第260話 クリスマス10 ~近鉄四日市駅23時16分発~

近鉄四日市駅についてから。ちょっと乗り換えに時間があったためコンビニをぶらぶらしていた俺と海織。


現在は伊勢志摩、大阪方面のホーム。まあ海織の家のある楠駅方面のホームに移動してきたところ。うん。たくさんではないがまだまだホームに人は居た。やっぱり四日市の方まで出てくるだけでも人の多さが違いますね。うん。


まあ名古屋とかから帰って来た人が多い感じかな?とか俺は思いつつ。

普通電車は2両編成か。3両編成なので停止位置あたりへと移動する。


「ねえねえ楓君」

「うん?」

「なんか忘れてない?」

「えっ?」


ふと海織に言われて考える俺……が。特に何かを忘れていることはないと思うのだが……。


「—―なんで楓君はポケットに手を突っ込んでいて。私の手が冷たい思いをしているのかな?ってのが1つ」

「ほう」


と、海織の方を見ると……うん。なんか手が差し出されました。


ちなみに俺は片方の手で先ほど海織が買ったコンビニの物が入った袋を持っている。そしてもう片方の手は寒かったのでポケットの中。


うん。どうやら海織は―—。


「手を繋ぎたかったから……拗ねていると?」

「拗ねてないよ?」


と、言いながらちょっと口がとんがった海織だった。うん。ちょっと拗ねているみたいです。うん。いやまあ……コンビニから移動している時にここではくっついてこないんだな……とかは思ったけどさ。

湯の山線ホームからコンビニに行くまでの少しの距離では普通に人目も気にせずくっついてきていたからね。


っか。なんか試されて?いたのかな?俺は――。


「……まあ寒いからね」


と。海織のポケットから手を出して海織の手を握ってみると――。


「うわー、珍しく楓君が手を握って来たー」


と、言われました。はい。海織の顔がニヤッとしていました。完全に……遊ばれている気がします。はい。一気に恥ずかしくなりました。


「……」

「楓君が今度は無視をしてきたー」

「—―海織。お静かに」

「ふふー」


結局電車が来るまでなんか楽しそうにしている海織でした。


23時16分。

伊勢中川行き普通電車に乗り近鉄四日市駅を出発。海織の家へと向かう。


車窓は……真っ暗ですね。ちなみに……手を握ってあげてから?というのか何故かさらにご機嫌の海織さんですね。今も離してくれないという。うん。まあいいんだけど。


ご機嫌の海織はついさっき斎宮さんからメッセージが来たらしく。今はスマホをポチポチ中。


なので俺は車窓をぼーっと見ているという。ってか。正面のガラスに自分たちの姿が写っている。と言った方がいいか。外が暗いと自分の姿がガラスに写ってよく見えるからね。


――すると。


「楓君。見てみて」

「うん?」


海織が自分のスマホの画面をこちらに見せてきた。


「白塚君から。クリスマスプレゼントだってー」

「……」


と、ここで俺はあることに気が付いた。


「小物入れかー。沙夜ちゃんは白塚君センスないー。とか言ってるけど。こっちに送ってきたから喜んでいるんだろうね。ね?楓君」

「う、うん。だね」


……クリスマス。ね。

そういえばケーキを作ってもらえる。と楽しみにしていたが……そうだよね。クリスマスだ。プレゼントの事とかすっかり忘れていた――うん。何も準備してないですね……ヤバイね。嫌な汗が……。


「ニヤニヤー」


なんか隣で海織がニヤニヤと声に出しているのは――もうバレている?いや……うん。何とか……ならないがちょっと考えさせて。お願いである。うん。ちょっと時間を……。


俺が1人焦っていると電車は23時28分。楠駅に到着。

とりあえず電車から降りて……改札を抜けて……あっ、さすがに改札では手を離しましたよ?そして改札を出たところで再度手を繋いで……というか次は捕まりましたね。で、海織とともに歩きだしました。


ちなみに俺は――言い訳考え中です。まあこういう場合。普通にというかストレートに忘れていたから……と言って。後日どこかに……というのがいいのでは?と頭でまとまって来た時に――。


「楓君。手汗がすごいね何か悪い事気が付いちゃった?」

「な、えっ?」

「うそー」


と、隣でニヤニヤしながらこちらを見てる海織。いやいや一瞬ホント焦ったよ。俺そんなに?って。


「いや、まあ――そのちょっと言いにくいのですが……」

「うんうん。なにかな?」

「……なんでそんなに積極的なの?」

「えっ?だって結構前から気が付いてるよ?あー、これは楓君プレゼントの事忘れてるなー。って」

「……バレてる。完全にバレてる――」


うん、気が付かれてました。バレています。はい。


「もし家にプレゼントがあるなら何があっても家に帰ろうとしたはずだからね」

「……」

「それにさっき私言ったじゃん。ってのが1つ。って、いつ楓君が焦った顔するかなー。って楽しみにしてたんだよ?まあもしかしたらシークレットでカバンの中に何か忍ばせている……っていう確率もあったけど……ここのところの楓君は家と大学の往復しかしてなかったからね。それは低いかなーって」

「……俺の行動が把握されている……」

「ちなみにネット通販とかでの買い物もわかってるよ?」

「えっ?なんで!?いやマジでなんで――」


うん。それはホントなんで?である。確かにたまに買うことはあるが……何故それも海織に把握されているのか……うん?と、思っていると――。


「だって楓君さ。パソコンで見てるけど……ログアウトしてないでしょ?」

「……あー」

「だから私がちょっと検索させてー。や。使わせてー。の時に簡単に見れちゃうよ?」

「……見ないでくださいよ」

「にひひー。変な物買ってないかチェックだよー」

「何も変なのは買ってませんから」


――パソコンの方で見ているところでは……ね。うん。これシークレット情報。


ってパソコンも今度からちゃんとログアウト忘れないようにしよう。うん――ってもしかして……海織はパスワードとかも知っているのでは……と思い。海織を見ると。


「なになに?これからはちゃんとログアウトしないとなー。とか思ってる顔かな?」

「……読まれ過ぎていて怖いんですが……」

「あー、その顔は――まだ他にも思っていたことがあるかな?」


ドキリ。である。


「あー、もしかして。ログアウトしても。私ならIDとかパスワード知ってるんじゃ……って顔かな?」

「ホント怖い」

「あたりだね。ちなみに――てへ?」

「……」


うん。この反応は……どう見るか。うーん。こういう時はパスワードを変更した方がいいのか。うん。他人に教えちゃいけません。だからね。うん。でも――変えると……自分が忘れるかも。とかいろいろ頭を悩ませている俺だった。


そんな話をしているともう海織の家は目の前だった。

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