第184話 土曜日9 ~電話はデッキでしましょう~

♪~


現在駅のスピーカーからは駅員さんが「黄色い線の内側へ――」などと現在話している。そしてゆっくりと俺たちの前に乗る予定の賢島行きの特急が駅に入って来た。


少し前にも言ったかと思うが。20時14分発賢島行き特急。直通の特急はこれが最終電車。確かこの後の電車だとどこかで乗り換えて……普通では賢島までまだ行けた気がするが……乗り換えなしで行く場合これが四日市からは最終の特急電車。


ちなみ先ほどかかってきた柊からの電話は……そっと消しました。あとでかけなおします。はい。


「楓くん何号車だった?」

「あっ、特急券まだ持ってた。ごめんごめん」


俺はそう言いながら目の前に電車が入ってきている段階で特急券を海織と斎宮さんに。いや場所は大丈夫ですよ?単に俺が2人に渡し忘れていただけなのでちょうど電車が止まったところ。そこが俺たちの乗る車両です。うん。問題なし。


「えっと、10のA。10のAっと」

「私は10のB」

「結構向こうだ」


女の子2人が先導で車内に入っていく。車内は7割ほどだろうか。そこそこ座席が埋まっているという感じだった。まあ名古屋からだと会社帰りの人とかが使っているかな?と、通路を進みつつ思う俺。うん。結構スーツ姿の方が多かった印象です。


「あっ、ここだ」


そういいながら斎宮さんが座席に。隣の席の海織もそのまま斎宮さんのお隣に。俺は通路を挟んでお隣の窓際のため。10のCと特急券に書かれている。


俺たちが座席に座るとちょうど電車は近鉄四日市駅を定刻に発車……うん。2分ほど遅れていました。まあそういうこともありますよね。


目的地の鵜方駅には21時46分着。ちなみにお迎えは……俺ではなく海織からすでにお願い済みらしく――うん。俺の実家のはずなのに。なんかおかしいですね。まあしばらくは電車移動だから寝ていようかな。とか思いつつスマホを見ると……柊から着信2件。うん。あまり無視は……なので俺は席を立ち上がり。


「ちょっと柊に電話してくる」

「あっ、うん。お願いね。楓君。上手に言っておいて」

「あれだよ。楓君。海織は返してもらったー、とか言っておいたらいいよ」

「うんうん。楓君それいいと思うよ」

「……」


海織っていろいろ言われても……照れないよね。うん。とか思いつつ――なんでこうなっているんだろうな?と、思いながら俺はスマホをを持ってデッキの方へ移動した。


揺れる車内はちょっと歩きにくいが。まあ問題なくデッキまで移動した。ちょうど喫煙室があるところだったのデッキは広め。そして他に人も居なかったのでちょうどよかった。


そういえば喫煙室で思い出したが。前は何号車だっけ?1号車?とかなんか決まった車両では座席でもたばこが吸えたのだが……。


昔の思い出を話すと。2号車の1号車寄りだとドアが開くたびにたばこの臭いが……はい。うちというか。偶然なのか俺の周りには喫煙者が全くいないのでね。においに敏感だったというか。そんな昔の思い出も今は経験できないという。いろいろと社会が変わっていますね。はい。でも近鉄の特急は結構長い間というか。最近まで喫煙車があったので……それはそれでレアな事だったのではないだろうか。ちなみに車内では……今はこのデッキのところにある喫煙室だけでしかたばこは吸えなくなったかと――うん。確かそうだ。特急列車は全て禁煙になったと何かで見た気がする。時刻表かな?車内の案内図みたいなのも少し特急車両は書いてあるのでね。でも、喫煙室があるっていうのもレアなことなのだろうか……あまり他の会社の電車は乗らないので今どうなっているかがわからないが。あれかな近鉄は長距離移動があるから特急の車両に喫煙室残したのかな?とか1人で思っていた俺。


って、俺はデッキに出てきてなんで喫煙車について1人で語っていたのか。うん?語っていた?誰に?うん。ちょっと疲れているのかな?この1週間いろいろあった気がするからね。


そういえば……まだ1週間なんだよな。


海織の……何というか。ちょっとしたいたずらとでもいいのか。うーん。そういえばなんかわからないうちにいつもの海織になっていた。戻ったような気がするが。長いようで短い1週間。確かに静かというか。1人の時間に違和感はあったが……ってあれが普通のはずだったんだよな。


っか海織の考えることは何というか――今もそうだが。急に俺の実家にとか。それも子が知らないところで海織とうちの親がつながり連絡しあっていて。結局……子には連絡なく物事が決まっている怖さ。うん。この前海織と行ったというか。あの時から思っていたが。俺の実家はどこか別の場所に移動したのかな?実は海織の実家が俺の実家になっているとか?それはないか。


ホント、謎が多いというか。俺の知らないところでいろいろと物事が……っか今回は斎宮さんも居るんだよな。それにこんな時間から行くというのも。うん。何だろうな。俺の頭がついていかない。というか。多分この1週間の事で言えば俺はなんやかんやで普通に過ごしていた気がする。


海織の計画による被害者というか。一番振り回されたのは……斎宮さんじゃないかな?


俺はそんなことを思いつつドア付近の窓から外を見る。うん。真っ暗。今はどこを走っているのだろうか。乗っている時間的に――伊勢若松駅あたりかな?


――。


「あれ?俺なんでデッキに居るんだっけ?」


ちょっと窓の外を見つつ考える俺。外が暗いからか今は俺の姿が窓ガラスに写っている。ちょっとぼーっと外を見ていると……。


「あっ、そうだ。柊だ」


俺はやっとデッキに出てきた理由を思い出して。というか。手にスマホ持っていたのに忘れていたという。


スマホを見てみると……また柊から着信が1件来ていた――折り返すか。とスマホを操作しようとしたら……。


~~


マナーモードにしてあるので音楽は鳴らないがスマホの画面には柊からの着信を表す画面が出ている。


「……タイミングがいいというか、ずっとかけていたのだろうか――」


俺はそんなことをつぶやきつつ。通話のボタンを押したのだった。

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