第187話ハウル

 身二舞鵜須組のシマウチで暴れる間宮と元『藻府藻府』の三人。


「つええ奴はいねえのかああ!」


「おらあ!」


「間宮ぁ。そろそろ夜が明けるぜ。俺風呂入りてえ」


「俺は布団で寝てえ」


 一晩中暴れ倒し、うっすらと明るくなる空を見て気付く。時間は朝五時を過ぎている。


「ああ…、悪いな。サービス残業だったわ。その辺のホテルでいいんじゃねえの」


「おいおい。その辺のホテルつってもラブホしかねえじゃん」


「ラブホの方がその辺のビジネスより設備はいいよ」


「おい、江戸川。お前、デリとか呼ぶんじゃねえよ」


「あ、呼ぶに決まってんだろ。お前はどうなんだよ。さっきそればっかりスマホで調べてたろが」


「じゃあとりあえず一旦ここで分かれてまた夕方あたりに集まるってことでいいか」


「ああ。まあねえと思うけどなんかあったら携帯鳴らせ」


「あ?お前、プレイ中とか絶対出ないだろう」


「馬鹿。立ちバックしながら出てやるよ」


 そしていったんバラバラに分かれる四人。




 新藤に敗れ、病院に運び込まれた比留間の携帯が鳴る。画面を見て舌打ちしながら出る比留間。鹿島から。


「んだよ」


「んだよじゃねえよ。てめえ新藤に負けたろ。何やってんだ?」


「うるせええええ!舐めてんのか!舐めてんのか!舐めてんのか!」


「ああ、今のままじゃあその辺の小僧も舐めっぱなしだぜ。面汚しもいいとこだぜ」


「だったらてめえのツラで汚名返上してやんよ!ああ?」


「やってみろよ。それよりてめえに確認しときたくてな。てめえ、俺の下につくか?」


「ざけんなあああああああああ!」


「電話で吠えんなよ。無様晒したてめえについてく奴はいんのか?やる気があんなら俺が『リターンマッチ』をセッティングしてやるぜ」


「ボケがあ!!」


 そう言って携帯をぶん投げる比留間。ベッドから跳び起き、包帯だらけのまま携帯を何度も踏みつける比留間。




「飯塚ちゃん」


「ほいな。田所のあんさん」


「いよいよ今夜っすねえ」


「そうですねえ。まさかこの年になって暴走族デビューするとは思ってませんでしたけど」


 今日の夜、『模索模索』幹部・鹿島率いる『宇佐二夜』を潰す予定の田所と飯塚。宮部曰く、十代目『藻府藻府』のメンバーへの顔合わせも合わせて行う予定とのこと。


「まあ、飯塚ちゃんも自分も『撮影』メインで。宮部っちたちのサポート的な、まあ足を引っ張らないようにしてれば大丈夫だと思いますが」


 飯塚の部屋を汚さないようタバコを吸っていた飯塚が思わず『鞭打ち』の素振りを行う。それを見て、うわあー、田所のあんさんなら一人で『宇佐二夜』だろうと壊滅させちゃうんだろうなあと思う飯塚。


「でも、宮部っちが言ってたように『宇佐二夜』って数が多いんですよね。しかもほぼ全員が道具を振り回すみたいで。大丈夫ですかね?」


 やはり内心ドキドキが止まらない飯塚。さすがに今までと違って下手したら怪我する、いや、怪我だけでは済まないかもしれないとドキドキが止まらない飯塚。


「大丈夫っすよ。とりあえず飯塚ちゃんには自分がつきますから。健司の後輩たちはまあ大丈夫だと思いますが」


「いやあー、僕だって『組チューバー』であり、『藻府藻府』の一員ですからね。やる時はやりますよー!」


 そう言ってドキドキしながらシャドーボクシングの真似をする飯塚。それを見て田所が言う。


「飯塚ちゃん。おやじの教えです。役ですよ。役。そして『早くしろ、いい加減にしろ。ハウルの仕事しろ』です」


 後半を聞いてポカーンとする飯塚。そして。


「田所すぁーーーーーーん!飯塚の兄者ぁぁぁぁ!」


 さあ宮部っちとの待ち合わせ場所に行こうと部屋を出た瞬間、二人の元へたなりんが猛ダッシュで近付いてくるのであった。

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