第370話『時速百五十キロで喫煙してみた!』
「おい。お前一人か?飯塚さんと間宮は?」
関谷より少し遅れて新藤が単車で駆け付ける。
「新藤!」
そう言ってすぐに新藤の単車のケツに跨る宮部。
「お、おい。お前の単車は?」
「うるせええええええええ!間宮が勝手に乗っていきやがった!それに飯塚さんまで一緒にだ!」
「え?どゆこと?飯塚さんと一緒にって」
「さらわれたんだよ!いいから出せ!すぐに追いつけ!あの野郎ぉ…」
なんとか状況を飲み込めた新藤が宮部とニケツで走り始める。走りながら新藤が宮部へ話しかける。
「でもよお!高速だぜ!下道に逃げられたらアウトだぜ!どこから降りたか分かんねえだろ!」
猛スピードで走るバイクのエンジン音と耳元を過ぎていく風を切る音にかき消されないよう大声で叫ぶ新藤。
「それは大丈夫だ!間宮の狙いは伊勢と一緒にいたおっさんだ!」
「なに!あの人を追ってる!?なんで!?」
「知るか!それより飯塚さんもあぶねえ!ありゃあいつオチてもおかしくねえ!」
「マジか!」
「マジだ!」
「ちっと黙ってろ!飛ばすぜ!」
右手に握ったアクセルを新藤が限界まで手前に回す。迫りくるカーブにもケツに乗った宮部と息の合った体重移動を見せてスピードを落とさずに走る。そんな中宮部が新藤の背中でタバコに火を点ける。時速百五十キロでの喫煙。
「新藤!」
咥えタバコのまま宮部が叫ぶ。
「んだあ!」
「吸うか!」
「おう!」
そして新藤の口元へ後ろから火の点いたタバコを咥えさせる宮部。そして新しいタバコを咥えて火を点ける宮部。
「うおおおおおおおおおおお!ニコチンターボ全開!空き缶踏んだらごめんなさいいいいいい!」
カーブ、体重移動、カーブ、体重移動、走り屋としての十代目。
「いたぜ!あれじゃねえかあ!お前のマシンだろ!」
宮部が後部シートから確認すると先ほどの関谷の運転する車とカーチェイスを繰り広げている自分の単車。
「間宮ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぜってえ殺す!」
新藤・宮部チームが一気にカーチェイスへ参入する。
「…おいい!宮部君!?ちょっと速くない!?」
間宮の運転する宮部のバイクの後ろでふらふらになっていた飯塚の意識がハッキリとする。
「あれ!?気が付いた!?しっかり掴まっててくださいよ!落ちたら死にますよ!」
「え?お前間宮じゃねえか!なんでお前のケツに俺が乗ってんだ!?」
「やだなあ!覚えてないんすか!あ!カーブっす!しっかり掴まって俺と同じように体重かけてくださいよー!」
「ちょ!スピード!馬鹿!曲がり切れねえぞ!」
悲鳴に近い声を上げながら間宮と同じ方向に精一杯体重をかける飯塚。
「お!上手いっすね!これならブレーキかける必要ねえっすよ!」
「だからなんで俺がお前のケツに乗ってんだよ!?」
「やだなあー!覚えてないんすか!?ドライブしたいって言ったの飯塚さんじゃないっすか!」
「言ってねえよおおおおおおお!」
「なんだよ。記憶あんじゃん」
「なんだって!?」
「カーブっす!曲がりますよ!」
「ちょ!待てこら!」
ノーブレーキでカーブを曲がる間宮。
「ヘルメットない方が最高っしょー!こいつはー!」
「なんだってえー!知るかあ!健司と同じこと言うなあああああ!」
間宮のケツに乗りながら猛スピードで走ってると京山のケツに乗せてもらった時のことを思い出す飯塚。九代目『藻府藻府』のメンバーではなかった飯塚。プライベートでたまに京山のケツに無理やり乗せられて夜の街を走ったことがあった。『藻府藻府』関係なく一台の単車で。生意気そうな連中とかち合うこともあった。無謀な人数相手でも京山がいれば負け知らずだった。
「この感覚が最高じゃね!メットなんか被ってたらスピードが台無しだぜ!」
「うるせええええええええ!」
「ははははは!ひゃっはー!」
そんなことをふと思い出す飯塚。
「飯塚さん!あんたも京山さんのケツに乗せてもらったことあんのかよお!」
「あ!?それがどうした!」
「いや!なんでもねえっす!」
そして関谷の運転する車を発見する間宮。
「飯塚さん!あんたぁ!ユーチューバーだろ!」
「それがどうした!うるせえなあ!今言うことか!」
「今から撮れ高最高の動画を撮らせてやんよ!『日本最大級の広域指定暴力団組員が運転する車をガンガン蹴り飛ばして廃車にしてみた!』ってのはどうよ!」
「ああ!?」
そのまま間宮がバイクを関谷の運転する車に急接近する。関谷もバックミラーでそれに気付く。ここから再び危険なカーチェイスが始まる。
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