第2話

「えー? そんなこと言われたら泣いちゃうよ?」

「そうね。悲しくて泣きそうだわ」

 真帆、百華と順に言って撫でいない方の手で二人は目元を隠す。

「いや、そんな三文芝居いいですから。せめてするなら撫でるのやめるのがマナーでしょ!」

「それは無理な相談だよ。落合君」

 真帆はどこぞのキャラを真似るように低い声で言う。

「そうね、止まらないの。手が勝手に……誰かがあやつっているわ!」

 百華はなにやら見えない何かがいる設定のようだ。

「それはワトソン君ですか? 透明人間ですか? 幽霊ですか? (なんでノリツッコミをしなきゃ……俺の頭に何があるんだよ……慣れてきてる自分が怖い)」

 とりあえずなんとなく予想し得た返しをしてぶつぶつと呟く郁。

 まだ二日目だというのに順応しつつある自分になんとも言えずぶつぶつ不満をもらす。

「いやぁ、今までは俺がいじられてたけど、見てると面白いな! 慣れるのはいい事だぞ」

 どうやら呟きも聞こえていたようで、それを聞いてた俊彦は笑顔だ。


「さて、日課もやったし、どこ行く?」

「行きたいとこあったんじゃねぇの? 真帆姉が遊びたいって言ったんだし」

「何も決めてない! 考えてない!」

 遊びに変更した真帆は俊彦に伝えるだけ伝えて何も考えてない。それを悪びれるもなく胸を貼って答える。

「いや、日課って、撫でるのを日課にしないで下さい」

 予定が決まってない事より撫でるのを日課にさせられるのはゴメンだとばかりにスルーする郁。

「とりあえず、今日はあの子達は休みを伝えて来ないし、私達三人で決めるといつもの事だから……ここは郁に行きたいとこ決めてもらいましょ?」

 まとめてるよと言わんばかりの発言だが、日課の件は忘れさせようとする百華。

「そうだね、かーくんに決めてもらおう!」

「俺は美味しいもの食べれたらなんでもいい」

 当然二人は百華の魂胆はわかっており、真帆はすぐにそれにのっかり、俊彦はわかってはいるが自分が標的ではないから昼食のことしか考えてない。

「なんかはぐらかされてる気がしますが……では、父の仕事用のTシャツを買っとくように頼まれているので良いですか?」

「じゃ、決まりだね。ご飯食べてからショッピングだね」

「そうね、何食べようかしら?」

 買い物に決まり、真帆と百華がどの店にするか雑談をはじめる。


 そんな中、俊彦が郁に聞いた内容で目的が変わってしまう事になる。


「なぁ、郁そう言えば店の行くの許可とれたのか?」

「ああ、春休み中で6人お願いしといたぞ。日時は今日予約確認して空いてる日ってなるけどな」

「おおー! やったぜ! お礼言っといてくれよ」

「ああ、わかった。けど日時決まってないけどそっちは予定大丈夫か?」

「合わせるし大丈夫だ。他もたぶん無理やり空けるよ」

「ならいいが」

「けど、店の料理も食べたいけどお前の手料理も食べたいよなぁ。昨日話してたらまた食べたくてさ」


「俊彦それよ!」「それ!」

 百華と真帆が同時に突然叫ぶ。

「なにが?」

 俊彦は二人が突然叫ぶのは慣れているので淡々と聞き返す。

「だ・か・ら! 郁の手料理よ!」

「そう手料理!」

 二人の言葉を聞いて嫌な予感がする郁。

「お、おう。また、食べたい……よ、な、と」

 流石に二人からいつも以上の気迫で迫られ気後れする俊彦。

「そう! 私もたべたいわ!」

「私も!」

「俊彦だけ食べたことが」「俊君だけ食べてるのが」「「ずるい!!」」

 と俊彦に指を指し息ぴったりに発言する百華と真帆。

 もうこの時には郁は流れがわかって諦めたのか肩がだらりと落ちていた。


「ということで郁? 先ずはスーパーへ買い出しして貴方のお家でお昼を食べて買い物へ行きましょ?」

「さんせーい」

「やっぱりか。まぁいいですよ」

 許可がおりハイタッチを交わし喜ぶ二人。


「なんか……すまん。しかし以外にもすんなり許可したな」

「もういいよ。遅かれ早かれこうなるのは昨日の時点でわかってた」

「間違いない」


 そして決まれば動くのは早い。わいわい話しながら近所のスーパーへ行き買い物をすませ、郁の家へ着き三人は出来上がるのを談笑しながら待っていた。


