第297話 内部線制覇へ8 ~伊勢若松駅19時30分発~

平田町駅19時12分発の伊勢若松行きの普通電車に乗った俺たち4人。現在はお腹も満たされそれぞれの家へと向かっているところである。


そう。それぞれの家に。である。ここ重要である。


「えー、帰らないとダメなの?」

「いやいや、自分の家に帰るのが普通です」


現在俺と海織がそんなことを話している。

ちなみに斎宮さんが柊の横から俺たちの座っているシート。海織の横へと移動してきている。そして……。


「まあ、確かに通り道なんだよね?」


斎宮さんが話しに入って来た。


「そう。伊勢若松から普通に乗れば楠駅はすぐだからね」

「ぶー」

「ブタになった海織ちゃん」

「ぶーぶー」

「これはこれでかわいいなー」


とまあ、えっと……。

今は俺が海織にちゃんと家に帰るように。と言っているところ。ちょっと斎宮さんの言う通りブタになってしまっているお方も隣に居るが……。

いや、今もちょっと話の中にあったがね。

現在俺たちが乗っている鈴鹿線の電車は名古屋線の伊勢若松駅へと向かっている。そして伊勢若松駅から名古屋、四日市方面に行く普通電車に乗れば数駅で楠駅。

まあ……急行だと通過しちゃうんだが……とりあえず。海織の家の最寄り駅。楠駅を通るわけで……普通は家に帰るよ?的な話をしていたところである。


ちなみに……気が付いたら柊は夢の中らしい。1人平和そうに寝ていた。あちらはあちらで食べてすぐ寝る。でブタになるとか……うん。誰も言う雰囲気が無いというか。こっちはこっちで話が進んでるので……斎宮さんと海織。柊が居る事忘れてそう。である。


「と、とにかく。ちゃんと海織は帰りましょう」

「えー、ってまあ、ポッコリお腹見られるのはちょっと恥ずかしいから帰ろうかなー」


とか言いながら自分のお腹を触りつつ何故か……悪い笑顔でこちらを見る海織。


「いやいや、なんで普段見せているような言い方?」

「えっ……楓くん普段からそんなことを……」


そして多分海織の事は理解しているであろう斎宮さんも……うん。わかっていてニヤニヤしている。


「あのですね。車内ですので2人ともお静かに」

「見てるよね?」


海織もニヤニヤ、もうヤダこの2人。


「……海織さん?聞こえてた?車内」

「にひひー。でもまあ今日は帰ろうかな。着替えの整理。準備もしたいし」

「……その準備がなんなのか気になるが……」

「さあ何でしょうか?」

「この2人車内でもイチャイチャとか。仕方ないことで」


やれやれと言う感じで斎宮さんが言っているが……うん。斎宮さんそんなことを言いながらめっちゃこの状況楽しんでる。うん。間違いない。


そんなことを話していると電車は19時22分。短い旅だったが。伊勢若松駅へと到着した。

ちなみに駅に着く直前に柊は起きて……。


「うん?なんだ?」


とか言っていたが。大丈夫である。柊の事は何も話してない。うん。

伊勢若松駅に到着しホームに降りた俺たち。そして乗り換えるため名古屋方面の電車を確認をする。

降りた隣のホームが名古屋方面なのですぐに次の電車は確認できた。

次の電車は……急行の名古屋行き。うん。急行だった。


「あっ、楓君。次急行だから。これはあれだね。楓君のところに行け!だね」


と、喜んでいる海織だが……まあ俺が先ほどのお店で調べないわけはない。最近のネットはたくさんの情報がありますからね。


「大丈夫5分後に普通あるから」


俺がホームに掲示されている時刻表の方を指さしつつ言う。急行の5分後には普通電車がある。


「ぶー」


海織もそれを確認したらしく。今日何度目かのブタバージョンに。


「今日の海織ちゃんブタになる確率が高いねー」

「普段からも結構あるよ?」

「そうなの?」


俺と斎宮さんで話していると……。


「楓君。変な情報を流さないでよー」


俺の脇腹を海織が突っついて来た。


「……事実かと」

「もう。でも、今日は帰るよ。うん。明日行くからね」

「……すぐじゃん」

「にひひー」


と、海織と話していると。


「っか楓ー」

「うん?」

「これ乗るのか?」


と、先ほどから会話に入れてなかった柊がこちらに声をかけてきた。

現在伊勢若松駅の構内には次の電車名古屋行きの急行の案内が始まったところだ。


「あー、うん。俺は海織がちゃんと降りること確認したいから俺は次の普通で行こうかと……」

「楓君ー?ちゃんと帰りますからからねー?」


と、海織が再度脇腹を突っついてくる。


「海織はわからないからね」

「もう」

「なんか楽しそうだから私も楓くんたちに付いていこー。っと」

「俺は……急いではないが。早く寝たいしなー。じゃ急行乗るか。早く帰れるしな」

「……まあ急行だから四日市には早く着くよ?」

「だろうな。そりゃ急行だからな。普通より遅かったら意味ないからな。まあじゃ俺は先に乗って行くか。楓ー。沙夜頼む。むしろそのまま引き取ってくれてもいい。ゆっくりしたいからな。美味い物食って静かに平和に寝る。最高じゃん」

「蹴とばす」


とまあ斎宮さんが進みそうになるので制止。ここ駅なのでね。おまけに急行がもうすぐ入って来るので。


「斎宮さんやめて。ホームで暴れないで。今は」

「……大丈夫だよ。わかってるから、ニヤニヤー」


と、斎宮さんがなんか……海織みたいににやけているが……まあいいか。

ということでここから別行動となることに。まあ柊が先に急行に乗るだけなんだがな。急行の方が四日市まで早く行くのは当たり前だし。普通より停車駅が少ない以前に……発車時間が急行の方が先だからな。これでこの後発車の普通が早いとかだとね……なので。


そして19時30分。伊勢若松駅から急行が発車する時間。


「じゃ、俺は一足先に帰るわ。おつー」

「ああ、わかった。こっちは海織見ておかないとだから。何するかわからないし」

「楓君。さっきもそれ言ったー」

「まあ何度でも言わないとだから」

「楓君が意地悪だー」

「仲良いなー。ホント。だから面白そうだし私もこっちー」

「まあ俺は1人でゆっくりで快適だわ。これなら蹴られることもないしな」


と、柊は手を振りつつ急行電車に乗り込んでいき……ドアが閉まった。

俺と海織。斎宮さんは柊が乗った電車を見送る。ちなみに次の普通電車はすぐに伊勢若松駅に入って来た。


そして俺たち3人も伊勢若松駅にやって来た普通電車に乗り込んだ。


急行はそこそこ人が乗っていたが。普通電車はポツポツと人が乗っているだけだったので俺たちは入り口付近の空いていたところに座った。


そうそう。ちなみに先ほど俺は柊に対して「じゃあまた」とは言ってない。

なんか海織の横に居る斎宮さんは俺の行動がわかっているみたいだが――まあいいか。そのうちわかるな。うん。

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