第61話 当ててるのか!?

 朝がやってきた……。


 2回目のデートだ……。


 前回のデートと同じく、どこで待ち合わせするかわからない。


 エリーさんだから──宿屋で落ち合えるだろう──


 俺から迎えに行った方がいいな。


 しかし、エリーさんの好意もカミラさんみたいに俺の力が影響してないといいんだけど……。


 そんな事を考えて歩いているとエリーさんの部屋まで着いたのでノックをする。


 コンコンッ


「ふぁい……」


「おはよ……う?」


 扉を開けたエリーさんは寝巻き姿だった……。


 あれ? 


 デート今日じゃなかったかな?


 段々とエリーさんの目が見開いて行く。


 どうやら覚醒したようだ。


「コウキ!? ──って朝ぁぁ!?」


「朝だね?」


「────ちょっと待っててぇぇっ!!!」


 ……


 …………


 ……………………



 俺は扉の前でそれから1時間程待った。



「お待たせっ! 楽しみだねっ!」


「お、おぅ……」


 さっきの事がまるでなかったかのような対応だ。


 しかし、寝巻き姿も可愛かったな……。


 昨日もこんな幸福感を感じた後に酷い目に合ったからな……気を引き締めて行こう。


 エリーさんは昨日大将に相談したと聞いている。ここは流れに任せてみよう。


「エリーさんはどこか行きたい所ありますか?」


「むぅ、エリーさんじゃなくて、前みたいにエリーって呼んでよっ!」


「そうなんですね。では、エリーどこに行きますか?」


「後、敬語も使ってなかったわっ!」


 俺が記憶が無くなる前はそんなフレンドリーだったのか?


「はぁ……これでいいかな? それでどこか行きたい所ある?」


「えへへ〜。実は洋服がほしいんだ〜昨日、レンジ様にお勧めの服屋を教えてもらったんだぁ」


「大将に……ですか……じゃあ、行こうか?」


 嫌な予感しかしない。


「じゃぁ、付いて来てね? 離れたらダメだから────えいっ」


 エリーも腕を絡ませて来た。


 カミラさんに比べると小ぶりなお胸様だが、確かに柔らかさを感じさせてくれる。


「エリー、胸が当たってるよ?」


「当ててるのよっ!」


 これが夢にまで見た──当ててるのよ────か!? 昨日に続き2回目だ!


「でも歩き辛くない?」


「いいのよ。デートはそうするもんだって聞いたわ」


「大将に?」


 それしか思い浮かばない。


「そうよ。嬉しくない?」


「嬉しいよ? 可愛い……」


 赤く染まった、ぷくっと膨らませた頬と上目遣いが俺に会心の一撃をくらわせる。


 大将────いい仕事してるぜっ!


「バカっ……さぁ行くわよっ!」


「とりあえず、外に出ましょう」


 俺達は宿屋を出る。


 途中、カミラさんと出会ったが会釈だけする。


 昨日の事を知らないエリーは不思議そうな顔をしていた。


 後で話すか……。



「こっちよ!」


「…………はい……」


「どうしたの? 顔色悪いわよ? 回復魔法いるかしら?」


「いや、大丈夫……」


 嫌な予感が的中しそうだ……この道は見覚えがあるぞ?


 なんたってギルマスの服屋に行く道筋だ。


 俺が近付くだけで冒険者ギルドの仕事を放り出して店に来てたぐらいだ────間違いなく……だろうな……。


「さぁ、着いたわっ! ここって街1番の服屋さんなんだって!」


 やはりギルマスの店か……しかも街1番……確かにセンスがとても良い服ばかりだったが……。


「いらっしゃいん」


 俺達が入るまでもなく、お出迎えをするギルマス。目は俺をロックオンしている。


 だが、男として格好悪い所は見せられない。


「久しぶりです、ギルマス」


 俺は堂々と答える。


「うふふん、相変わらず良い匂いをしてるわぁん」


 ギルマスの返答に顔が引きつり────


「え? ここってギルマスの店なんですか?」


 ドン引きしているとエリーが話に入ってくる。


「そうよぉん。この間、コウキ君も来てくれてねぇん」


「それで顔色が悪かったのね……」


 ぼそっと呟くエリー。


 聞こえてるよ……わかってくれたならいいんだ。


「さぁ、エリーの服を見よう」


 俺はもう開き直って店に入る事にする。


 俺の予算は金貨で5枚。


 大将の店の稼ぎだけでよくこれだけ稼げるなと思うが────連日完売しているし、大将が毎日少しずつ値上げをしているせいか入るお金の量が働けば日に日に増えている。


 お金の価値は今更だが────日本円に換算すると。


 白金貨=100万円

 金貨=10万円

 銀貨=1万円

 半銀貨=5千円

 銅貨=千円

 半銅貨=5百円

 鉄貨=100円


 とまぁ、聞いた話も含めると大体こんな感じだと思う。


 最近では串焼きを一本売ると半銅貨3枚。当初は半銅貨1枚だったが────大将がガンガン値上げした。

 それが半日で500本ぐらい売れている。


 売上は金貨7枚と銀貨5枚────75万円相当だ。


 その内、歩合として受け取っているわけだ。


 しかし、今の手持ちは金貨5枚だ……50万円相当なのだが……心許無い。


 この店の服は新品1着で軽く金貨1枚ぐらいする。この間、値札を見て俺は驚愕したのを覚えている。


 前回ギルマスからの貢ぎ物も襲われるかもという感情が無ければ素直に喜べたんだが……。


 文字とか数字とか何で読めるの? って思うかもしれないが、ゴブリンの時に助けた2人からの記憶の流入でそこは解決している。それ以降は普通に読めた。


 ロストメモリーで彼女を作れていないが、こういうのは本当にチートだと思う。物語で言う────ご都合主義だな!


 まぁ、今はそんな事はどうでもいい……。


 金貨5枚でギルマスの店が乗り越えられるかどうかの方が問題だ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る