからね」


と時刻表を見つつちょっと旅?気分というのかは微妙だが……まあ海織とそんな会話をしていた。って予想以上に盛り上がっている状況だった。


だからこの時の俺と海織は――全く時間など気にしていなかった。

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