第55話 水族館 ~10時39分発賢島行き特急~ 

その日は、珍しくというのか。俺が動く日では、久しぶりの曇りだった。いや、どんよりとかではなく。ちょっと、雲が多めの晴れ。花見から数日後、旅行1日目。まあ行先を言ってしまえば、1年生の時に、斎宮さんに連行されたときに話していた、水族館に、行くことになっている。


本当は、お得な切符やらやらもあったのだが。ほぼ急遽と、言う感じだったので、今回は、普通に、行くことに、で、俺は1つ早い電車に乗って、近鉄四日市駅まで来ていた。理由は、特急券を買うため。

なお、お隣には――定期券があるからと、逆方向だが、四日市駅まで、出てきてくれた……宮町さんが、すでに、スタンバイ中。って、1つ早い電車で、行くことは言ってなかったのだが……とりあえず、10時30分前くらいに、近鉄四日市駅集合と、メッセージのところに、書いてあったんだが。まあいいか。


「どこまで買うの?」


と、宮町さん、今日も結構近い距離で、俺の隣に居ます。どうやら、試用期間?は継続のようです。って、お出かけ用だからか……今日の宮町さんいつも以上に、目立ってませんか?いや、とても似合っているんですが……俺と居ると――バランス的には……と、思ってしまう。


「もう、言っていいと思うけど、鳥羽ね」

「おー。じゃ、水族館かな?」

「勘がいいことで。うん」

「でしょ?楽しみー」


それから近鉄四日市駅10時39分発の賢島行き特急の特急券を4人分。

本当は、斎宮さんのご希望だった、伊勢志摩ライナーを――と、思っていたが、この時間は違ったので横一列で4人分買った。

座席の向きを変えたりしなくても、これなら、通路を挟んで、になるが。話しやすそうだし。と、この買い方になった。


特急券を買ってからは、コンビニに宮町さんと行き、水分、おやつなど買い。ホームへ。「10時25分着の電車乗った」と、斎宮さんからその頃に、ちょうど連絡が来た。


大阪、伊勢方面のホームで、斎宮さんと柊を乗せているであろう。その電車が、近鉄四日市駅に入って来るのを見てから、数分後。


「おっはよー」


斎宮さんと、柊が登場した。


「—―はぁー。うるさいだろこいつ?ずっと、テンション高くて。子供だろ」

「そこ!黙る!」

「ほら」


と、柊が斎宮さんにポカポカ叩かれていたが……まあ、いつも通りでしょう。うん。ポカポカが――バンバンに変わっていったが――まあ気にしないでおこう。


それから、少しして、特急が駅に入って来た。


10時39分。近鉄四日市駅出発。

車内では、男女で、別れていた。斎宮さん、宮町さんは、すでに、コンビニで仕入れた。お菓子を見せあいしていた。


……一方男性陣。


「俺、行ったことあったかな?鳥羽……鳥羽か」

「岐阜からだと――あまりないかもね」

「多分ないと思う。伊勢神宮も1回しかないからな」

「楓は、何かもあるだろ?」

「あー、うん。結構昔からよく行ってる感じ」

「にしても、水族館ね。久しぶりだわ。で、沙夜に、さすが子供。って、聞いた時言ったら、殴られたけど」

「……でしょうね」

「元気すぎるんだよな」

「……聞こえてると思うから――あとで、海に落とされないように」


と、通路の向こうから、斎宮さんの睨みがあった。


「そんなに、駅から海近いのか?」

「いや、目の前。水族館まで少し駅から歩くけど、道路の横は、海みたいな」

「そりゃ、注意しないと落とされるな」


などと、しばらく男女での会話。まあ、話していたら、どんどん駅を通過していく特急。


外の景色は、建物とかが見えていたが、津駅を過ぎてからしばらくすると、次第に、緑が多くなってきていた。このあたりからは、俺にとっては、よく見る光景なのだが、隣の柊から見ると、ほぼ初らしく新鮮らしい。何回か、今どこ走ってるやらを、聞かれた。


