第123話再会
「え?『蜜気魔薄組』ですか?」
「はい。田所のあんさん。本来なら堅気である僕なんかが関わっちゃあいけない人たちだと思ってますが」
「そうですよ。飯塚ちゃん。今はどこも『反社チェック』を徹底してますし、『やくざもん』と関わることは悪いことしかありませんよ」
田所にパソコンでの作業を教えながらふと聞いてみた飯塚。
「ですよねえ。でも『肉球会』の皆さんは昔気質と言いますか…。いい人ばかりだと思うんですが…」
「飯塚ちゃん。馬鹿言っちゃあいけません。『肉球会』も含め、『やくざもん』は全員『くず』です。『人間の屑』です。そんな『くず』に対して一ミリでも『いい人』だなんて感情は持っちゃあダメですよ。やつらはそういう気持ちを利用してきますからね」
「でも…、この組チューバー『仁義』は…。『肉球会』のためでもありますよね?」
「ええ。飯塚ちゃん。まあ『詭弁』だと思ってください。今は『特殊詐欺』など『暴力団』の資金源は昔とはまったく変わってます。先ほどの質問の『蜜気魔薄組』は力はないですが『経済』、つまり『金集め』に長けていてそれで勢力を拡大してます。『ヤクザ組織』って月々の『義理』と言いまして、まあ『上納金』のことです。飯塚ちゃんみたいな堅気の皆様は働いてお給料を会社なりバイト先なりから貰うわけですよね?」
「まあ、そうです。田所のあんさん」
漫画やVシネマで観たことをリアルに語られるとやっぱり実感してしまう飯塚。それが現実なのかと思う飯塚。
「『ヤクザ組織』は逆で組員それぞれが『個人事業主』って解釈です。まあ『甲斐性』ってやつです。毎月『組』に決まった額を『義理』、つまり『上納金』として納めるんです。その代わり組の看板を使っていい、まあ『組の看板の使用料』との解釈でもいいです。そして『義理』を入れられない部屋住みなんかは『組』の雑用をしながら『小遣い』を貰ってタバコとか買うんです。部屋住みならメシ代も家賃も光熱費もかかりませんので。でも時給換算みたいな考え方はないんです。部屋住みは漢を磨く、最初の大事な大事な基礎の基礎です。銭金は別もんです。それでうちみたいな一本独鈷、つまりどこの大手にも属していない組は上部組織への『上納』がないんです。だから別に無理して『銭金』を集める必要もなかったんです。だから『銭金』よりも『堅気の皆様を第一に』の考え方がぶれることなくやれているんです。そんなうちのおやじが『ユーチューバー』、組チューバー『仁義』に託した考えや想いはそう言った業界の未来のことを考えてのことなのは間違いないことだと思ってます。実際に『反社』が『ユーチューバー』となってお金の心配がなくなれば変わることって多いと思います。それは悪いことが少なくなるってこともその一つだと思ってますよ」
なるほど…、改めて責任重大だ…と思う飯塚。そして田所の説明は続く。
「『蜜気魔薄組』みたいな組織は月々の『上納金』がものを言うんです。あそこの上は『身二舞鵜須組』でして。そこにかなりの『義理』を毎月収めてるみたいです。だから急激にのし上がることが出来たんですね。そして『身二舞鵜須組』も同じです。上に組織があります。その『義理』をたくさん収めることが出来るのです。そして最終的に『血湯血湯会』にたくさんの『義理』を収めることでその『組』は優遇されるのです。もちろん他にも『組織に対しての功労』などもありますよ。でもやはり『金』は強いんです。自分から言わせれば『高いお店に飲みに行く』や『愛人を囲う』や『高い車に乗る』とかを我慢すればいいんですよ。おやじの教えですが『見栄』を張りすぎなんだと思います。『見栄』に金を突っ込むのがこの業界の昔からの風習みたいなところはありますからね」
そんなもんなんですねえと思う飯塚。
「宮部っち!今日のコミケも気合でござるよ!」
「お、おう…。たなりん」
「前の『れびーたん』フィギュアは共にゲット出来てよかったでござるなあ!」
電車に乗り、オタク友達の田中君とコミケへ向かう十代目『藻府藻府』頭の宮部。戦争中だろうと『コミケ』は大事である。
「うん。あれは最高だったね。部屋に大事に飾ってるよ」
「はははははは。宮部っち。隠すことはないでござる。『当然』宮部っちも『れびーたん』に『ぶっかけ』たでござるよなあ?」
「へ?」
「やだなあー。もう。拙者と宮部っちの仲じゃあないですか。隠し事はなしでいこうでござるよ!私、たなりんはあの『れびーたん』にどろっどろのあたたかーいやつを頭から『ぶっかけて』あげてるでござるよ!」
「あ、ああ。た、たまーにね」
「隠すことはないぞお。宮部っちぃ。あ、ごめんごめん。実は今日のコミケなんですが。もう一人、友達と合流する予定なのです。宮部っちには急で本当に申し訳ない!!大丈夫かなあ?もし宮部っちが人見知りとかならそいつには今回は別行動と伝えるでござるが」
「え?別にいいよ。たなりんのツレでしょ?」
「ありがとおおおおおおお!これでまた共通の『仲間』が出来るでござるよ!」
そしてコミケ会場で十代目『藻府藻府』頭・宮部は飯塚と再会することとなる。
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