人類の遺言

作者 辰井圭斗

ある意味キャッチコピーに違わず

  • ★★★ Excellent!!!

物書きに人類滅亡を題材にした小説書かせたら大体パーソナリティ分析できる説をひそかに提唱しておりまして。

人類滅亡と一口に云ってもその終焉に至るパターンは多種多様じゃないですか。たとえば時間にフォーカスすると今すぐにでも滅びるのか、近日滅びるのか。場所にフォーカスすると静寂のなか滅びるのか、喧噪のなか滅びるのか。原因にフォーカスするとそれは抗いようがあるのかないのか。あとは──ひとりでそのときを迎えるのか、誰かと一緒に迎えるのかとかね。

件の作品、「巨大隕石が地球に衝突するまで三年を切った」ところなのですよ。三年って結構遠くに感じるじゃないですか。日数にするとたった1095日なんですけど。だから、どちらかと云えば静寂のなかで。原因は隕石なので実質抗いようのない部類に入るのでしょう。

残すは誰と過ごすか──なのだけれど、ここが件の作品の面白くも狡いところだと私は思っていて。というのも、人類滅亡まであと"三年"なのですよ。「明日人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら私らそこそこ真面目に考えますよね? けど、「三年後人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら一瞬耳疑いません? 人によっては「いや、仲さえ悪くなかったら誰でも」って答えそうじゃないです?

そこがね──ちょっと狡いなと。ああ、そこは教えてくれないんだと。人類滅亡を題材にした群像劇において、往々にして恋人・夫婦の描かれる作品が多い中、この"人選"もらしいと云えばらしいかなと。

云うて、作品から読み取れる作者のらしさにも当然限界はあるので。人類滅亡をテーマに静寂な死を描いたところで、現実は「パーティの中で死にてぇ。シャンパンタワーカマしてから死にてぇ」と心に決めている方だっているかもわからんし。

「でもさ、ある意味愛しかったよね」

ある意味って日本語の中で一二を争うレベルで便利な言葉だと思うのですよ。ある意味って頭につけられたら、なんとなく同意せざるを得ない空気感あるじゃないですか。でも、このある意味って言葉にできないというよりは、言葉にするまでもないでしょ──みたいな意味合いが込められているようにも思うのですよね。

ぶっちゃけ駄目じゃなかったら素直に愛しい──とも云い切れないじゃないですか。

だから、ここまで長々と書いておいてアレなのだけれど、この"ある意味"が一番らしいと思えたのだ。ある意味ね。

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