第337話てりとりーだ!!
「たなりんくーーーーーん!」
夕方五時ジャスト。たなりんの家の前で大きな声でたなりんと呼ぶ『組チューバー』の三人。そしてマイルームからダッシュで玄関へと向かうたなりん。
「あら。昨日言ってたお友達?」
「そうなりよ!いいからママンは部屋には勝手に入っちゃダメなりよ!」
「はいはい」
たなりんのママは内心喜んでいた。「(学校でいじめにでもあってないか、お友達はいるのかいつも不安だったけど、ちゃんと家にお友達を…。おもてなししないとね!)」と。ちなみにたなりんママは若くて美人だった。三十四歳である。そして玄関のドアを開けて三人と顔を合わせるたなりん。
「よお」
「挨拶はいいからこっちなり。それと呼び鈴がついてるなりから大声で呼ぶのはやめるなりよ」
「んだよー。ツレんちに遊びに来たら大声で呼ぶのが基本だろ?」
「それは宮部っちの常識なり!自分の常識は他人の非常識って言葉を知らないなりか!」
「まあまあ。田所さんがその方がフレンドリーでいいって言うからさあ」
「くっ。飯塚さん…。飯塚さんは長兄なりから暴走を止める役なりよ」
そして待ち構えていたたなりんママ。
「あら?お友達?はじめまして。いつもうちの子がお世話になってますわね」
「え?ひょっとして…、たなりん君のお母様ですか?」
「そうですよ。まあ、たなりん君って呼ばれてるんですか?」
「お母様。初めまして。田所と申します。たなりん君にはいつもお世話になっております」
田所が7・3のパンチパーマ頭で真面目に挨拶を、ワンチャン下心丸出しで『ビシッ』と決める。
「田所さんですね。いつもお世話になってます」
「いえいえ。お母様。よかったら若い人たちはたなりん君に任せて。私と二人でお茶でも」
「田所のあんさん…。何言ってんすか…。ほら、行きますよ。ほらほら」
「ああああああーーー、綺麗なお母様ぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そしてたなりん部屋に入り、全員が部屋に入ったのを確認してから内側から部屋の鍵をかけるたなりん。
「おいおい、たなりん。部屋に鍵かけてんのかよ」
そう言いながらたなりん部屋を眺めてその意味を理解する三人。壁と天井には二次元タペストリーが。ベッドにはモフモフ二次元シーツに二次元タオルケットに抱き枕は枕カバー。
「へえー、こういう部屋もいいねえ」
「うお!『さそり座のぱらどくす』じゃん!こっちは『じーぶりーる』!『はによめ』!抱き枕カバーは『さいみんぱらだいす』かあ!」
思わず嬉しくなり思い切りたなりん部屋のたなりんベッドにダイビングをかまそうとする宮部。その宮部へとっさに飛び蹴りをかますたなりん。
どーん!
「いてててて…。何すんだよ…たなりん」
「宮部っち…。うちの子『たち』に許可を取ったなりか?毎晩たなりんを優しく包み込んでくれている彼女『たち』が嫌がってるなりよ!」
テリトリーだ!ここはたなりんの聖なるテリトリーだ!何をするにも許可が必要だ!と思う飯塚。
「(いいですか。この部屋にあるものはすべてたなりんにとって『大事な大事なかけがえのない宝物』ですからね。勝手に弄っちゃダメですからね。宮部っちみたいにガチの飛び蹴り食らいますよ)」
あらかじめ田所へと釘を刺す飯塚。
「(お、おう…)」
「とりあえずその辺に座るなり。ベッドに座る時はきちっと『失礼します』と『彼女』『たち』に言うなりよ」
「おお!『いいやま』のゲーミングパソコンじゃん!これってオーダーでしょ?モニターは『いのくん』と『でる!』のデュアルスクリーン!すげえ!」
ここでたなりん部屋のデスクトップパソコンに飯塚が食いつく。宮部も思わず食いつく。
「す、すげえ…」
「ふふふ…。それでは『うちの子』のお披露目といくでござる」
そう言ってたなりんがデスクトップパソコンの電源を入れる。
「田所のあんさん!勝手に触っちゃあダメです!」
「あ!」
三人がたなりんのゲーミングパソコンの起動に注目している隙に抱き枕を抱きしめようとしていた田所であった。
「たまにてめえが金借りたいからって店のアリバイ会社目的でスカウトに頼んで面接受けに来るバカ女とかいなかったか?」
「どうですかね。うちは紹介さえしてもらえればあとは弱みを握りさえすればってやり方でしたんで」
「ああ、そうだな。ま、ハナから働く気がねえのにアリバイ会社目的で店を利用しようとするバカ女も送ってくるぐらい下手な鉄砲もってやり方だな。お前んところはスカウトよりもSNSの方が効率いいんじゃねえか」
「ええ。承認欲求の高そうな女とか空っぽで誰かしらに構って欲しい女とかですかね。そういうのを釣るのが上手い奴がいるんで」
「まあそうなるよな。ルールナシの何でもありならそっちの方が早いよな」
世良兄と忍の会話は弾む。
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