第77話 風邪2 ~終夜運転中~

――ピンポン。


「……」

「……」

「……あれ?」


宮町さんのところのインターホンを押すが……返事はなし。


って、インターホン押してからだが気が付いた「しまった先に行くことを宮町さんに連絡すればよかった」と。もしかしたら寝ているのかもしれないなどと。でもここで帰ると斎宮さんに家まで行ったのに宮町さんの顔見てないの?とか言われそうなので悩んだ結果……スマホを取り出す。そして――。


「こんばんは、急にごめん。斎宮さんから宮町さんが風邪ひいてるって聞いて……様子見てきて言われたから来たんだけど……先に連絡しなかったから。寝てたらごめん」


電話は斎宮さんが出なかったと言っていたから。俺はメッセージで送る。

っか人の家の玄関の前で俺は何しているんだろうか――今は幸いなのか誰も居ないが、もし誰かが来たら……どう見ても不審者に思われそうな状況だった。


すると宮町さんからはすぐに返事が来た。どうやら無事?起きてはいたみたい。


「えっ?もしかしてさっきのピンポン?楓君—―?じゃないよね?」


うん。ちゃんと返事が来た。


「すみません。連絡しないで突然来た俺です。まだ一応。ドアのところに……起き上がれそうならお見舞いにフルーツ少しだけど買ってきたから渡したいんだけど……大丈夫?」


――多分数メートル離れているか離れていないかくらいの距離でメッセージのやり取りをしていると思う。ほんと準備悪いな俺。と思っていたら。


――ゴン。


ドアの向こうで何かぶつけた?ような音がしたと思ったら。


――ガチャ。


と、玄関のドアが開いた。ドアが開くと……。


「ぶつけた――って本当に……楓君……だ――」


――この姿の宮町さんは初めて見るかもしれない。

ちょっと髪の毛が跳ねていて、いかにも今まで寝ていましたという感じの姿だった。って……結構熱ある?顔赤いし。ってホント声ガラガラ。あと、かなりびっくりという表情をしていた。


「急にごめん。えっと――大丈夫?」


俺が聞くと――宮町さんはちょっと笑顔を作って?うなずいたが……これは素人が見てもわかる状態だった。絶対動いていたらダメな状態。


「大丈夫そうには全く見えないんだけ……って。ちょちょ」

「……ふー」


と思っていたら、急に宮町さんが俺にもたれかかって来た……って。軽っ!?じゃなくて。やわらかい――でもなくて!


「熱い。えっ?宮町さん本当にこれ……完全にダメなやつでしょ。早く横にならないと」

「……ごめん」


どうやら立っているのもやっとなのか。完全に身体に力が入っていない宮町さんを抱えて俺は室内移動した。

そして寝室へ――突然の事だったので普通に抱えて運んでしまったが……よかったのだろうか。と運びながらちょっと思いつつ運ぶ。


「……ふー。宮町さん、ふらふらじゃん」

「……もう大丈夫……だよ」


ベッドに寝かせると宮町さんの声が聞こえた。いやいや大丈夫ではないだろう。そしていろいろ言いたかったのだが。次に俺が宮町さんを見た時には――。


「……寝てる」


すでに寝息が聞こえていた。ほんと無理に起こしたみたいでごめんなさい。と。

そしてこれからどうしようか。と、まわりを見るとベッドの横には、熱があるときにおでこに貼ると冷たくて気持ちいいシートが置いてあった。どうやら俺が来たから貼ってあったのを外して出てきたみたいだった。


「……新品でいいかな?」


余計な事かもしれないと思ったが。多分貼ってある方が気持ちいだろうと。自分の経験上から机の方に新品が入っているであろう箱が置かれていたので、それをそっと出して宮町さんの前髪やらそっとどけて……って触っても怒らないよね?って――寝てるから大丈夫?とか思いつつ。おでこにそっと貼っておいた。貼った瞬間にちょっとピクリとしていたが……セーフ。起きてない。うん。多分冷たかったんだろう。貼ってあげるとなんか気持ちよさそうな顔?になってたし。大丈夫。うん。


