第120話 仕送り
ソ連で
党員
「同志、あなたに労働英雄勲章が贈られることになりました」
「いやあ、光栄です」
「長年にわたり社会主義建設のために励んだ証ですよ」
「いえいえ、私の働きなんてささやかなものです。親バカと思われるかもしれませんが、私には二人の娘と三人の息子がおりまして……息子達は、上の子から順に、労働組合の委員長、製鉄所長、農業局次官になり、下の娘も国営百貨店の店長をやっているのです。我が子ながら大した仕事をしていると思いますよ」
「それは素晴らしい……ですが、あの、上の娘さんは……?」
「ああ……、あの子のことはあまり話したくないんですが……。恥ずかしながら、あの子はこの国を出ていってしまいましてね。今はアメリカで日雇い暮らしをしているらしいのです」
「なんと!」
「そうなると『思想的に問題あり』ということで、この国への入国許可さえ下りません。だから実はもう何年も会ってないのです」
「わかりました。安心してください。党に働きかけて、上の娘さんが帰国して、職も得られるように手配します」
「ええっ? とんでもない!あの子の仕送りがなかったら、どうやって私達一家は食べていくんですか!?」
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