第2話

「さ、話して」

「話せと言われてもな……」

 当然、こういう事は年長からだと言わんばかりに忠宏に向く百華。言われた忠宏も事象は知っていても詳しくはわからないので、一番わかってる俊彦に目配せをする。それ受けた俊彦は、

「俺が話すよ。俺が一番詳しいし。けど何から話したらいいか」

「そうね。先ずは俊彦がなぜ郁をそこまで気を使っているのか。そして柔道部へ誘った本当の理由。そして彼とあの子、そして恐らくこないだ一緒にいた男について。その関係といったとこかしら?」

 そう言われ俊彦は話し出す。郁との出会い。中学での再開。それぞれで言われた言葉に助けられたこと。この高校へ来た理由。それから卒業からGWまでの出来事。兄貴へ質問した内容。その際の自分の推理。そして入部の協力。全てを話した。


「そう。だいたい予想していたような事ね」

「え? ももちゃんわかってたの?」

「これぐらいは今までの見てたらわかるわよ」

「ほえー。流石ももちゃんだねー」

 予想の範疇だと言った百華に真帆は心底驚いていた。

「なぁ、俊彦……何か秘密にしてたとしてさ、それ知られてるってことは無いよな?」

「何かって……」

「例えば、ほら……男には隠さないといけない本とか……、昔のほら……二人でした事とか……」

「それは……言われてないから大丈夫……だろ」

 男二人は百華の推理力を改めて凄さを実感し、過去のいたずらや隠した本を知られているのではないかと身震いした。


「さて、貴方達三人のこれまでの行動はわかったわ。たぶん俊彦が言うように二股だったのは間違いないと思うわ。それがGW時期に知った。ゲームセンターと今日の事を見る限り、たぶんどちらかにそれを言われたのだと思う」

「はぁ? まじかよ!」

 百華の推理に俊彦が声を荒らげる。

「落ち着け。俊彦」忠宏が俊彦をなだめる。

「ああ、すまん」

「続けるわよ。郁の問いかけに二人は何も言い返せなかったと言う事は、二人とも罪悪感はあるってことだろうし。ただね、彼がああなってるのは……それだけじゃない」

「おい! 真帆姉! 他に何かあいつらやってんのか!?」

 今にも掴みかかろうとする俊彦を再度忠宏が食い止めてる。

「俊彦、少し落ち着きなさい。今から話す事は憶測。私も今聞いた内容以外の事は知らないわ。それにこれから話す事は今後彼の事をどーするのかの話し合いよ。冷静になりなさい。大事な友人なんでしょ?」

「そ、そうか。そうだよな。ごめん」

「それで? 何があるの?」

 俊彦は百華に言われ落ち着きを取り戻す。それに対し真帆が続きを促す。

「うん。えっとね、私がお母さんを亡くした時のね、私達や、特に妹の目に似てるのよ……」

 と切り出した百華は、これまで郁に感じていた事を伝えた。


「あーあの時の百華か。希望亡くした目してたよな……」

 話を聞いた忠宏が当時を思い出し呟く。それを受けた真帆がそれに続く。

「そうそう。寂しくないように必死で美沙ちゃんの面倒見てたけど、当の本人も悲しい癖に我慢してたからねー」

「それで真帆姉は抱きつきまくってたよな」

 真帆の言葉に俊彦も思い出す。そんな三人は思い出に浸っていた。そんな中一人ぶつぶつと百華は呟いていた。

「そっか……。希望……。だとすると……家族……母……恋人……」

「ももちゃん? どうしたの?」

「え? うん。ちょっともしかしたらと思う事がね……」

「真帆姉?」

「たぶんね、希望とか、いろんなものを諦めてるんじゃないかな? と。たぶん、私はわかってあげれるかも知れないけど、今はまだなんとも言えないから、とりあえず貴方達二人はいつも通り接しなさい。少なくとも私がそうだったように、少しは救われるはずだから。それはゲームセンターまでの日での彼だと効果あるのは立証済みだわ」

 そう百華は俊彦と真帆に告げ、さらに話し出す。

「で、忠宏は俊彦のフォローね。もう巻き込まれてるのだから、兄として、真帆の彼氏として支えて」

「わかってるよ」

 忠宏は年上として落ち着いて返事をする。


 このあと、各々情報交換をしたり、やがて弟も加わり久しぶりの全員で話したり遊んだりとしてその日を終えた。

 俊彦の家をあとにした百華は一人夜道を見上げながら考えていた。

「確かに信じてた人に、それも二人から裏切られれば部活も辞めたくはなるだろうし、希望とか信じられなくなるとかわからなくもないけど……それだけかしら……。あの時言った事はそんなとこからじゃないのよねぇ……」

 そう呟き、郁の事をずっと思い浮かべ夜道を歩いていた。

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