第288話てめえはスネ夫かよ
小泉からの合図を受け、小泉の舎弟三人が動く。そしてそれっぽい人間たちがカラオケ店に入っていくのを見ていた別の男が電話をかける。
「俺だ」
「池田です。瀬和さんがおっしゃってた通りです。たった今それっぽいのが三人入っていきました」
「そうか。恐らくその後にもっと大人数の集団がそこへ入っていくだろう。また動きがあれば連絡しろ」
「はい」
そして世良兄の部下である池田が電話を切ると同時にカラオケ店に入っていくガラの悪い集団。
「じゃあ小泉さん。ラインでこう送ってください」
「まあちょっと待て」
「どうしました。歌いたい歌でもあるんですか。時間はありますんでそれは後でいいですか。朝まで付き合いますよ」
「せやなあ。便所や。便所」
「小泉さん。念のために言っときますが。小泉さんの部下の人たちなら来ませんよ。あ、来られませんよと言った方が正確ですね」
「なんやと」
小泉の言葉と同時にスマホにかかってきた電話に出る間宮。
「おう。そっちはどう」
「ええ。おっしゃってた通りです。三人ほど小泉の舎弟がそっちに向かうところでした。俺らでガラおさえました。ていうより一階は修羅場になってます」
「そっか。まあお前は巻き込まれねえようにな。そっから避難しろよ」
「はい」
そして電話を切る間宮。小泉へ話始める間宮。
「小泉さん。なんなんすか。部下三人で僕を襲うつもりだったんすか」
「あ。何を言うとる。それより誰と話しとった」
「知り合いですよ。なんかここの店の一階で今、乱闘騒ぎが起こってるみたいだそうで。この街も物騒になりましたね。『肉球会』さんは何やってんでしょうねえ」
「間宮…、てめえこのガキゃ…」
「小泉さん。あんまり怖い言葉遣いせんといてくださいよ。小泉さんがすごいのはよおおおおおく知ってますから。あんまりガキを脅しても意味ないでしょ」
その時、部屋のドアが開く。間宮と小泉の視線がそこへ集まる。
「お疲れ様です」
慈道である。後ろには部下を数名連れ、部屋の中へ入ってくる。
「おお、慈道。何でお前がここにおる」
「小泉さんの舎弟の方から言われまして」
「そうか。まあええ。慈道、お前らでこいつをいわしたれ」
「こいつって誰をでしょうか」
「このガキしかおらんやろが。何言うとんやお前。さっさとせんかい」
「だそうですが。間宮さん、どうしましょう」
「なんじゃあ!?お前ら嵌めおったんか!」
「嵌めたかどうかは知りませんが。俺は今、この人の下でして。ここでまさか会うとは思ってませんでしたが。小泉さん。すいません。この人をやるってのは聞けませんね」
「慈道ぉ…。てめえ…。間宮ぁ…。これがお前の『絵』か…」
「さあ…。慈道君も言ってるようにたまたまじゃないすか」
「お前らぁ!あとで全部分かるんやぞ!あとで分かったらお前ら全員トコトンいわしたるからなあ!ガキが極道舐め腐っとったらどういう目に遭うか体に教えちゃるわい!」
「怖えなあ。慈道君」
「そうですね。間宮さん」
「後で殺されちゃうって。どうすんだよ。残された時間を楽しむしかないのかねえ」
「そうですねえ。じゃあその『後』が来ないように『今』を大事にしますか」
「小泉さん。あんたの返事はそういうことでいいかな。せっかくのいいチャンスだと思ったんですけどねえ。知ってます。人生には三度チャンスが来るって話。あんた今その一つを無駄にしちゃったんだよ」
慈道の後ろに控えていた人間たちが小泉へ詰め寄る。
「おい!待て!わしに手を出したらどうなるか分かるやろう!本職に手ぇ出して無事に生きられると思うとるんか!おう、お前ら!慈道と間宮をやれ!こいつらをやった奴を次の頭にしてやるぞ!『身二舞鵜須組』若頭に手ぇ上げたらお前ら生きていかれんぞ!うちの上は直参やぞ!わしのおやじはあの『血湯血湯会』直参『土名琉度組』の幹部やぞ!」
「うるせえよ。てめえはスネ夫かよ。ジャイアンに言いつけるってかあ」
「ははっはっはっはっはー!」
「小泉さん。あんたぁ極道らしく野心丸出しでよかったんだよ。だがよお。欲かいて見えなくなってたもんが多いんじゃねえか。『身二舞鵜須組』さんの若頭の小泉さんは組ではご法度である薬をシノギにして大儲けしてました。それに利用されてた半グレは『身二舞鵜須組』さんと小泉さんのどちらかを選ばなくちゃあならなくなりました。証拠が表に出れば大変なことになると。そこで薬はよくないと小泉さんに協力するのを止めようとしたら恫喝されました。このままでは心も痛みます。病みます。そして半グレたちは勇気を出して小泉さんへ本当に止めましょうとお願いに行きました。それでも脅されました。それで仕方なく正当防衛で小泉さんに手を出してしまいました。ってとこかな」
顔を真っ赤にし、怒り狂った小泉に間宮が一台のスマホをかざす。このスマホが小泉へ引導を渡す。
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