第40話 新年の大楠 ~終夜運転中~

年明けしてから、20分くらいしただろうか。何故か、3名。外出の準備をしています。


「ほら、楓君。行くよ」

「あ、うん」

「ひゃー、外寒いー。風が冷たいね」

「沙夜ちゃん大丈夫?マフラーとか、貸すよ?」

「大丈夫、大丈夫。歩いてたら温まるよ」


こうなったのは少し前の会話から――。


テレビで除夜の鐘の映像が流れている時に斎宮さんが……。


「ねえねえ、せっかくだから、このあたりも、ちょっと、見に、行ってみない?」

「あ、いいね。何かあるかも」


と、斎宮さんが、言ったことに、宮町さんが、食いついた形で、お出かけへ。ホント、この女の子2人、活発です。もちろん、俺も、行くことに、というか「楓くんが、いれば安全だね」と、斎宮さんに、言われましたが……。

だから俺。強くないよ?ホント。2人とも、俺の評価間違ってますから。ホントだった。


まあそんなことは聞いてもらえず――出かける準備になり。

現在は外。普通なら静かな時間……だが。

今日は、神社などに行く人がいるのかちょっと外にも動きがあるような状況で、歩いている人も……すでに見かけた。

そしてここの3名は――特にどこ行くとは、決めてないのだが。宮町さんの家を出発したのだったが……。大丈夫だろうか――である。


その後は宮町さんが知っているという神社に俺たちは向かった。

神様に新年のあいさつをしに――である。

地元の神社でも、大晦日からはどんど焼き?って、言うのだったかな。神社の敷地で、火をつけているやつをして、年が変わると結構地元の人が集まっていたが――。


この辺りもしているところは――しているのだろう。とか俺が思っていたが。

宮町さんに、連れてきてもらったところは甘酒などは配っていたが。どんど焼きは、なかった。というか。そのスペースがなかった。


「楓君の実家近くは、毎年してたの?」

「うん、確かね。いつも火がついてた気がする。その周り暖かいから、お参りした後に、人がちょっと集まってるみたいな感じだったよ」

「まさに今、それ欲しいね。温まりたいよー」

「沙夜ちゃん。だからマフラー貸すよ?」

「大丈夫です。海織ちゃんが寒くなるからね。じゃ、止まっていると寒いから。他のところ見に行ってみようよ。初めて、来るところだと、いろいろ楽しいからさ」

「斎宮さん。ホント、元気だね」

「元気だよ?ほら、動いたら暖かくなるよ」

「じゃ、ちょっと距離あるけど、歩こうか?」

「次は、どこ行くの?海織ちゃん」

「大楠、見に行こうよ」

「へっ?」


宮町さんから、その言葉が出てくるとは思わなかった。こういうの不意打ちっていうのかな。上手く反応できなかった。


「楓くん、楓くん。大楠。って、何?」

「あ……なんていうのか。電車からも見えるんだけど、とにかく大きい楠の木があって……って、宮町さん、今から行くの?夜だよ?」

「うん。今日電車から見てたら、ちょっと、行ってみたくなってね。どうかな?」

「そこは……パワースポット的なところなの?」

「いや、パワースポットでは、なかったと思うけど、県の天然記念物?には、なっているところだけど……」

「そうなんだ……うん?電車から――?あ!私わかったかも。山の方?に見えるやつじゃない?なんか、大きな木が1本だけあるな―。って、そういえば。見たよ」

「そうそう、多分、沙夜ちゃんが、今浮かんでいる木。だと、思うよ」

「あれって、近くまで、行けるの?」

「一度、調べてみたことあるけど、行けるみたいだよ。確か……昔は、神社だったのかな?なんか、跡地?みたいに書いてあったような……」

「俺も、ちゃんとは、調べてないけど、確か――楠の木、そのものが神社?だったみたいな、書き方されてなかったかな?確かだけど」

「おお、木が神社。すごい神様のパワーありそう。ちょっと、見て見たい」

「でも、2人とも、真っ暗だと思うよ?途中、田んぼ道で、暗いし。それなら、明るくなってからでも……」

「「大丈夫、楓君(楓くん)いるじゃん」」

「—―なんで、そこだけピッタリ息が合うのだろうか」


それから、多分30分ほど、歩いていると思う。

途中までは、広い道だったが、先ほどからは、田んぼ道。というのか。農道かな?を、歩いている。前を女の子2人が、スマホのライト頼りに、仲良く手つないで歩いています。

まさかこんな時間に大楠まで行くとは……だったが。

まあ、近くまで行くのは初めてだからちょっと俺は楽しみという気持ちがあったが――。

