祝☆FA第二弾!記念小話『不思議な夢雲とはちみつ玉 』

 このお話も『小説家になろう』というサイトにて頂いたファンアートを載せるために書いたものです。本来は、フエルトで作られた可愛い黒ドラちゃんたちをお見せできる回でした。

 カクヨムには画像掲載機能が無いため、完全な状態で楽しみたい方は『小説を読もう』にてキーワード 黒ドラちゃん にて検索をかけていただければ拙作が現れます。そちらで該当話をお読みください。

 ふわもこ黒ドラちゃん一見の価値あり!と思っております。ご興味がありましたらぜひどうぞ。

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 その日、マグノラさんはいつものように白いお花の森でお昼寝をしていました。辺りには甘い花の香りが漂い、とてものどかな風景です。

 その時、白いお花の森の上を、不思議な雲が横切っていきました。白いのは他の雲と同じですが、なんだかふわふわというよりもモコモコという感じ。まるで羊さんの毛のようです。

 その雲の影がマグノラさんの上を横切ると、マグノラさんがもぞもぞと身じろぎをしました。よく見ると、額にしわも寄っています。どうしたんでしょう?

 どうやら、マグノラさんは夢を見ているようです。

 いったい、どんな夢を見ているんでしょうね。



 *****



 マグノラさんは、なんと夢の中でもお昼寝していました。あれ、でも何だか変な感じ。いつものように体がゴツゴツしていなくて、なんだか雲みたいにモコモコ気分です。それに、目をつぶっているのに、なぜかすぐそばに黒ドラちゃんが居るんだってことがわかります。普通は目をつぶっていたらわからないけど、夢の中って不思議な世界なので、わかっちゃうんです。


 ―― おや、今日はどうしたんだい?


 マグノラさんは、すぐそばに立っている黒ドラちゃんにそう声をかけたつもりなのに声が出ません。不思議な夢の中では、しゃべれないのです。

 黒ドラちゃんが何か抱えています。顔はニコニコと楽しそうだけど、本当は黒ドラちゃんは困っているんだってことが、マグノラさんにはわかりました。


 ―― どうしたんだい?今日はドンちびちゃんは一緒じゃないんだね


 声は出せないけど、マグノラさんがそう問いかけると、やはり同じように声の出せない黒ドラちゃんが答えてくれたような気がしました。

 ―― ここに来たら、自由に体が動かせないの。それにドンちゃんが見当たらなくて

 ―― ふむふむ。ところで、その腕に抱えているのは何だい?

 黒ドラちゃんの腕の中には、茶色いモコモコしたものがあります。長いお耳と短いしっぽ、なんだか見覚えがありそうな形です。

 ―― え、あたし、何か抱えてる?あ、これって……ドンちゃんかも!

 ―― う~ん、そんな感じもするねえ

 ―― このドンちゃんはしゃべれるかな?

 でも、茶色いモコモコは何も話しませんでした。

 ―― そのドンちびちゃんはしゃべれないようだね

 夢の中では黒ドラちゃんが顔は微笑みながら、困っています。マグノラさんは、夢の中のお昼寝から何とかして起きてみようとがんばりました。


 ―― ふーっ、ダメだね。目を開けられそうにないよ

 ―― あたしも、全然動けない。どうしてこんなことになっちゃったんだろう

 黒ドラちゃんの声が泣きそうな感じになっています。腕の中のドンちゃん(仮)は、身じろぎもしません。


 ―― 困ったね。誰かが夢の外からあたしたちを起こしてくれれば良いのにね

 ―― そうすれば。動けるようになるの!?

 ―― 動けるように、というか、このおかしな夢から目が覚めれば、何とか出来るんじゃないかい?

 ―― じゃあ、じゃあ、ブランを呼んでみる!

 ―― そうだね、そうしてごらん

 黒ドラちゃんはモコモコの体で背中の魔石に力を入れようとがんばりました。

 ―― ふんぬ~っととと……ダ、ダメみたい、なんだか力が抜けちゃうよ~

 ―― そうかい、困ったね。他に誰か……ドンちびちゃんは動かないし、後は……

 ―― モッチ!そうだ、モッチならいつもこの森にも一匹で飛んでくるから、近くを飛んでるかも!

