宇宙人と戦争中の未来の地球を舞台に描かれる恋愛物語。
背景はSFですが、物語の主題は恋愛です。
といっても10代の甘々の恋というより、人生を重ねた男女の思うようにならない恋。
印象的な登場人物がたくさん出てきます。
作者様の取材力が素晴らしく、軍隊の在り方、国際情勢、対宇宙人兵器、医学用語など幅広く調べ尽くされています。
それゆえのリアリティ。
ストーリー面では恋愛だけでなく、ミステリー要素もあり、謎解きも含めて楽しめます。
文字数や話数からとっつきにくいと思われがちですが、大丈夫。
きちんと推敲された文章で誤字脱字もなく、やわらかすぎず硬すぎず読み進められます。
じっくりと描かれているのでシーンが頭に残りやすく、2~3ヶ月かけて読んでも前半部分を忘れることもありませんでした。
ぜひ腰を据えて読み始めてみて下さい!
本作品は、SFミリタリーとサスペンスを主軸に、主人公の恋愛を描いた物語です。
詳しい人物描写、心象風景、その機微を事細かに描かれた内容は、キャラクターに愛着を持つに十分です。読み進めて行くと、きっと素敵な……思い入れ溢れる誰かに出会えるでしょう。
特筆すべきは、その緻密な人物描写と言いたいですが、それだけではありません。
舞台装置となる近未来と政治形態、それに関わる多くの組織、それを濁す事なく重厚な設定を背景に書き切っています。
専門用語の多さも、それを脚色する補助役になっており、それが一層この世界観をリアルなものに感じさせてくれます。
そして、そこで外交官として働く主人公が、テロを阻止するところから物語は動き出します。この時点で恋愛要素は薄目で、匂わす程度になっています。
しかし、このサスペンスとして描かれる群像劇が、映画を思わせる様な脚本で見ていて飽きません。
情報量の多い作品ですから、読み解くのは苦労するかもしれません。
昨今の余計な部分は極力削いだ、読み易い文章とは対極に位置する文体かもしれませんが、読み進める毎に虜となっていく事に気付ける筈。
そうなった時、この緻密に計算された脚本の良に気付く事でしょう。
主人公に隠された壮絶な過去、二重人格を思わせる不穏な雰囲気。
それら全て、ご都合主義的ではなく、しっかりとした伏線が用意された上で描かれています。
有能完璧、非の打ち所がない主人公が見せる顔の裏にあるものとは……。
数々の困難と、それを乗り越え幸せを掴み取る物語を、是非ご堪能下さい!