二章 日本海戦

二章 1話 雪の国の警備兵


雪の国の警備兵


目を開くと辺りは木、木、木。まあ、転移した場所が、森だったから当たり前なんだけど。何故か? 6つの世界の地形は基本同じなの。まあ、開発状況、発展状況によってはここはすでに森じゃない可能性もあるのだけれども。


「転移成功だね。じゃあどうしようか? 町に出て、ネットに繋ぐかい?」


頭の中に、機工からメッセージが入った。周りに生命反応アリ、人間、6人、武装アリとの事。皐月も同じようにメッセージが入った様で、


(式、人に見つかっているみたいだね。どうする? 話しかけてみるかい?)


(どうしようかしら? 此処が進入禁止区域だとかじゃない限り、敵対する理由が思い浮かばないのだけれども)


(じゃあ、ここは抵抗しないで、話を聞いたほうが良いね)


「おい! そこのお前ら! 此処で何をしている? 手を上げてこっちにこい!」


武装した男たちが銃を構えて、此方に姿をさらす。姿から恐らく、この世界、この国の警備兵だと思われる。囲まれているわね。私たちは命令通り、此方に向かって銃を構えている人に向かって、ゆっくり歩きにくい森の中を足元を気にしながら向かう。後1メートルという地点で、


「よし、そこで止まれ! 先ほど、この森のお前たちがいた場所から、魔力反応があった。お前らの仕業か?」


どういう事、ここはたしか3世界つまり、機械のみの発展世界のはず、魔力の存在を知っているなんて基本的にあり得ない。ならこの人たちは、何故、魔力を知っている? けど疑問で返しても、反感を買うだけだ。


「ええ、そうよ。違う世界から渡ってきたの。その際に、こちら側に造られたゲートの反応ね」


「成程、ならば、IDを照合する、手首を出しアクセス許可を」


「分かったわ。皐月もいいわね」


「うん、そうするしかなさそうだ」


警備兵たちは、私たちが手を下し、手首を出したのを見ると、恐らく隊長と思われる人が、照合用のリーダーを取り出して、手首にかざす。その間も銃を構えたままの周りの警備兵、どうやらすごく警戒されているようね。


「エラー、このIDは存在しません」


次に皐月の手首にかざす。あれ? 私エラーだったのに良いのかしら? やはりエラー。という事は、


「成程、異世界からの渡航者か。判った。もう行っていいぞ」


あれ、銃を下げた? それに道を開けてくれたし。もう少し話を聞かれるかと思ったけど、


「なんで、エラーなのに通してくれるの?」


「ん? 君たちここの世界の状況を理解してないのか? この世界が、最良世界に支配されていることは知っているな?」


「ええ、12年前の戦争で負けたのよね?」


そう、この世界は、戦争に負けて、支配下に置かれた。大敗だったと聞いている。まるで、他の世界の存在なんて知らなかったかのようだったと。


「そうだ、その戦争の後、魔女狩りが行われているんだ。誰かが作ったという魔力探査機を使ってな」


「魔女狩り? また旧世紀のような話ね。つまり、貴方たちは魔力反応がある人たちを捕まえているわけね」


「ああ、この世界出身の魔力を持つ人間を捕まえている。だから、この世界にいるのはいいが、あまり魔力を使わないでくれよ。また検査させられるからな」


私たちは頷く。成程、つまりは反抗戦力を削ぐために、6世界が行っている、政策なわけね。6世界は、機械、魔術が最大成長している世界。で、この世界に力を付けられると困る理由があるわけだ。だから、こんな事をしているようね。


「解ったわ。行きましょ、皐月」


私たちは出た場所に置いてきた荷物を拾い、警備兵に頭を下げつつ、


「まって、式。この人たちに話を聞いてみるのはどうだい?」


たしかにありかも。この人たちなら、魔力探知ができるってことだから、探査に引っ掛るだろうし、知っている可能性はあるわね。私は首を縦に振り、式が切り出すのを待つ。


「なんだ? まだ聞きたいことがあるのか?」


「うん、僕たち、紀光研究所を探しているんだ。何処にあるか知らないかい?」


「紀光研究所? 知らないな。お前ら、知っている奴はいないか?」


沈黙が流れる。どうやら皆知らないようね。という事はここには紀光研究所は無い?


「すまないな。力になれそうにない」


「あ、あの!」


「お、何か知っているのか?」


「は、はい! 5年ほど前に、紀光研究所という名の施設が、日本に在ったという話は聞いたことあります!」


「日本? それって、確か、数十年前に沈んだっていう?」


「沈んだ? お前たちの世界ではそうなのか?」


「私の世界ではそうね。皐月は?」


「僕の方も沈んでたね。成程そこにヒントがありそうだ」


「じゃあ行ってみましょうか」


「うん」


「ああ、それが良いだろう。近くの飛行場は……」


「いや、飛行場でなくていいよ。一番近い港町はどう行けばいいかな?」


ん? 船で行く気かしら?


「この森を、北西に抜けると、一つ町を抜けると、都市部には着くだろう。港に行くなら、一つ目の町に出たら、北東に向かう電車に乗るといい。気を付けてな」


「うん、ありがとう」


「助かるわ」


私たちは北西に抜けることにして、森の歩き辛い道なき道をゆっくりと足元を気にしながら歩く。雪も積もっており、滑りやすい。偶にこけたりしながら、少しづつ進み、やっとの思いで道に出た。

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