007 謁見

「サンダー国王陛下。」


カイトは軽く会釈をしつつ、偽装魔法を解除する。形式的な話をすれば、ジュエルは勇者として国王と同格の地位を与えられている。ただ、やはり現実は別なので、サンダー国王が座るのを待ち、着座する。


「クリスタルから話は来ておる。憂慮すべき事態じゃ。世らの治世に、そちを巻き込んでしまった。申し訳なく思う。」


サンダー国王はよわい80になる世界最高齢の国王である。ただ、新しい技術に通じており、機械立国政策は若き日の国王発案である。


「いえ、世界の平和を守ることが勇者としての務めですので。」


ジュエルの言葉に、少しサンダー国王が微笑みを浮かべた気がする。


「さてと、さっそくなのじゃが、を探しておるのじゃったな。申し訳ないが、トルマリンは行方不明なのじゃ。そもそもこの国にあるのかすらわかっておらぬ。


ただ、そちが預かっておるが反応を示しているところを見ると、やはりこの国にまだあるようじゃな。」


首からかけていたオパールが、黄色みがかった光を放っている。今までは偽装魔法で姿を変えていたため、気づいていなかった。


「何か手掛かりになるような情報はありませんか。」


国王に尋ねてみると、ギルドマスターのパウチさんを呼ぶ、という話になった。


「安心せい、彼は信用のおける男じゃ。」


しばらくすると、パウチさんが謁見の間にやってきた。


「陛下、ギルドマスターのパウチでございます。ただいま参上仕りました。」


国王の一言で、扉が開く。もちろん自動で。


「陛下、火急の用とありましたが、いかがなされました。」


そこまで言葉を発したところで、パウチさんはジュエルの存在に気付いた。


「これは、勇者殿ではございませぬか。いや、ご活躍のほどは常々。


ん…、あっ。なるほど、先ほどのカイト殿は、ジュエル殿の変装でありましたか。いや、まったく気づきませんでした。知らぬこととは申せ、大変失礼いたしました。」


いえいえ、謝るのはだます形になってしまったこちらです。そんな定型文の会話が続いたが、そろそろ本題を切り出す。


「実はを探しております。何かご存じのことはありませんか。」


「トルマリンですか。確か半年ほど前までは王城の宝物庫に保管されておりました。宝石としての価値ももちろんですが、なにより歴史的に重要なものと言われておりましたので。


しかし王城の大掃除の折、いくつか物品を紛失してしまいまして。その多くは別の荷物の中などから発見されましたが、だけは発見に至っておりません。


ギルドとしても捜索を続けてはいるのですが、何分、歴史的な財宝ゆえ…。」


パウチさんが言葉を濁そうとすると、国王がストレートな言葉をはさんだ。


「紛失したことを公にすれば、シャインに何を言われるかわからぬ。」


シャインとは国王の孫にあたる女性だ。歴史に造詣が深く、今は王立研究所の研究員として働いている。要するに、孫に怒られるのが嫌、ということだった。

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