それから、雑談というのか。まあ、いろいろ話していたら。海が見えてきて――11時48分。鳥羽駅到着。


「おー、なんか空気変わったな」

「私久しぶりに来たかな」

「今回はちゃんと、降りたー」


柊、宮町さん斎宮さんがそれぞれの感想言いつつ、改札へ向かう。

そして俺達は観光客に紛れつつ改札を抜ける。


「で、ここからどうするの?」


宮町さんが、当たり前のように俺の隣に来て聞いてきた。


「えっ、あー、お昼だから、先に、ご飯かなとか思って、斎宮さんにも話したんだけど……」

「うん。前に、2人ときたときに食べた、てこね寿司?が美味しかったから、また食べたいって、楓くんに、鳥羽駅周辺で、お店探してもらったから、そこに、レッツゴー」

「つまり、沙夜の行きたいところに、3人が連れて行かれると」

「まあ、柊の考えているので当たり」

「そこー、行くよ。って、楓くんどっち?」

「とりあえず、水族館方向へ」

「はーい」


斎宮さん先頭で歩き出す。元気です。斎宮さんはいつも。

前を、斎宮さん宮町さんが歩く。その後ろを、男子2人が付いていく。


行先のお店は、駅から歩いて数分。お昼時だったので、ちょっと、混んでいたが、少し待っていると、中に入れた。


お店では、斎宮さん宮町さんが、てこね寿司。俺と、柊は伊勢うどんにした。まあ、柊が「伊勢うどんって、食べたことあったっけなぁ?」と、言っていて、選ぶ言っていたので、俺も最近食べてなかったから。と、一緒に頼んだ。ちなみに、柊にも、伊勢うどんは、好評だった。


それからは腹ごしらえしたし。ということで水族館へ移動となった。

お店からもまだ少しあるので、4人で海沿いの遊歩道?かな。整備されていたところを歩く。鳥羽に着いてからは、雲も少なくなり。晴れてきたので、海がキラキラ光っている。


そして、前の女の子2人は楽しそうです。

はい。何度か、写真撮影で、ちょっと、進むのはゆっくりでしたが――男性陣は、後ろを話しつつ、付いて行きます。


それから、水族館到着。本当は、鳥羽の次の駅。中之郷なかのごう駅が、最寄り駅だったりするが、特急が止まらないので、多くの人が鳥羽から歩いていた。


受付でチケットを買って、久しぶりの水族館へ。

まあ、中に入ってしまえば、大学生4名、普通にテンション高くなるというね。はい。楽しみましたよ。


ここの水族館は、かなりの飼育数があるため、1日普通に見ていれると思う。いろいろなブース?に分かれていたので、とりあえず、見たいところ。見て見たいところに、行くという感じで、4人で見ていく。


まあ、はじめに行ったのは、時間的にピッタリだった。アシカショーなのですが。なんやかんやで、見ていて楽しいという。さらにテンションの上がる大学生4名。


その後は、パンフレット見つつ回る。


「あっ、楓君ジュゴンだって」


と、俺は、主に宮町さんに引っ張られていた。


「ちょ、沙夜、伊勢エビ居るじゃん」

「それよりー。ラッコ!」


あちらはあちらで、楽しそうです。

なんやかんや言って――柊が結構熱心に見てまわっていた。

そうそうちなみに俺のお目当ては、カピバラだったりする。


「デカい」


俺はカピバラを見つつ言う。


「カピバラもかわいいよね」


お隣からは――まあ宮町さんはちゃんとこちらに付いてきている。というか、隣を離れないため居ます。はい。


「あっ、2人も居た」


宮町さんとカピバラを見ていると斎宮さんが、柊を引っ張りやって来た。


「なあ楓、どう思う俺が、カブトガニ良いだろ行っても、こいつ理解してくれないんだけど」

「えっと――まあ……人それぞれだよ」

「カブトガニ良いと思うけどな」

「ねえねえ、海織ちゃんカワウソ見に行かない?」

「あっ、見たい。楓君たちも行こう」

「ほら、柊も」


と、男性陣2人、女の子2人に引っ張られていく……。


途中。柊が、カエルやらが居たからと、女の子2人言って、斎宮さんに、速攻叩かれていたが。まあ、楽しみました。

水族館内に、休憩できるところもあり。休憩もしつつ。ほぼ全部?かな。各ブース1回は、見てまわった。何回か見に行ったコーナーあったような……ラッコとか……ラッコとか――うん。


ここの女の子2人はラッコが気に入ったようです。


帰る前には、お土産コーナーで、しばらく女の子2人が、動かなくなりましたが。まあ、その間に俺は、カピバラのぬいぐるみゲットしておいた。これ、欲しかったんだよ。うん。

柊は、食べ物を何やら、たくさん買っていた。で、そのあとは、しばらく女の子2人が終わるのを待った。


「楓君、可愛いもの買ってたよね?後で見せて、カピバラのぬいぐるみ」

「いや、うん。そりゃ、良いけど」


と、すぐに宮町さんに買ったものバレました。おかしいな。さっと買ったはずなんだが……。


って、斎宮さん――なんか大量だった。うん。大量。


「柊持って」

「買いすぎだろ、ガキかよ」

「柊に言われたくないし」


……う、うん。まあ、柊もお菓子の山だよね。2人も似ていると思っている俺だった。


それからほぼ閉館時間あたりまで楽しんだ後はホテルへ向かうため、鳥羽駅に俺たちは戻ったのだった。

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