007 謁見
「サンダー国王陛下。」
カイトは軽く会釈をしつつ、偽装魔法を解除する。形式的な話をすれば、ジュエルは勇者として国王と同格の地位を与えられている。ただ、やはり現実は別なので、サンダー国王が座るのを待ち、着座する。
「クリスタルから話は来ておる。憂慮すべき事態じゃ。世らの治世に、そちを巻き込んでしまった。申し訳なく思う。」
サンダー国王は
「いえ、世界の平和を守ることが勇者としての務めですので。」
ジュエルの言葉に、少しサンダー国王が微笑みを浮かべた気がする。
「さてと、さっそくなのじゃが、雷光のトルマリンを探しておるのじゃったな。申し訳ないが、トルマリンは行方不明なのじゃ。そもそもこの国にあるのかすらわかっておらぬ。
ただ、そちが預かっておる真理のオパールが反応を示しているところを見ると、やはりこの国にまだあるようじゃな。」
首からかけていたオパールが、黄色みがかった光を放っている。今までは偽装魔法で姿を変えていたため、気づいていなかった。
「何か手掛かりになるような情報はありませんか。」
国王に尋ねてみると、ギルドマスターのパウチさんを呼ぶ、という話になった。
「安心せい、彼は信用のおける男じゃ。」
しばらくすると、パウチさんが謁見の間にやってきた。
「陛下、ギルドマスターのパウチでございます。ただいま参上仕りました。」
国王の一言で、扉が開く。もちろん自動で。
「陛下、火急の用とありましたが、いかがなされました。」
そこまで言葉を発したところで、パウチさんはジュエルの存在に気付いた。
「これは、勇者殿ではございませぬか。いや、ご活躍のほどは常々。
ん…、あっ。なるほど、先ほどのカイト殿は、ジュエル殿の変装でありましたか。いや、まったく気づきませんでした。知らぬこととは申せ、大変失礼いたしました。」
いえいえ、謝るのはだます形になってしまったこちらです。そんな定型文の会話が続いたが、そろそろ本題を切り出す。
「実は雷光のトルマリンを探しております。何かご存じのことはありませんか。」
「トルマリンですか。確か半年ほど前までは王城の宝物庫に保管されておりました。宝石としての価値ももちろんですが、なにより歴史的に重要なものと言われておりましたので。
しかし王城の大掃除の折、いくつか物品を紛失してしまいまして。その多くは別の荷物の中などから発見されましたが、雷光のトルマリンだけは発見に至っておりません。
ギルドとしても捜索を続けてはいるのですが、何分、歴史的な財宝ゆえ…。」
パウチさんが言葉を濁そうとすると、国王がストレートな言葉をはさんだ。
「紛失したことを公にすれば、シャインに何を言われるかわからぬ。」
シャインとは国王の孫にあたる女性だ。歴史に造詣が深く、今は王立研究所の研究員として働いている。要するに、孫に怒られるのが嫌、ということだった。
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