第89話 春休み10 ~完全包囲~

あれからは――とりあえず親の運転する車に乗りました。はい。えっと……誰か説明を。なんでこうなっているのでしょうか。今のところ全く理解していない俺です。はい。


どこでどうしたら、俺のところの親と、宮町さんが今普通に会話していて「あっ。お土産あるんです。あとで食べてください」「あらー。悪いわね。海織ちゃん」とかいう感じに会話が行われているのでしょうか……うん?


そのまま親の運転する車は実家に到着した。


「おお、ここが楓君のお家」

「……まあ、そうだけど……どうしたらこうなったの?」


とりあえず――宮町さんに説明を求めると。


「ほら、あんたは海織ちゃんの荷物持つ。はい」


親にちゃんと荷物持ちしなさい言われました。っていつもより親がテキパキ動いている気がします。はい。


「はあ……」


なんて反応したらいいのだろうか。親は――うん。普通に宮町さんのことをよく知っているみたい。


おかしいことと言えば、俺の記憶的にはまだ一度も親には宮町さんの事を話したことないはずなのですが……と俺の頭の中ではなんかいろいろなことがぐるぐるまわっているのだが。その間にも宮町さんと親は室内へ――。


とりあえず俺は宮町さんの荷物を持って付いていく。


って。家に入ってすぐ違和感。なんかいつも以上に室内が綺麗じゃないか?まるで誰か大切なお客さんが来るみたいに……玄関からだが。埃が無いというのか。めっちゃ綺麗に掃除したと思われる。普段は、年末の大掃除後くらいしか見ない気がするのだが……ちなみに宮町さんはもう室内である。


「大丈夫ですよ。おばさん。私たちさっきお昼食べましたから」

「うちの馬鹿がどうしたらこんなにいい子見つけてくるのか。迷惑かけてない?」


頭痛くなってきたな――と、思っていると。


「あっ、あんた」

「はい?」


親に声かけられて……。


「暇なら車にガソリン入れてきて」

「……まあ、状況的には、暇か……」


状況整理にちょうどいいかと。俺が部屋を出ようとすると。宮町さんが声をかけてきた。


「あっ楓君。海みたいから一緒に行っていい?」

「—―えっ?」

「せっかく海の近く来たから海見に行こうよ」


はい。結果—―宮町さんと一緒にガソリン入れがてら海見に行くことになりました。


「あんた気を付けるのよ。こんないい子ケガさせたらだからね」

「大丈夫です」

「ホント気を付けるのよ」


親に家を出る時しつこく言われたが……ってなんか前に帰って来た時もガソリン入れに行かなかった?俺。とか思いつつまた車に移動した。


「じゃ、楓君の運転でレッツゴーだね」

「はい、じゃシートベルトを」

「あっ、忘れてた」


宮町さんを助手席に乗せて――出発。


それからは――特にトラブルなくガソリンスタンド行ってから。コンビニ寄って飲み物買って。車を止めれるところがある海岸へ――。


「おー、貸し切りだね。あっ違う。防波堤?の先の方で釣りしている人がいるね」

「まあ、ここは夏以外はこんな感じだよ」


宮町さんは砂浜歩きながら……なんか貝殻やらの写真撮ってます。


「ところで、運転中は驚くとだから聞かなかったけど」

「うん?」

「なんで、うちの親と知り合いみたいな感じなのでしょうか……」

「えっ?私ちゃんと楓君にも報告したよ?」


宮町さんは言ってなかった?という顔しているが……あっ違う、これはニヤニヤバージョンの表情だ。って、報告なんかされていませんよ?


