第47話『胸につっかえたポテトをアツアツのコーヒーで流し込んでみた!』

「もともと、間宮はうちのやり方に反発をいつも持ってましたので。しかも下のもんの前でそれを口にするのも問題でした。さすがに幹部の前ではそういうのは見せませんでしたが自分らの耳に入るのが分かって言ってましたね。『藻府藻府』は京山さんの代もそうでしたが『自分より弱いものからのカツアゲ禁止』や『弱いものいじめ禁止』など。まあ『不良』の看板掲げている奴ならそれが当たり前といいますか。その辺は京山さんや他のOBの皆さんから徹底的に叩き込まれましたので」


「そうやなあ。不良がかっこ悪いことやってたらただの馬鹿やぞ。別に『万引き』をするなとか『交通マナーや規則を守れ』とは一言もいわん。お前らも『そういうの』は分かるな。立派な大人も『かっこ悪い』ことを今は平気でやってる。そういうのにはなるなとお前らが下のもんにおせーてやらなあなあ」


 セットメニューのポテトを口に運びながら京山が言う。


「そうです。なので宮部も間宮には何度か牽制は入れてました。もちろん最近は目に余るものがありましたので呼び出してヤキ入れたこともありましたが」


「すいませんでした。自分の躾がなってませんでした。もっと徹底的にヤキ入れておくべきでした」


「それで?」


「はい。例の『ぼったくりバー』の件で、『肉球会』に皆さんがすぐに動いてくれたと」


「知らんなあ」


 ポテトをモグモグ食べながら答える京山。新藤が続ける。


「あの店にうちの間宮が関わっていたのは事実です。間宮は半グレ集団『模索模索』ともつながってたようです」


「『模索模索』なあ」


 ポテトを胸に詰まらせ、コーヒーで流し込もうとするがコーヒーが熱すぎてちびちびとしか水分が流し込めなくて少しパニくる京山。新藤がダッシュでお冷やを持ってくる。それを受け取り一気に口の中に流し込む京山。


「あ、ありがとう。あー、死ぬかと思った」


 そんな京山に宮部が続ける。


「前の集会で間宮がチームの前でこう言いました。『おいおい!うちのチームは反社と繋がってるぞ!お前ら!そんなチームでこれからも走るんか!?』と。あらかじめ何人かの幹部とメンバーに空気入れてたんでしょう。本来ならその場でシメるとこでしたが空気入れられた連中が数にして半分近くいまして」


「そんなにか…」


「ええ。その集会で『藻府藻府』は割れました。さらに間宮の野郎は用意周到といいますか。『模索模索』の連中までその集会に乗り込んできまして…」


「そうなんか?」


「はい。実際に『模索模索』と名乗ることもありませんでしたし、顔も名前も知らんようなチンピラや小僧ばかりでしたが。数はすごかったです。こっち側に残った人間に大きな怪我人を出さなかっただけまだよかったと思うぐらいです」


 京山がタバコに火を点け、食後の一服をしながら言う。


「『模索模索』ねえ。あそこはバックに本職がついてるやろ」


「あいつらはそれを否定してますが。確実にそうだと思います」


「分かった。よお知らせてくれたな。まあ、この街で真面目に働いて暮らしていらっしゃる皆さんにも『模索模索』はいろいろやってるみたいやな。お前らはチームのことだけを考えろ。そっかあー…。あの間宮がなあ…」


 タバコの煙を吐き出しながら昔を思い出す京山であった。

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