第256話『撮り鉄』
「たなりん」
『藻府藻府』メンバー対三原、天草、江戸川との動画を編集していた飯塚や田所の横で企画会議的なものをしていた宮部とたなりん。宮部がタイミングを見計らってたなりんへ訊ねる。
「なんなり?」
「世良って奴とたなりんってどんな関係なの?」
「へ?せら?誰なりか?その人は?」
「この動画に映ってるバケモンだよ。飯塚さん、ちょっと見せてもらっていいですか?」
宮部の言葉に飯塚が答える。
「ああ。いいよ」
飯塚には分かっていた。あの日、たなりんから聞かされた『ホビーショップみえね屋』でラス一の『あるらきゅうへいあおい』再販バージョンをたなりんが譲った相手が世良であることを。そして冴羽を倒し、江古田を圧倒した天草が子ども扱いされる世良の動画を見せられるたなりん。
「へ?これは…、つねりんなり…。ええ!つねりんはこんなに強い人だったでござるか!?」
「え?つねりんって、あの『ホビーショップみえね屋』でラス一の『あるらきゅうへいあおい』再販バージョンをたなりんが譲って仲良くなったあの?」
「そうでござるよ」
そこで飯塚も会話に参加する。
「いやあ、俺もさあ。あの夜は『ヤバい!』と思ったんだけどさあ。たまたまその場を通りかかった世良君がこのロン毛の半グレを圧倒的強さで退治してくれてさあ。びっくりしたよ。それになんかさあ、たなりんってスチールの『ストリートアライブ』の世界では有名なんだって?」
「へ?なんでそれを知ってるなり?匿名でプレイヤー名も絶対分からないものを使ってるなりなのに…」
いやいや、と思う飯塚。と、同時に、ちょっと考えれば分かりますよーとも思う飯塚。
「たなりんで『RINATAN』でしょ?『RINATAN0721』は『おなにい』じゃないの?」
コナン君張りの推理を見せつけられ愕然とするたなりん。
「ば、バレバレだったなりでござるか…」
「いや、バレるとかよりもそのたなりん、『RINATAN0721』ってめちゃくちゃ強いじゃん。俺もいつも負けてるもん」
「ま、まあ…。ネットでも敗けた記憶があんまないでござるなりねえ」
そこで宮部が説明する。
「その世良ってのも『ストリートアライブ』でたなりんに何度も挑んだみたいだけど一回も勝てねえらしくて。まあ、動画観れば分かると思うけどさ。このバケモンみたいなロン毛は天草って奴で。うちのメンバーも一人ひとりが核弾頭クラスに強いんだけど、冴羽は敗けたし、エコも押されてたの。それをたまたまそこを通りがかった世良が持ってた『あるらきゅうへいあおい』再販バージョンの箱を天草の馬鹿が蹴ったのね。ほらほら。ここのとこね。蹴ってるでしょ」
「確かに蹴ってるなりね。それがあのラス一のたなりんが譲った『あるらきゅうへいあおい』再販バージョンだったなりね」
「そういうこと。そこから蹴った天草は見ての通りで。その後、飯塚さんがもしかしてと思って聞いたら世良が『たなりんはツレであいつはすげえいい奴だ』って話になってね。『ストリートアライブ』の話も世良の口から『今のは勝てねえストリートアライブの分!』って言いながら天草を宙に浮かせててさあ」
「…ってことは…、この天草って人を倒したのは実質このたなりんってことなりか?」
「まあそうじゃないの。ラインも交換したんでしょ?世良君と。いや、そのつねりんと」
「したでござる。いやあ、でもつねりんはとてもいい奴なりよ。宮部っちや飯塚さんとも絶対気が合うと思うでござるなりよ」
「まあ普通ならそうなんだけど。ちょっと話がややこしくてね」
そこで間宮の存在をたなりんに説明する飯塚と宮部。
「なるほどなり…。ていうか、その間宮って人も同じように『コイパツシリーズ』ファンであり、美少女フィギュアやネットゲーム好きかもしれないでござらんか?」
「うーん」
そこで田所が言う。
「ちょっと。そこ。お兄さんだけに作業を押し付けてサボらない!企画会議に飯塚ちゃんは動画編集!ちゃんとやりましょうよ!ちゃんと!」
「すいませーん!」
「住友よお」
「どうしました?二ノ宮のおじき」
「いや、飯塚さんから預かっとるカメラで何か撮れんもんかとなあ。まあ、最近なにかとゴタゴタ続きやろう」
「そうですね。で、何か撮れたんですか?」
「いや、撮れたっていうよりなあ。ハマってしもうてなあ」
「へえ。おじきがですか。それで何を?」
「電車や」
「へえ。電車ですか」
昔気質で屈強な組員が揃った『肉球会』の舎弟頭である二ノ宮は『撮り鉄』にハマっていた。
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