異界に迷いこんだ少女の視点で語られる不思議な世界。
身元を引き受けた絵巻屋と化身によって、少女は『写見』という名前を与えられ、悲喜こもごもの様々な騒動に向き合っていくことになります。
そして随所にちらつく不穏な気配…。
全ての謎が集約する終盤で登場人物たちが背負ったものが明かされていきますが、特に写見の負う秘密は残酷で非常に辛いもので、読んでいて心が苦しくなりました。
けれど、彼女が葛藤の末に選び取った決断によって、読者は絶望の底から光が射す結末へと掬い上げられます。
本当にみんな不器用(特に絵巻屋)で、あたたかくて…抱き締めたくなりますね!
最終章はずっと泣いていました。
このモノガタリをハッピーエンドにして下さってありがとうございます!
読んで良かったです。
個人的な推しは化身です。ふよふよ。
「異界」という不可思議な世界観の中で繰り広げられる物語と、言葉の端から、仕草から醸し出されるキャラクターの個性が輝る作品だと感じました。
一つ一つの物語がしっかりとしたドラマになっていて、主人公が不器用に、それでも懸命に成長していく姿が強く印象付けられます。そして、時おり顔を出す切なさも、静かな余韻を残していたように思います。
個人的にとても楽しめました。次の話、次の話、というワクワク感もありましたし、テンポが良くて読みやすかったことも高評価の理由です。時に「おいおい」と突っ込みながら、時に「うんうん」とうなずきながら、楽しめました。次回の作品も楽しみにしてます。
己が何者なのか、記憶も過去も、自身の姿すらも失った少女が不思議な異界にて『写見』という名を与えられ、『絵巻屋』と『化身』なる二人のお兄さんと様々な事件と向き合い、『自分』を取り戻し、さらにその先へと進んでいく――そんな成長と優しさの物語です。
優しいと書きましたが、写見に隠された秘密はあまりに残酷で、目を覆いたくなるほどの悲しみと辛さに満ちています。
だからこそ、優しさが痛いくらいに身と心にしみるのです。
写見は与えられた名の通り、しっかりと目を開けて立ち向かい、時に届かない不安に躊躇いながらも手を伸ばし、全てを認めて受け入れ、そして大きな決断をします。
三人にずっと一緒にいてほしい。幸せに暮らしてほしい。
そう強く願いながらも、途中で仕方ない、こうなるしかないんだと諦めかけましたが、そんな私を写見は勇気付け、物語の最後まで小さくも強い手で引いて導いてくれました。
ラストの大団円には、皆にも是非触れていただきたい!
苦しいことがあっても前を向いていよう、目を逸らさず見つめて立ち向かっていこう、そんな勇気をひとしずく分けていただけるお話です。
あー!
自分の隣にも化身がいてくれたらいいのになあ!!