第45話 教え
「見つけたぞ……呪受者だっ!!」
封印の強化を行う前に、一度下見へ行く事になったのだが、先ほど踏み潰した日本人形の他にも、湖までの道すがら妖怪が襲ってくることがあった。
この辺りに呪受者がいると聞きつけ襲って来たその妖怪たちを、ばあちゃんはまるで夏のうるさい蚊を殺すぐらいの感覚で次々と消していく。
襲ってくるものは間一髪入れずに…………
どんなに巧妙に隠していても、やはり結界を張っていない場所では、呪受者だと妖怪には気づかれてしまうらしい。
それにしても、やけに多いように感じるのは、呪受者が二人いるせいだろうか……?
俺もいくつか手伝ったのだが、この機会に力の使い方を教えてやろうと指南を受ける事になった。
「そうじゃない、こう!!」
「ギャアアアアア!!」
正直、こんなにあっさりとやられてしまう妖怪の方が気の毒になるほど、ばあちゃんはすごい人だった。
「里で学んで来ただろうが、基本的に妖怪は呪受者がもつ独特の匂いに誘われることが多い。普通の人間は呪いを受けると死んでしまうが、呪受者は呪いを受けても生きていることができるからこそ貴重なんだ。妖怪や悪霊なんかには絶好の栄養分だ。さらに、呪いが強く出ている場所は、その呪いを掛けた……
そう、だからこそ、呪受者は妖怪に狙われる。
だけど、呪受者は異形と戦う里の者たち……陰陽師たちにとって一番力を持つ存在だ。
この世界のバランスを保つ為に、必要な存在。
「術を使える里の者達も、肉体的には普通の人間とは違う。呪受者ほどとまではいかないが、普通の人間より栄養価が高い分、狙われることもある。だからこそ、自分の身は自分で守れるように里の者たちは修行を積まねばならない。そして、先祖達の教えを継いで、妖怪どもと戦うのさ。この世界の均衡を保つ為にね……」
ばあちゃんは、里で過ごした日々のことを思い出したのか、どこか寂しそうな瞳で、湖を見に来ていた観光客と並んで、向こう岸の山を見つめながら、そう話してくれた。
湖の向こう岸に見える山は、確かに、隠しの里がある山に似ている。
夜とは違い、どこか厳かな玄武の湖畔の湖は、その水面にまるで鏡のように青い空と雪化粧の白い山……そして、もう沈みはじめている太陽を映していた。
冬は日が沈むのが早い。
* * *
「さっむい!!!」
日が沈むにつれて、気温は下がり昼間の暖かさが嘘のように寒い。
10月でも寒いと思ったが、11月はもっと寒い。
たった1ヶ月で、こんなにも気候が変動するとは————
過去に落ちた事がある湖だが……こんなに寒かったか?
(子供の頃の記憶なんてあてにならないな…………)
ここへくる前、一度落ちたことがあるから、10月の湖なんて平気だとユウヤ達に言ったが、自分でもよくこんな寒い湖に落ちたのに無事だったなと思った。
「さぁ……はじめるよ」
きっと、ばあちゃんもユウヤのように水の上を歩くのだろうと思った。
こんな寒い中、湖の中に長時間入るなんて自殺行為だ。
それに、湖の表面は寒さで少し凍っている。
(俺、水の上の歩き方知らないんだよな……)
ついて来いと言われたら、どうしようかと思っていたら、予想外のことが起きる。
足場に立ったばあちゃんは、大きく息を吸ってから、唱えはじめた————
「
————それは、幼い俺がなんども
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