「こうやって作ってもらうのなんて久しぶりで、いつもと違うから落ち着かないわ」

「まぁたまにはいいんじゃないか? 気にしないでいいさ。あいつ料理趣味だし」

「そうはいっても……。やっぱり何か手伝ってくるわ」

 俊彦は食べる専門だし、郁が料理が趣味と知っているので特に何も思わず、お茶を飲みながら待っている。

 百華は三人が家で集まって食べるとなると毎回振る舞う立場だ。それに普段からもそうなので落ち着かないので、郁のもとへと向かった。

「もーちゃんは世話されるの慣れてないからねー。ずっと台所のほうちらちら見てたし」

「百姉らしいな」

 そう言って二人は笑った。


 何か手伝おうと台所にいる郁に声をかけようと覗くがかけようとした声が止まる。

 百華の目には料理が出来るとわかる手際の良い動きで作っている郁が目に入り、しばらく見惚れてしまう。

 それに気づいた郁は声をかけ、

「どうしたんですか?」

「え? あ、何か手伝おうかと思って」

「もうすぐ出来ますから大丈夫ですよ」

「そう。けど本当に出来るのね。家庭料理って感じの動きには見えなくて、料理が趣味の人というより料理人て感じがして、思わず見惚れてしまったわ」

「一応たまに店の手伝いしてますから。とカッコつけて言いたいとこですが、皿洗いがほとんどでサラダをたまにしかやってないので、そう言われると嬉しいです」

 父親の働いてる姿がかっこよく、見様見真似で家で料理の練習をしてきた郁にとって、料理人みたいと褒められたのが嬉しくて笑顔でお礼を言った。


「ほ、本当に何も手伝えなさそうだから楽しみにまってるわね」

「はい、お客様は大人しくお待ち下さい」

「楽しみだわ」

 そう言ってリビングでまつ二人の元へ戻っていく。


 笑顔で返された百華はかなり動揺してしまっていた。顔が赤くなるのが自分でもわかるぐらい照れていた。


 二人の元へ戻っても顔の火照りは戻らず顔が赤い百華に俊彦が聞く。

「百姉どうしたんだ? 手伝いは? それに顔が真っ赤だぜ?」

「手伝えることが無くて戻ってきたの。顔が赤いのは照れてしまったのよ」

「料理姿見て見惚れたのか? まさか惚れたとか?」

 照れたと言われ揶揄おうとニヤニヤする俊彦。


「たしかに見惚れたわ」

「え? まじで惚れたの!?」

「え? え? まさかもーちゃんに春!?」

 素直に見惚れてと答えられると思わず驚く俊彦と真帆。

「いえ、確かに料理をしてる彼は料理人みたいで見惚れたけど、照れたのは別よ」

 ではどういう意味だと二人は首を傾ける。


「笑顔がすごかったの! 撫でられて照れてる顔が可愛いから撫でてたけどそれ以上に可愛かったの!」

 主語がない言葉にますますわからない二人。

「作ってる姿を褒めたらね、ありがとうって見たことない笑顔でいうの! もうそれが破壊力抜群だったのよ! もう抱きしめたいのかなり我慢したわ!」

 それを聞いた俊彦は合点がいく。


「わかった。学校の女子が言ってるやつだ。百姉もクールショタの餌食になったか……」

「クールショタの餌食ってなに?」

 真帆はわからない。

「あいつがクールショタとか童顔クールって呼ばれて人気なのは知ってるだろ?」

 二人は頷く。

「けど見た目だけで有名なったわけじゃなくて、食べてる時笑顔なるんだよ。けど学校連中は知らないだろうけど食関係の事はあいつ笑顔が出るんだよ。そのギャップにみんなやられて人気なの」

「そう、まさにそれよ! あれは反則だわ……」

「しかし、それだと惚れたとかじゃなさそうだな」

「違うわね。けどあんな笑顔を普段していたらかなりモテると思うわよ? とくに年上はいちころね」

 俊彦の話に大いに納得する百華。

「なーんだ、春がきたわけじゃないのか残念」

 真帆は親友に春がきたかもと期待しただけにとても残念だと口を尖らさる。


「おまたせ。できたぞ」

 話が一段落したところでちょうど出来たらしく皿をウエイターのように4皿もった郁が話題にあがっていま笑顔と同じ顔で現れた。

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