第404話闇バイト
三十分後。宮部の部屋の中にまで聞こえるバイク音で気付く。
「来やがったか。ちっ。センスのねえ騒音まき散らしやがってよお」
「つねりんがー、カワイイ女の子をー、ウーバーなりー」
「まあまあ。なにかあればこの田所がいますから」
「田所裁判長。彩音ちゃんはAI少女なりよ。カワイイ女の子ならたなりんがですねなり」
そんな声を宮部がかき消す。窓から義経が運転するバイクを見ていた。ヘルメットを脱ぐ忍の姿も確認する。
「確かに。言葉通りのカワイイ娘が一緒だわ。あのボケぇ…ッ。舐めてんのか」
宮部の表情が一気に鬼となる。チームを割る時に忍も好き勝手暴れていったことは忘れていない。たなりんも田所もそんな宮部の怒りを察する。
「宮部っち」
「あ?」
「お風呂場のお風呂ポスターはあのままでいいなりか?」
「あ?あああああああああああああああ!外せぇ!今すぐ外すんだぁ!」
急いで押し入れのふすまを閉じ、風呂場を片付ける宮部。お風呂ポスターは水で濡らせば剥がれる仕様である。その他、おっぱいボディスポンジもまとめて空の浴槽の中にぶん投げる宮部。そして。
「みーやべーくんっ!」
入り口のドアの向こうから義経の声が。
「あの野郎ぉ…。ふざけやがって」
そのままドアを開ける宮部。
「ちっす。パイセン。これが言ってた『会わせたい娘』」
「なーかーやーまぁー…。てめぇ…ウチに上等こいときながらなんだぁ?」
「…」
「あん?パイセン。こいつがパイセンと過去にいろいろあったのは聞いてますけどね。ケンカしに来たわけじゃねえからよ。とりあえず話聞いてくれねえか。電話じゃあれだと思ったからよお」
「世良ぁ。話なら聞くぜ。でもよお。この馬鹿が一緒ってのは話が別だ。こいつはツラ見せればその都度殺すと決めてんだわ」
「…俺もあんなことしといてぬけぬけと顔出せた義理じゃねえのは分かってるけどよ…。ヤキなら前に受けたじゃねえか…」
「だったらツラ見せんじゃねえよ。俺んちの住所を知ってる人間は限られてるからよ。てめえが殺されに来るってのは分かってたぜ。俺がもう一回ヤキいれてやんよ!ああ!?」
「まあまあ。パイセン。パイセンがつええのとこいつがクソなのは俺もよーく知ってる。それを踏まえての話だ」
そこで奥から田所が顔を見せる。
「宮部っち君。なんか訳アリっぽいっすね。ここは話を聞きましょう」
「でも田所さん…」
そこで田所が一転、真面目な表情を見せる。
「話を聞いてそれでも筋が通らないならその時は自分も宮部っち君の言う通りに動きますんで」
田所の言葉を聞き、仕方なく納得する宮部。
「ちっ」
「おじゃましまーす」
「つねりん。乙なり」
「お、たなりん。乙ぅー」
そして忍の姿を見ながら「ああ…、どこが会わせたい娘なり…。こっちは会わせたいより合わせる気満々だったなりのに…合体が、うう…」と思うたなりん。そして『組チューバー』の三人と義経、忍を合わせた五人で話が始まる。
「で。話ってなんだよ」
宮部が切り出す。茶も出さない。
「んだよお。パイセン。この家は茶も出ねえの?やっぱ女の子は連れてこれねえなあ」
「うるせえよ。そんな与太話しに来たわけじゃねえだろ。さっさとくっちゃべれよ」
「おい」
義経が忍へ促す。そして忍が話し始める。
「話は前と同じになる。間宮を止めて欲しいんだよ」
「間宮を止めろだあ。てめえ、前も同じこと言ってたよなあ。おい。俺も『藻府藻府』の十代目だぜ。舐めんなよ。てめえが下手打って失脚したことぐれえ耳に入ってきてんだよ」
「今の間宮は使えねえ奴はどんどん切って使える奴、よりつええ奴を自分の下に入れてる」
「だったらなんだ。おい世良ぁ。てめえも間宮の兵隊じゃねえのか」
「…。確かに俺は間宮君の兵隊かもね。でも目の前で俺のアニキを病院送りにされた。正直迷ってんよ」
「てめえのアニキを目の前で病院送りにされても『間宮君』かよ。どいつもこいつもよお。あの間宮にイモひきやがって。あんな奴俺がぶっ潰してやんよ」
「だったら潰してくれ」
「あ?」
そのまま忍が続ける。
「今の間宮はデカくなり過ぎた。半グレの立場を上手く使って本職まで手玉に取ってよ」
「ああ?ヤーさんがどうした。ウチも昔っからヤクザ上等でやってきてんだよ。今更そんな泣き言いいにきたんかよ」
「あいつはただの暴力野郎じゃねえ。頭も切れる。やり方が普通じゃねえんだよ」
「彼の言うことも分かりますよ。本来ならとっくに解決してるだろう問題も『肉球会』が手を出せない状況ですからね。ただの狂犬じゃないのはよーく分かってます」
田所の言葉に忍が続ける。
「あいつはITってのか。最近の機械とかそういうのにも詳しいんだよ」
「ああ?俺も詳しいぜ。部屋にデスクトップがあるぐらいな」
「お。『G―ぎあ』じゃね。いいゲーミングパソコン持ってんねえ。パイセン」
「うるせえよ」
「…パソコンやスマホでゲームってのなら普通だろ。あいつはそんなレベルじゃねえんだよ」
「そんなレベルじゃねえってなんだ。自前でプログラミングでもやるってか」
「それに近いかもな。例えばだ。『闇バイト』って言葉をよく聞くだろ」
ここから忍が進化した間宮の恐ろしさを語る。
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