第246話金八ゴリラ
「エコ。いける?」
「ち…、んの馬鹿…、ゴリラか…。ああ、全然いけんよ」
「んだあ。『藻府藻府』てのはつるまにゃケンカも出来ねえ虫の集まりかよ。ま、ハンデだ。かかってこいよ。虫くんたち」
「うるせえぞ。この金八先生が。おめえの相手は俺一人で充分!このさ…」
ドゴーン!
ものすごく重いであろうバス停のあの石の土台を片手で軽々と振り上げて冴羽へと振り下ろす天草。
「ち、この金八ゴリラが…。んなの食らう訳ねえだろ…。人の名前ぐらい最後まで…」
そしてさすが元『藻府藻府』の天草。いくら破壊力があろうとモーションが大きくなり、軌道も読まれるバス停の土台をそのまま手放しステゴロへと攻撃を変える。その素早い動きで冴羽へと拳の連打を放つ。冴羽も十代目『藻府藻府』メンバー。それらをすべてまともに受けず、掌で一発一発を正確にはたき落とす。拳の軌道を変えるために。その隙に後ろから攻撃をと近ずく江古田に向かって冴羽が叫ぶ。
「エコ!邪魔すんじゃねえ!この金八ゴリラは俺一人で充分!」
「んだあ。調子に乗ってんじゃねえよ。虫どもが。時間の無駄。俺は何人相手だろうと構わねえぜ」
「ゴリラが人間様の言葉を使うんじゃねえよ」
そう言って威嚇用のエンジニアでの素早い蹴りを一発放ち、天草から距離をとる冴羽。そして先ほど天草が振り回していたバス停のポール部分を両手で掴む。
「ふんっ!」
「あ?おいおい勘弁してくれよ。俺も弱いものいじめは勘弁だぜ。おお、十センチでも持ち上げられたら拍手してやんよ」
「うるせえええええええ!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ冴羽。タバコを取り出し、口に咥えて火を点ける天草。一服しながら言う。
「おいおい。江古田ぁ。手伝ってやれよ。二人なら持ち上がるんじゃねえの」
余裕をかましながら煙を吐き出す天草へ江古田が答える。
「天草ぁ。お前の目は節穴か」
「あん?」
「ぐぬうううううううううううおおおおおおおおおおおおお!」
冴羽の咆哮。そして震えながら膨れ上がる両手の筋肉。それを見ていた飯塚が驚く。バス停のポールがゆっくりと折り曲がっていく。天草もそれに気付く。
「ゴリラはてめえだろ。お前、なんつうんだっけ?」
ポールの折り曲がったバス停をぶん投げ天草へ突進しながら冴羽が叫ぶ。
「俺は十代目『藻府藻府』冴羽純様だあ!混ぜるとキムチぃ!」
冴羽の拳をかわす天草。そんなことはお見通しと言わんばかりに伸び切った右手をグーからパーに変え、天草のロン毛を鷲掴む冴羽。
「つーかまえた♪」
そう言った瞬間、天草のロン毛を思い切り引き寄せる冴羽。ロン毛はケンカに不利である。『ロン毛が相手の時は髪の毛を掴め』。髪の毛は掴んでしまえば振りほどくのが難しい。無理に抵抗するとブチブチと抜ける。何より頭部の自由を奪ってしまえる。それは天草も知っていたこと。天草は冴羽を舐め腐ったのである。引き寄せた天草の顔面にチョーパンを叩きこむ冴羽。
「くっ!」
鼻っ柱に思い切り冴羽のチョーパンを食らった天草が鼻血を流す。
「もういっちょ!」
そう冴羽が叫んだ時、天草が自分の髪の毛を掴んでいる冴羽の手首をものすごい握力で掴む。そしてもう片方の腕で冴羽の頭を掴み、チョーパンを止める。
「いてえじゃねえか。ガキが」
そう言ってチョーパン返しを冴羽の顔面に叩き込む天草。
「ぐはっ!」
鼻っ柱に天草のチョーパンをまともにくらう冴羽。ただ、天草と同じように掴まれた頭の腕の手首を思い切り掴み、同じように握力で締めあげる。今二人は、小学生のケンカで互いに髪の毛を掴み合いながら「お前が離せよ!」、「お前が先に離せよ!」状態である。ただ、言葉の代わりにお互いの掴んだ手首への握力がものを言う。
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