第4話

ショッピングモールへと着いた4人は郁の目的のものを買い終え、真帆のリクエストでゲームセンターへ行き百華はバスケのシュートゲームをやっていた。

「難しいわ、全然入らない」

「次わたし! 百華には勝つ!」

 結果入った数は二人とも同じ42点。どうやら運動神経は運動部に入ってるだけあって良いようだ。

「次は俺だな。まぁこの距離ならなんとかなりそうだ」

 真帆が終わり俊彦がやる。流石運動神経が良いと言われるだけあって次々と入れていき55点、その結果に二人へドヤ顔を決める。

「よし、俺の勝ちだな。フッ」

「くそー! ハンデ10点あれば勝てると思ったのに! そのドヤ顔腹立つ! この! この!」

 真帆はよほど腹が立ったのか俊彦の足を蹴っていた。

「次は郁ね」そう言いながら身震いをしている百華。

「ほんとにやるんですか? 俺が加わっても面白くもなんともないですよ?」

「あのドヤ顔してる俊彦をギャフンと言わせて」

「まぁ流石に負けないとは思いませんけど……」

 百華に催促をされ乗り気になってなかった郁は仕方なくむかった。

 久しぶりに持つボールが例えゲームといえなんとも言えない気持ちになり、手に持つボールをじっと見る、

「かーくん。始まってるよ!」

「あ、ああ」

 真帆に声をかけられシュートをやりだした郁。次々とボールが入っていく。三人のボールはリングに当たったりボードに当たったりしながら入ったりバラバラだったが、郁のボールはシュパッ!シュパッ! と音を鳴らしながらどこにも当たらず入っていく。そして経験者だと思わせるシュートホームに見ていた三人は、

「ほえー、どんどん入ってくよ?」

「凄いわね。フォームもなんか綺麗なんだろうって思うわ」

「流石バスケ経験者。こりゃ負けたな」

 真帆、百華、俊彦と感嘆の声をあげ魅入っていた。


「郁……郁がいる」

「ん? 本当だ。フォームが綺麗だ」

「そうね。相変わらず綺麗ね」


 どこからともなくそんな声が聞こえる。するとさっきまで同じ軌道を描いていたボールが乱れ、入ることなく落ちていった。ちょうど時間切れとなり得点は70点と圧勝だった。

「かーくん凄いね!」

「郁の一人勝ちね」

「やっぱバスケでは勝てねーな」

 声をかけられた郁が振り向く。が、振り向いた先は反対側だった。


「上杉に成瀬さん……」

「相変わらずフォームが綺麗ね」

「久しぶりだな、郁」

「お久しぶりです、成瀬さん」

 声をかけられた郁は男に向かってお辞儀をした。それを見ていた百華と真帆は誰? とお互い顔を向ける。一方俊彦は険しい顔をしていた。


「腕は訛ってなさそうだな。バスケ戻らないのか?」

「戻りませんよ。高校バスケでは俺は通用しないとわかったので」

 成瀬という男にそう返事を返す郁。それに対して一緒に来ていた女性が口をひらく。

「そんなことないわ。あなたなら今からでも間に合うわよ」

「上杉さんも久しぶり。もう現役の時のような情熱はないですよ。向いてなかったですし」

「そんな他人行儀に話さないでよ。もったいないわ、あんなに頑張ってたじゃない」

「麻子の言うとおり、才能もあるんだ。辞めるのはもったいない」

 勿体無いと上杉という女性に成瀬という男が同調して郁に訴えかける。そんな二人に郁は、

「麻子か……仲が良さそうで何よりです。才能ね……。そんなものあっても意味ない……ですよね? それにもう二人は他人のはずだが」

「「……」」

 その返答に二人が黙り続けて郁が話し出す。

「バスケは俺に何も残してくれない。俺にとっては残酷なスポーツでした。それじゃ」

 そう言われた二人は立ち尽くし郁を見ていた。

 

 郁は自分の荷物を手に取り俊彦達へ振り向き声をかける。

「すいません、このTシャツ店に届けるように言われてたので、今日はこれで行きますね。古賀そういうわけで悪いな」

「え? おい、郁」突然の事に俊彦は慌てた。

「山路先輩も福本先輩も今日はありがとうございました。では明日部活で」

「え? ちょっとかーくん!?」

「郁!?」

「あ。山路先輩。汗で若干寒いんですよね。これ良かったら着て下さい」

「え、あ……」

「次の部活の時にでも返してくれたらいいんで」

 そう言ってカバンから取り出したパーカーを百華に渡し、場の展開に三人は混乱していた。

「郁! ちょっと待てって。そんなことさっきまで」

 呼び方が変わった事に気づいた俊彦は、何か嫌な予感がして呼び止めようとする。

「古賀! 悪い。急ぐから。店の手伝いも実はあってね。忘れてたんだ」

 そういって郁はその場を去った。


 店の手伝いとまで言われてしまえば止める事ができない。例え嘘だろうと思っても。事実Tシャツを買いに来たのだから嘘とは断定できず、ただ去っていく後ろ姿を見る事しか俊彦は出来なかった。

 そして俊彦は原因となったであろう二人を睨みつける。

「上杉……」

「あ、あの、古賀君……」

 睨まれた上杉は怯む。怯えている上杉をかばい成瀬が前にたつ

「誰か知らないが、彼女を睨まないでくれるかな?」

「あんたが成瀬か……。睨まれるような事をしなければしないさ。それにあんたも対象だよ」

「「……」」

 言われた成瀬と上杉は押し黙る。

 それを見ていた真帆と百華が止めに入る。

「俊君、どうしたの? 喧嘩はだめだよ?」

「俊彦! ちょっと落ち着いて」

「わかってる。喧嘩はしねえよ」

 そう言って俊彦は郁が去っていった方向を黙って見る事しかできないでいた。


 郁は一人歩いていた。ただもくもくと。バスケットボールを触れた。シュートを打った。触った瞬間、シュートをしている間、自身がバスケをしていた時を思い出していた。未練が残ってるかと聞かれるとそれは自身でもわからない。

 ただあの時の熱量はあるかと言われればそれは無いと言える。そしてさっきも言った事は嘘ではなく本心だとは言える。ただ走馬灯のように思い出すと同時にある事も思い出していた。中学から初め高校のGWまでの3年と少し。そこを思い出すという事は彼女の事もセットで思い出す。

 辞めてから少しずつ思い出すこともなかった思い出。冬に話題になった時すら無かった事が、例えゲームとはいえ思い出してしまっていた。

 タイミングが悪い。悪い事は重なるというが、まさにタイミングが悪かった。


「なんで……あのタイミングで……あの二人に会うんだ……」


 そう独り言をこぼし足早に家へと歩く。その表情は目は何も見ていないかのように、ただただ真っ直ぐなんの感情も表さず向いていた。


 一方で残された三人は。

「真帆姉、百姉。悪い。今日はもう帰ろう」

「そうね」

「う、うん」

 そう言って現れた二人に目も合わせず立ち去る俊彦。その俊彦に一言返事をした二人もまた何かを考え、三者三様に沈痛な面持ちで一言も喋らず歩いた。


第1編 変わり始めた日常 第4章 邂逅 ~完~

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