第131話いいとこどり

「一体間宮の野郎は何がしてえんだ。遊びてえなら俺んとこに来いや。引退した先代狙いやがってよお。舐めてんだろ。俺らをよお。あ」


「…はあ、…はあ、と、と」


「シャキシャキ喋らんかい!」


 スマホで『まとめサイト』を見ている二ちゃんの隣にいたコージが怒鳴る。


「…止めてくれ…。あいつ…を…」


「あ?」


 同じくエンジニアを履いたコージが思い切り忍の顔面目掛けて蹴りを放つ。それを片手で宮部が受け止める。ガチである。意識が飛びかけながらも激痛で気を保つ忍の顔面は蒼白となる。そして続ける。


「間宮を止めてくれ…。あ、あいつは…大きくなり過ぎた…」


「あ。どこがでけえんだ。ツラの話してんじゃねえんだよ」


「あい…つは…、『やくざ』…まで飲み込んじまった…」


「それがどうした。あいつは『肉球会』の人たちにじゃれてるだけだろうが」


「そんなもん…、あいつにとって…は、はあ、準備にも入らねえ…」


「『蜜気魔薄組』を手玉に取ってるみてえだが所詮半グレ小僧の跳ねっかえりじゃねえか。そんなもん俺らも『上等』だからよ。いつでも来いよ。十代目『藻府藻府』は『蜜気魔薄組』上等だからよお。ボーガンだろうがチャカだろうが何でも持ってこいや。ああ」


「そ、そんなもん…じゃねえ…。あいつ…は、はあ、『血湯血湯会』のてっぺんを…狙ってる…」


 日本最大広域指定暴力団である『血湯血湯会』の名前を聞き四人の体が固まる。


「『血湯血湯会』だと…」


 鋭い眼差しで忍を睨みながら宮部が呟く。そして『まとめサイト』を見ていた二ちゃんが言う。


「おい。確かに『蜜気魔薄組』は『血湯血湯会』の系統だわ」


「おい!新藤!」


 自分自身に気合を込める意味で宮部が大声で新藤に叫ぶ。


「なんだ」


「俺たちゃあ『何』だ?」


「十代目『藻府藻府』だろうが」


「その前にだ。もう一度聞く。俺たちゃあ『何』だ?」


「漢だろ」


「だな。あいつが狙ってんのは『血湯血湯会』か?それともその『看板』か?俺はよお。てめえの『看板』だけは日本一、いや、世界一だと思ってっからよお。京山さんならこんな時何て言うんだろうかなあ!」


「『血湯血湯会』上等っつうだろ。あたりめえだろが」


「だな。おい!忍!間宮がやろうとしてることはなんだ」


「…いいとこどり…の…組織ではない組織…」


「ああ!?」


「法に…縛られず…、半グレや…ヤクザ…、海外組織…、それらの…いいとこ…どり…」


「あの馬鹿ッ…!上等だよ。おめえのお望み通りあの馬鹿を止めてやんよ。その代わり『やり方』は俺らの好きな『やり方』になっちまうがよお!」


 そう言い放ち、忍の『顔面』に拳をぶち込む宮部。そして言う。


「おーい。寝んなよ。寝たら起こすからな」


 そう言って忍の右手小指を握り締め思い切り反り返らせる。


「ぎゃあああああああああああああ!」


「おう。寝るなっつったが誰が叫べっつったよ。次の質問だ。お前らの『ヤサ』を全部吐け。知りませんでしたじゃすまねえからな」


 先代頭である京山をボーガンで打ったことはこれぐらいじゃあ済まされない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る