第32話レコ?パトラッシュ!せかちゅーーーー!
とりあえず最初は『ぼったくりバー』を懲らしめようと二人で話し合った田所と飯塚。
「ああいう作品は隠しカメラを使いますので。田所さんがカメラマンに慣れる前にやりましょう。実際の『ユーチューバー』の現場や雰囲気もやってみるのが一番分かりやすいと思いますので。それに僕もこの企画は単独ではなく僕と田所さんの二人でお店に入りますし、僕もやりやすいです。もちろん、撮影は隠しカメラですが僕が撮ります。田所さんが映らないようにしますので」
そんな飯塚の提案で決まる。善は急げで例のお店の近辺でキャッチの誘いを待ちながらぶらぶら歩く二人。
~その少し前のやり取り~
「田所さん。やはりキャッチは普通っぽい人をターゲットにしそうですのでサラリーマンのようにスーツ姿でやりましょう」
「分かりました。スーツですね。何着かありますので。いったん自分のヤサによっていいですか?」
ヤサですね。そうだそうだ。『家』とは言わないよねーと思う飯塚。
「レコがいるかもしれませんが気にしないでくださいね」
え?レコ?れこ?あ、猫ちゃんを飼ってるんだろう…、『肉球会』だもんね。うん、そうだ。昔気質で屈強な組員の一員だった田所さんは動物もかわいがってるんだろうなあ。うんうん。と思う飯塚。
「はい。分かりました」
田所のヤサに立ち寄る。大人の女性がいるが猫は見当たらない。
「あ、すいません。これが自分のレコです。おい、挨拶しろ」
「はじめまして。いつもうちのがお世話になっております」
え?どゆこと?れこ?大人の女性だぞ。あ!ねこって愛称で呼んでいるんだ!だって『肉球会』だもん。うんうん。と思う飯塚。
「いえいえ、こちらこそ田所さんには大変お世話になっております」
深々と頭を下げる飯塚。
「おい、俺のマオカラー出してくれや」
田所さん…。マオカラーを着たサラリーマンはいませんよ…。と思う飯塚。あれはそっち系の人が着るものですよと思う飯塚。
「あのお、もっと普通っぽいのがいいと思います」
「そうですか?おい、一番地味なスーツ出してくれや」
白いスーツばかりの中から選んでいるレコさん。いや…。白は…。と思う飯塚。
「あのお、ジーパンとTシャツとかありませんかね?」
「そうですか。おい。確かどっかにあったやろ。出してくれや」
そしてジーパンとTシャツ姿に着替えてくる田所。しかもパーマを無理やり7:3にしている。ダメだ!笑ってはダメだ!悲しいことを考えるんだ!と思う飯塚。パトラッシュ!悲しい!助けてください!せかちゅーーーー!と無理やり思う飯塚。
「じゃあちょっとこれから新しいバイやから」
破門のことには触れない田所。笑っちゃだめだ!笑っちゃだめだ!笑っちゃだめだ!と呪文のようにパトラッシュ!疲れたよ!悲しい!助けてください!せかちゅーーーー!を想像する飯塚。疲れた!?黒塗り!?飯塚アウト―の声が聞こえるがアウトになっちゃだめだ!と念じる飯塚。
~そして街を歩く二人~
「お兄さんたち。飲みですか?」
「え?ノミ?」
「はい!飲みです!」
早速キャッチされた!『ノミ』じゃないです。『飲み』です!と後で説明しようと思う飯塚。
「おひとり様一時間三千円ぽっきりです!どうですか?」
「いいですねえー。一時間だけ行きませんか?」
「そうですね。じゃあ一時間だけ行きましょう。えー、すいません。確認ですがよろしいでしょうか。ひとり一時間三千円で二人なんで六千円で大丈夫でしようか?」
「はい!もちろんです!」
「消費税などは込みでしょうか?」
「え?あ、ああ。大丈夫です!僕の権限で特別サービスしちゃいます!込み込みで大丈夫ですよー」
なんでもこの人の権限で大丈夫って言いそうだなあと思う飯塚。『PayPay使えますか?』とか言いたいけどそこはややこしくなると思いぐっと飲み込む飯塚。
「組チューバー『仁義』」の最初の動画撮影が始まる。
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