人類の遺言

作者 辰井圭斗

82

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★★★ Excellent!!!

SFってある種、創作物の中でも物凄い割合で夢によって出来ているものだと思うんですよね。

そりゃあ、サイエンス・フィクションですしね。ファンタジーは何処までいってもファンタジーであって幻想であり、ホラーは非日常の体現で、恋愛も現代ドラマも日常の延長線で。

そんな中でSFは未来と夢、それから幾らかのロマンスで出来ているように思うんです。

冒頭、なんのこっちゃと思われたかと思いますが、私はこの物語みたいな人類滅亡っていうのが夢のある話だなと感じるんですよ。

『ある意味、愛おしい』。この一言で人類の歴史なんて十分なんです。

★★★ Excellent!!!

物書きに人類滅亡を題材にした小説書かせたら大体パーソナリティ分析できる説をひそかに提唱しておりまして。

人類滅亡と一口に云ってもその終焉に至るパターンは多種多様じゃないですか。たとえば時間にフォーカスすると今すぐにでも滅びるのか、近日滅びるのか。場所にフォーカスすると静寂のなか滅びるのか、喧噪のなか滅びるのか。原因にフォーカスするとそれは抗いようがあるのかないのか。あとは──ひとりでそのときを迎えるのか、誰かと一緒に迎えるのかとかね。

件の作品、「巨大隕石が地球に衝突するまで三年を切った」ところなのですよ。三年って結構遠くに感じるじゃないですか。日数にするとたった1095日なんですけど。だから、どちらかと云えば静寂のなかで。原因は隕石なので実質抗いようのない部類に入るのでしょう。

残すは誰と過ごすか──なのだけれど、ここが件の作品の面白くも狡いところだと私は思っていて。というのも、人類滅亡まであと"三年"なのですよ。「明日人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら私らそこそこ真面目に考えますよね? けど、「三年後人類が滅亡するとしたら誰と過ごす?」って訊かれたら一瞬耳疑いません? 人によっては「いや、仲さえ悪くなかったら誰でも」って答えそうじゃないです?

そこがね──ちょっと狡いなと。ああ、そこは教えてくれないんだと。人類滅亡を題材にした群像劇において、往々にして恋人・夫婦の描かれる作品が多い中、この"人選"もらしいと云えばらしいかなと。

云うて、作品から読み取れる作者のらしさにも当然限界はあるので。人類滅亡をテーマに静寂な死を描いたところで、現実は「パーティの中で死にてぇ。シャンパンタワーカマしてから死にてぇ」と心に決めている方だっているかもわからんし。

「でもさ、ある意味愛しかったよね」

ある意味って日本語の中で一二を争うレベルで便利な言葉だと思… 続きを読む

★★ Very Good!!

地球に隕石がぶつかるので、それを前に月に遺言を遺しておこうというお話。個人一人の死のための「遺言」でなく、地球に棲む生き物の総体としての遺言というか、スケールの大きい話になりますね。

遺言といえばなんだか暗いイメージを抱きがちですが、この物語で描かれる遺言は、いずれ月を訪れる異星人のために綴られたメッセージであるわけで、そう考えると、なんだか……

生なくては死がありえないように、遺される者がなくては遺言もありえないのですね。

いいお話でした。