008 さがしもの
とりあえずサンダー国王がお孫さんに弱いということと、雷光のトルマリンが行方不明ということがわかった。
ジュエルはサンダー国王から立ち入り許可証を受け取った。これがあれば、トルマリン王国内で自由に行動することができる。そもそも偽装魔法を使えばどこでも出入り自由ではあるが、ここは友好国。可能な限り正規の手続きに則る方が、後々のためにも重要である。特に今回は、クリスタル国王の命を帯びた立場であるため、より重要性が増す。パウチさんには「カイト」として冒険者登録をしてもらった。
「では陛下、これで失礼いたします。早速さがしものを始めることにします。パウチさんも、今後ともよろしくお願いします。」
一通り挨拶を済ませると、国王から孫と見合いをしてくれぬか、せめて晩餐会に参加してもらえぬか、といった言葉をいただいた。お見合いはともかく、晩餐会に誘われた以上、断るのは失礼にあたる。
「晩餐会へのお誘いありがとうございます。では、今晩またお邪魔いたします。」
王城を出ると、すぐそばに宿屋を見つけたので、ひとまず中に入ってみる。雰囲気も悪くないし、セキュリティも行き届いている。少し割高な気もしたが、利便性も考えてここに泊まることにした。
「お客様、ご夕食はいかがなさいますか?」
宿屋の制服を着た男性が声をかけてくる。夕食は断って、朝食をお願いしておいた。
「そろそろ時間だな。」
晩餐会の時間が迫ってきたので、王城へ向かう準備をする。もちろんカイトとして参加するので、偽装魔法でドレスコードに合わせた服装にととのえる。
「に、似合わないな…。」
なんだろう、全く似合わない。燕尾服と髪型がミスマッチなのだろうか。しかしあまりにコロコロ髪型や服装が変わると、誰かに怪しまれてしまうかもしれない。あきらめて王城へ向かう。
王城に入ると、控室に案内された。偽装魔法を解除してしばらくすると、サンダー国王が女性とともに現れた。
「おぉ、ジュエルよ。こちらが我が孫、シャインじゃ。シャイン、この男が先ほどの…。」
国王がシャイン姫を紹介し、シャインに耳打ちしている。サンダー国王は、もうサンダーおじいちゃんの顔になっている。気持ちはわからなくはないが。
「…はっ、はじめまして、ジュエルさま。」
シャイン姫はドレスを少し上げて、頭を下げた。なんだか顔がほんのり熱い。シャイン姫のお顔もこころなしか赤い気がする。
「それではジュエル様、その…。こちらへ。」
シャイン姫に案内されるまま、廊下を進んでいく。シャイン姫が部屋の扉を開ける。部屋の真ん中にテーブルがあり、料理の準備がされている。
晩餐会にしては雰囲気がおかしい。これじゃお見合いじゃないか。
「ん…?お見合い…?」
は、図られた…。
その後、晩餐会の名をかりた食事会は、数時間にわたって続いた。本当にお見合いになってしまった。その…、とても楽しかった。
「サンダー国王…。平和の危機だというのに…。」
平時ならば願ってもないお話だったかもしれない。早く宝石を集めないと。
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