「……絶対わかりにくい感じで報告?したでしょ。ってどういう理由でああなったの?」

「覚えてない?」


めっちゃ宮町さんニヤニヤしています。これ遊ばれてる気がする。


「いや、覚えているも何も……うん?例えば――俺が風呂行っている間にスマホに着信があったとか」

「ハズレー」

「じゃ……実は昔からの知り合い……は、ないか」

「まあ、楓君のお母さんとは接点ないかな?」

「うん?なんか引っかかる……」

「まあまあ、古い過去のことは思い出さなくていいよ」

「……めっちゃ気になる言い方……」

「楓君」

「—―はい?」

「そんなに昔の事じゃないよ?」

「えっ?」


宮町さんに言われて再度考えてみる。昔ではないということは――最近。つまり――。


「—―今年」

「ふふふっ」


しばらくいつ母親と宮町さんに接点ができた?というのをこんな感じで言っていたが。俺は結局いつというのはわからず――はい。遊ばれてましたね。


「時間切れ―」

「いやいや難しいでしょ」

「正解は……」


宮町さんは勝った!みたいな――なんかいい顔しています。はい。そして――。


「第74話で会いました」

「—―—―—―はい?」


いきなりなんか話数を言われましたが……まるで物語の中みたいに。ってそんなことはないので――。


「宮町さん真面目にお願いします」

「楓君まだわからないのかな?ニヤニヤ」

「いや……えっと……その答えをお願いします」

「楓君が沙夜ちゃんとお出かけから帰って来た時にちゃんと報告したよ?」


言われたので少し前の事を思い出す。


「うん?あの時—―?」

「うん。あの時に……「盗聴器とか仕掛けてないよね?」って楓君が言って「そんなことしないよー。普通に部屋の片付けして、洗濯して、あっ、布団も干しといたから。で、私の着替えを冬バージョンにして、で、訪問。楓君へのプレゼント受け取って、ご飯作って2人を待っていただけだよ?沙夜ちゃんが随時場所を教えてくれたから、ピッタリ」ってわたしが返したら楓君。「ちょっと待って。なんか今、重要な事さらっと言わなかった?」って。あっすごい。気が付いた?って思ったんだけど、なんか違う方向に話が言っちゃったからね」


宮町さんがなんか過去に俺が行ったことあるようなセリフを真似?しながら言ってくれたが……えっ?今のところにおかしいところ、というのか。親と会ったっていうのなかったような……。


「—―わからない?」


……なんで宮町さんこんなに楽しそうな表情なのか。ってなんで海見ながらこんなクイズ?を俺はしているのか。


「……部屋の片付けして……洗濯……布団……で、宮町さんが自分の着替えをで、訪問。楓君へのプレゼント受け取って、ご飯……」

「そうそう」


自分で言ってみてもわかるわけ――って待てよ。今なんかおかしい言葉あったような……。


「—―あー。訪問か」

「正解!」


やっとわかったかー。みたいな表情を宮町さんにされました。はい。いやいやわからんよ。である。


「訪問って宅配業者の人の事言ってたのかと。プレゼントってそのあと言ったから――って待って親が来たの!?アパートに」


うん。そこ重要。俺全く知らないこと。


「うん。なんか近くに来たから、抜き打ちで様子見に来たんだって」

「なぜそのタイミングで……1年の時は何もなかったのに」


宮町さんから聞いてがっくりする俺—―。


「偶然だね。あの時はびっくりしたよ。沙夜ちゃんのメッセージ的には楓君も沙夜ちゃんもまだまだ遠くに居るはずなのに楓君の部屋のインターホンなるから。プレゼントは時間指定してあったからまだだと思いながら出たら……楓君のお母さんとはね」

「……なんでその情報が俺には来なかったのか」

「まあまあ。で、挨拶するでしょ。ホントドキドキだったんだよ?いきなりだったから。準備なんてしてないし。不審者に思われたらだからね」

「ですよね。ってなんと挨拶したのでしょうか……」

「聞いちゃう?ニヤニヤ」


あー。この宮町さんの顔は絶対……いやな予感しかしないのだが。聞かないとこの先いろいろありそうなので確認。


「……いや。なんかね――親の態度がね・おかしいというか。はい」

「ズバリ。彼女です!って言っちゃった」

「—―」

「—―」


はい。しばらく沈黙。


「言っちゃったって――だからあんな態度だったのね……うん。そういう――って――はい!?」


うん。まあ照れるとかなく――なんか当たり前。既定路線です。と言わんばかりに。宮町さん普通に言ってますが……これなんか俺が知らないところで何かが進んでいる気がする――。


「あの……本当に言った?」

「うん!そしたら、すごく感謝されちゃって。で、その時に連絡先交換して、定期的に話してたよ?」

「……俺の全く知らないところで……物事が進んで行く――」

「今日まで隠すのなかなか楽しかったよ?おばさんも協力してくれたから、あっ本当は、楓君のお母さんって呼びたいんだけど。おばさんで良いのって、何回か。楓君のお母さんに言われちゃってね」

「ははは……ってことは……父親も何か知っている……」

「うん、電話では話したよ?」

「……ホントなんで俺の知らないところでそんなに話が進んでいるのでしょうか……」

「あいつは恥ずかしがり屋。異性になんか興味なさそうだったのに。どうやって告白したんだー。とか言ってたよ?」

「—―逃げたい」


ホント……家に帰るのが――嫌な感じがしている俺でした。はい。

とっても嫌ですね。

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