 ―― なるほど、呼んでみる価値あるかもね


 黒ドラちゃんは夢の中で叫びました。

 ―― モッチ~~~~!



 *****



「ぶいん?」


 その頃、古の森からちょうどお出かけしようとしていたモッチは、誰かに呼ばれたような気がしました。

 今日はマグノラさんの棲む白いお花の森には行くつもりはありませんでしたが、なんだか行かなきゃいけないような気がしてきます。

「ぶっぶい~ん!」

 風の向くまま気の向くまま、呼ばれた気がすれば飛んでいこう!モッチは、元気よく羽音を立てて、白いお花の森へと急ぎました。

 白いお花の森へ着くと、何だか妙に森が静かです。白いお花の森にも蜜蜂さんはいっぱいいます。でも、今日は一匹も飛んでいません。いったい、どうしたんでしょう?

 森の奥へ進んでいくと、いつものようにマグノラさんがお昼寝していました。

「ぶっぶい~ん♪」

 モッチはいつものようにあいさつ代わりにお花の蜜をもらえるかな?と期待してマグノラさんの背中に止まりましたが、マグノラさんは起きません。

「ぶぶいん?」

 モッチが起こしても、マグノラさんは目を覚ましません。


 おかしいなあ?

 モッチは、マグノラさんの顔の辺りに、雲の影がかかっていることに気づきました。今日はとってもお天気なのに、どうしてここだけ雲の影があるんでしょう?モッチが空を見上げると、モコモコした羊雲がちょうどマグノラさんの顔に影を落としています。

「ぶいん?……ぶっぶい~~ん!!」

 モッチはモコモコ雲に向かって飛んでいきました。モッチが雲に近づいていくと、何だか楽しそうな歌声が聞こえてきます。


 ~♪閉じ込め閉じ込め閉じ込めろ~♪こわ~い夢ん中に閉じ込めろ~♪~


 おやおや、なんて嫌な歌でしょう。モッチはどんどん雲に近づくと、やがて雲の顔が見えてきました。歌う雲はモコモコの羊のような形をしています。そして意地悪そうにニヤニヤしながら、あの嫌な歌を歌っているのです。下ではマグノラさんが苦しそうにもぞもぞしているのが見えました。

「ぶいん!!」

 モッチは雲に体当たりをしました。ところがモッチの体は雲をボフッと突き抜けて、向こう側へ出てしまいました。

「ぶいん?」

 モッチはもう一度雲に突進しました。けれど、やはりボフッと突き抜けてしまいます。


 ~♪ムダムダムダムダ、そんなのムダさ♪おいらの体はふかふかしっとり♪~


「ぶいん!」

 モッチは頭に来ましたが、どうすれば雲をやっつけられるのかわかりません。


 ~♪おいらの体はふかふかしっとり♪虹の向こうにしか飛ばせない~♪~


「ぶいん?」

 空には虹なんて出ていません。モッチはどうすればこの意地悪雲をどかすことが出来るのか、一生懸命考えました。


「ぶいん☆」

 モッチはごそごそと何かを取り出しました。辺りには甘い匂いが漂います。モッチは、手の中で虹色に輝くそれを思いっきり雲に投げつけました。モッチの投げつけた虹色のはちみつ玉は、今度は雲を突き抜けずにちゃんと当たりました。すると意地悪雲は、そこからどんどん透明になっていきます。調子に乗っていた意地悪雲は、とたんに情けない顔になりました。