それから帰ることもできないので、宮町さんところのリビングに……本人の許可を取っていないが。居た。いや家の鍵がどこにあるかわからないから。帰るに帰れなくなったということ。さすがに開けっ放しでっ帰るは出来ないので。


その間に気にしていた斎宮さんには、すでにメッセージで連絡済み。電話は声が聞こえるとなので、メッセージで「宮町さん。ふらふらだったけど、今はよく寝ている」と送っておいたら。「ありがとう。じゃ海織ちゃんのことおまかせします!。で、元気になったらたくさん聞かないと」と、なんか嫌な予感しかない返事がありました。はい。


そして、斎宮さんに連絡後は、することがないのでスマホ見たりして過ごしていると、数時間後の23時を過ぎたくらいにドアの開く音がした。


「……誰—―?って楓君が……本当に……居る――」


小さな声が聞こえたと思うとリビングに宮町さんが入って来た。まあ起きて誰か居たら怖いよね。となるべく早めに自分とわかってもらうために声をかける。まあ宮町さんすぐに俺とわかったみたいだが。


「あっ、ごめん。不審者だよね。勝手に居座ってて」

「……ちょっと安心。でも夢だと思ってたよ楓君が来てくれたの」

「って大丈夫?来たら急にふらつくから」

「うん。なんか楓君見たら……安心したみたいで。でも、ゆっくり寝れたかも」


数時間前の宮町さんよりちょっと?よくなった感じに思えた。声は鼻声?といつもとちょっと違う感じだったが。


すると宮町さんは俺の横に来た。


「……沙夜ちゃんにバレたのが……スだったかなー」

「えっと……覚えてないかもだけど、さすがに手ぶらは……だったからフルーツ買ってきておいてあるんだけど……宮町さんお腹空いてる?」

「食べたい」

「じゃ、包丁だけ貸してもらっていい?」

「うん。流しのところにあるよ」


宮町さんはそのまま座っていてもらって、俺は流しのところへと移動して――買ってきたフルーツを切る。そして宮町さんのところへと運ぶ。


「どうぞ」

「ありがとう――うん、甘くておいしい」


宮町さんは少しずつでもちゃんと食べていた。お腹は――空いているみたいです。


「そういえば……今日大晦日だったよね。ごめん」


――珍しいというか。なんか弱った宮町さんの姿というのか。あまり見ることがないであろう姿の宮町さんだった。


「いいよ。どうせ予定もなく。1人だったし。って宮町さんの用事って、風邪ひいたからそれ隠すためだったんだね」

「……楓君に迷惑かけるとだから。でも結局来てもらっちゃった」

「迷惑って。普段は結構普通に人の家に乗り込んできているのに」

「な、何の……ことかなー」

「えー」


とか。少し話してから。また宮町さんを寝室に。


「楓君は――帰っちゃう?」

「まあ、四日市までならね。大晦日だし終夜運転あるから帰れそうだけど……もう日付変わってるからね。湯の山線があるかがわからないから……」

「あっ。年明けてるんだ。寝てたから時間の感覚が……あっ。あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「えっ、あっ。うん。あけましておめでとう」


――なんか変な感じに新年のあいさつした後は帰る。ということはなく。さすがにこの状態の宮町さん1人には……できなかったので。その日は宮町さんのところに居ることにした。


俺が居ると言うと。宮町さんは嬉しそうにしてから。


「新年からご迷惑おかけします……あっ部屋のもの自由に使っちゃっていいからね……で、私は……ちょっと横になろうかな。おやすみ楓君」


――やっぱりまだだるいのかまたすぐに夢の中。俺はというと。寝室に居るのは……なのでまたリビングへ移動。そしてちょっとテレビだけお借りして、宮町さんの家で朝を迎えたのだった。

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