夜って、真っ暗じゃないのかな……と、俺は思いつつ。2人に付いていっている。


すると、近くを名古屋線が走っているのだが。勢いよく電車に抜かれた。


「あれ?こんな時間に特急って走ってたっけ?」


走り去っていく電車を見つつ斎宮さんが聞いてきた。


「あ、多分、大晦日だからだよ」

「うん?どういうこと?楓くん?」

「終夜運転だったかな?夜中ずっと、今日は走ってるよ」

「えー、そうなの?知らなかった。でも、なんで?」

「伊勢神宮とか、初詣しに行く人いるでしょ。その人のためだと思うよ」

「あー。なるほど、そうか。テレビでも映ってたもんね。参拝する人の列。ちなみに、楓君は、この時間乗ったことある?」

「ないかな。初詣は、落ち着いた頃に、行く家庭だから」

「そっかー、海織ちゃんは?」

「走ってるのは、知ってたけど、乗ったことはないかなー。あ、来年は、みんなで、この電車乗って初詣とか楽しそうじゃない?」

「あ、いいね。それ決定。楓くんに予定考えてもらおうか?」

「あ、いいね」


――ホント前を歩く女の子2人は楽しそうです。ちょっとにぎやかというか。まあちょうど民家がないところで良かったです。

民家があったら……休んでいる人の邪魔になりそうなのでね。


それから少し歩くと暗い中だったが、大楠の形が見えてきた。


「あ、あれだよね。海織ちゃん、楓君。夜でも、何となく形わかるもんだね」

「晴れてるから、月あかりもあるからかな?満月とかだったら、すごくきれいな写真が撮れそう」

「確かに、いい感じの写真撮れそうだね」



確かにもっと真っ暗かと思ったが――。

いや、来る途中は真っ暗だったが。大楠に近づくと夜でも形はわかるし。ホント……大きい。電車から見るのとは、全く違う。デカい。とにかく、デカい。


大楠の下まで来ると、ポツンと。と、言うのか。周りには、他の木が1本もないので、この木だけがある空間。と、でも言うのか。だからか、とても、神秘的。不思議な感じがある。本当に神様、居るんじゃないだろうか。というくらい。

そして、これは知らなかったのだが、神社跡だからか、灯篭と、賽銭箱入れが置かれていた。

せっかく、ここまで、来たので、3人で、お参り。


「私も、ちゃんと来たことなかったけど、なんか、ホント神社とかと同じで、空気変わるね。この周りだけ」

「うん、すごいね。ここは、本当に、何かのパワーありそう。今年は、いい年になるかも。ありがと。海織ちゃん連れてきてくれて」

「よかった。楓君は、どう?来てみて」

「やっぱり大きい。そして、生命の力っていうのか。大きさに圧倒されてる。かな。あと、ずっと、ここにあるって、すごいな。1本だけで」

「確かに、周りに木ないよね。台風とか来たら直接風が当たったりするけど、今まで残ってるんだよね」

「次は――明るい時間にも、来たいね」

「だね。でも、新年から、いいところ来れたんじゃない?楓君、行きたそうだったから」

「そんなに、行きたいオーラ出てた?」

「うん。とっても。」


何か、力があるのかはわからないが。ちょっと、すっきりしたような感じになった。行きたかったところに、行けたからだろうか。後は、もちろん戻る、来た道を3人で、戻る。時間も、時間なので、かなり冷えてきたが、ここの人たちは、元気です。


「なんか、すごく気持ちよかったね」

「うん。私の中の黒いのが消えた気がするよ」

「……斎宮さん、何ため込んでるの」

「いろいろー。大変なんだよ?ほんと。主に柊の馬鹿とか、柊の馬鹿とか」

「全部柊じゃん、何したの、柊」

「聞く?聞く?また、楓君を拉致して、聞かせてあげようか?」

「……ご遠慮します」

「えー。あ。海織ちゃんの前で、楓君と、イチャイチャすると、刺される?」

「だから、刺さないよ?って、そんなことしないから」

「よかったよかった。あ、帰ったら、温かいもの飲みたいなー」

「じゃ、準備するね。ココアとかどう?」

「さすが、海織ちゃん準備がいいね」


ホント、この2人仲良しだよな。と、思いつつ、俺も2人と一緒に、宮町さん宅に帰宅したのでした。


ちょっと。と言って宮町さんの家を出発したお出かけは――結構な距離を歩いてきた気がする。新年からいい運動だ……。

でも、大楠を間近で見れたからいいか。一度近くで見たい。と、思っていたのが達成したから。

あっ。でも、今は――早く座りたいかな。はい。

あと、斎宮さんの言うように暖かい飲み物が欲しいです。はい。寒いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る