 ~♪うわぁ、なんだよ、体が消える、虹の輝きで体が消える、おお、こりゃたまらん消えちまう♪~

 すっかりしょげた表情で消えていきます。

「ぶっぶい~~~ん!」

 雲がきれいに消えたことを確かめると、モッチはマグノラさんのもとに降りていきました。

「ぶいん?」

 マグノラさんは目覚めていました。

「ああ、モッチ、ありがとう、助かったよ」

 モッチの大好きな花の蜜を渡してくれます。

「ぶいん♪」

「なんだかわからないけど、不思議な夢があったもんだね」

「ぶぶいん、ぶいん!」

「へえ、夢を見せる雲かい?それはひょっとすると夢雲かもしれないね」

「ぶぶいん?」

「ああ、色々なところをフワフワと移動する羊みたいな姿をした雲でね、時々イタズラして雲の影の落ちたところで、変な夢を見せたりするのさ」

「ぶっぶい~ん!」

「まあ、そんなに怒るほど悪いものでもないんだよ、楽しい夢を見せてくれるときもあるからね。気まぐれでいたずらっ子な雲なのさ」

「ぶいん」

 モッチがしぶしぶうなずくと、マグノラさんは空を見上げて大きな声で言いました。

「あまり妙なことをしないでおくれ、夢雲よ。次は楽しい夢を見せとくれ」

 空の上で、何かがキラリっと虹色に光りました。イタズラな夢雲からの返事だったのかもしれません。


 マグノラさんから、夢の中で黒ドラちゃんとドンちゃんも一緒だったと聞いて、モッチは心配になりました。

「きっと黒チビちゃんたちも目覚めてると思うから、大丈夫だとは思うけどね」

 それでもやはり心配なので、モッチは急いで古の森へ戻ることにしました。


「ぶっぶい~~~ん?!」

 古の森へ飛んで行くと、賑やかな声が聞こえてきました。

「それでね、あたしもマグノラさんも、なんだかフカフカモコモコして、身体に力が入らなくてね、」

 どうやら黒ドラちゃんがドンちゃんとおしゃべりしているようです。


「ぶいん!」

「あ、モッチ!聞いて聞いて、あたしねえ、さっきすごく不思議な夢を見ちゃったんだよ!」

 モッチが心配したように、やはり黒ドラちゃんもさっきまであの夢の中にいたようです。

「ぶぶいん、ぶいん。ぶっぶいーん」

「え、夢雲?モッチが虹色のはちみつ玉で助けてくれたの?」

「ぶぶ、ぶいん!」

「そっかあ、ありがとうね、モッチ」

 そばで聞いていたドンちゃんが不思議そうに聞いてきます。

「それにしても、モッチはよく虹色のはちみつ玉なんて持ってたよね?」

「あ、それってさ、ケロールの国で採れたはちみつ玉じゃない?」

「ぶいん☆」

 モッチが答えると、黒ドラちゃんが感心したようにうなずきました。

「ケロールの国で?……でも、虹色の花なんて咲いてたかな?」

 首をかしげるドンちゃんに、黒ドラちゃんが、教えてあげます。

「あのね、ケロールの国から帰ってきた翌朝にね、モッチがハスの花から作ったはちみつ玉が、虹色になってたんだよ。ね?」

「ぶいん!……ぶいん」

 そういえば、あのはちみつ玉は、あの雲と一緒に消えてしまいました。モッチがガクリと肩を落とすと、黒ドラちゃんがあわててなぐさめます。

「ねえ、またケロールの国へ遊びに行こうよ!フラック王国のケロールさんたちや、クーンや王様がどうしてるか、会いに行ってみない?」

「うん、行ってみたい!」

「ぶいん、ぶいん!」

「それじゃあさ、ブランを呼んでみようか?」

「あたし、食いしん坊さんがお城から戻ってきたら、お話ししてみる!」

「ぶぶ、ぶいん!」

「そうだね、ゲルードにも話してみよう!」


 みんなはケロールの国へのお出かけ計画にすっかり夢中になりました。三匹の楽しそうなおしゃべりは、まだまだ続いています。

 古の森の上を、虹色に輝くモコモコした雲が通りすぎていきました。不思議な夢雲は、甘い香りを漂わせながら、影を落とさずにフワフワと移動していきます。


 ~♪美味しいはちみつ玉、ありがとう♪次は楽しい夢を見せるよ♪~


 夢雲の歌うようなつぶやきが空に消えていきます。三匹が気づかないうちに、夢雲はゆっくりと古の森の上から消えて行きました。



 ――夢雲さん、今度は楽しくて愉快な夢を見せてね――






















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