第8話 建国記念祭①
ちょっと仕事が忙しく。。。(lll __ __)バタッ
更新遅れ気味になりそうですm(。>__<。)mゴメンナサイ
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―イヴァリア歴16年7月14日―
一台の馬車が到着し、窓から微笑む男が顔を出し招待状を差し出すと、門兵はにこやかにそれを受け取り男に声をかけた。
「おお!ウエステッドさん、今年もようこそ!」
「ははは!いつも顔を合わせてるじゃないか。」
「いえ、やはり本日は特別な日ですので。」
「そうだな。ありがとう。」
「どうぞごゆっくり楽しんでください。」
門兵の挨拶にクレイグが手を軽く上げると御者が馬車を進ませた。
「ププ。」
「イリーナ・・もういい加減にしてよ。」
笑いを堪えるイリーナに、紺のスーツに身を包み髪をオールバックにしたエストが顔を引き攣らせていた。
「クスクス・・ごめん。でも似合ってるってみんな喜んでたじゃない。」
「よく言うよ・・笑いものにして。」
「あら、わざわざ朝早くに見送ってくれたのに失礼な言い方ね。」
「見送りって・・・声掛けたのイリーナでしょ??あんなに人が集まると思わなかったよ・・・・ったく、人を見世物にしてさ。」
面白くなさそうに背もたれに体を沈めたエストはそう言って頬を膨らませた。
「いえ、見送りよ・・ぶふぅ・・・。」
「絶対笑いに来てたよね!!!!」
真顔で答えようとしたイリーナだったが堪えきれずエストにツッコまれた。
「あんなにお腹を抱えて笑うドゥーエとクリードを見たのは久しぶりだったわ。」
満足そうに微笑むイリーナに対してエストは、さらにズルズルと体を座面に落としていった。
「馬子にも衣装って初めて言われたよ(怒)くそぉ・・・メリル先生までゲラゲラ笑ってたな・・・。」
「それにしても、あんた責任取りなさいよ?」
「は?」
「アルマだけ『エスト、カッコいい』って乙女になってたわよ。」
「あ・・そうだったね。」
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アリエナを出る際に見送り?に来た面々はビシッと決めたエストの姿を目にして固まっていたが、リュナの『馬子にも衣装だな♪』の一声で大爆笑が始まった。
しかし、トコトコと寄って来たアルマがエストの袖をキュッと掴むと
「エスト♥カッコイイね!!!似合ってるね♥」
アルマは目を輝かせてべた褒めしてきた。
嬉しくなったエストはいつも通りに抱き上げクルクル回ると、頬赤くしたアルマに「大きくなったらお嫁さんにして♥」とプロポーズ(笑)されてしまったのでしたw
**
「大きくなったら結婚してって、あのアルマの目見た????」
「見た・・・・。」
「カリン以来でしょ?結婚してって言われたの?」
ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくるイリーナにエストは苦笑いを浮かべた。
「あー・・いやぁ・・・。」
「は?他にもあんの???このスケコマシ!!!!」
「やめてよ!」
「分かったわ。カリンに教えよ。」
「やめて下さい。」
イリーナの袖を掴んで頭を135°くらいの角度で下げる。
「いやよ。絶対言う。」
「オネガイシマス。ヤメテクダサイ。」
「何で片言なのよ。誰に?どこで?それを教えてくれたら考えてあげる。」
「いや・・旅の途中でミナっていう女の子と母親が盗賊に襲われててさ・・・死にそうになっていたのを助けたら懐かれちゃって。」
「え??何??そんな危ない事してたの??ダメでしょ!!!」
テヘッ♪・・・・みたいなリアクションを取りながらエストが経緯を説明したが、内容に驚いたイリーナは眉尻を下げエストを睨んだ。
「えーー・・でも放ってはおけなかったし、それに俺、そこら辺の盗賊に負けたりしないよ?」
「そういう事じゃないわよ!!」
そう声を上げたイリーナにパン!と頭を叩かれたエストは不服そうな面持ちで首を傾げた。
「解せぬ・・・・・。」
「ふん!!」
「あははは!エスト君。もうちょっと女心を学んだほうがいいんじゃないかい?」
「・・・・考えておきます・・・・。」
一連の会話を聞いていたクレイグが笑いながらそう話して来たので、エストは少し口を窄めながらもそう答えた。
「考えておくんじゃなくて学びなさいよ!」
「分かった!分かったよ!!旅が終わったらね!」
「ダメ!今すぐによ!」
「何でだよ!!!」
ギャーギャーとそんな事を話していると、馬車は城壁を抜けイヴァリアの城下街が見えて来た。
「わぁ・・綺麗・・。」
定期的にイヴァリアに来ているイリーナが感嘆の声を上げた。ただでさえ豪華な建物が建ち並ぶ街並みが、今日は花や飾りでさらに鮮やかに彩られていたからだった。街路にはたくさんの人で溢れている。
「エスト!見てあの子可愛い!!あっちの子はウチの商品来てくれてる!!」
キャッキャとはしゃぐイリーナは、着飾っている人々の服装に目を輝かせていた。イリーナの後ろから外を覗いたエストは(おお・・やっぱいつもの服で来なくて良かった。)と苦笑した。歩く人々は大人も子供も皆きちんとした服装をしていた。優雅なドレスに身を包んでいる女性も多かった。
すると、エストが乗る馬車に1人の女性が近づいてきた。
「アルスト王国建国記念祭にようこそ!!」
そうにこやかにそう声を上げた女性は、花籠からピンクのガーベラ1本抜き取り馬車の窓を開け顔を出していたクレイグに差し出した。
「ありがとう。」
それを笑顔で受け取ったクレイグに女性は
「目一杯楽しんでくださいね。」
と嬉しそうに手を振るのだった。
****
この国の名は『神国イヴァリア』である。
そのイヴァリアという国で行われる建国記念祭がなぜ『アルスト王国建国記念祭』なのか・・・それは『イヴァリア歴元年7月28日』に遡る。
第13代アルスト王 ルアンドロ・デイズがアルスト王国から改名したのは奇しく王国が誕生した月と同じ7月だった。その際、ルアンドロは現在まで行われていた『アルスト王国建国記念祭』を止め、改名した7月28日に『神国イヴァリア建国記念祭』を行う事を『女神イヴァ』に提言したのだが、
『この国の土台を築いた「勇者アルスト」への感謝を忘れてはなりません。』
と話し『女神イヴァ』がそれを却下した。
無論、ルアンドロたちはそのイヴァの懐の大きさに涙し感謝したそうだ。
それ故この日の催しを『記念祭』と呼ぶ者もいれば『感謝祭』と口にする者もいるのだが、イヴァがそう発言したのには事情があった。
先の魔族との戦いのため、3人もの人間をこの地に召喚し魔力を消耗していたため、出来るだけ早く魔力を回復するため消費を抑えたかったのだった。
今ここでルアンドロ達の前で姿を見せている事すらも苦だったイヴァにとって
「イヴァ様。これをもって本日からこの国は『神国 イヴァリア』となりました。ここで恐れ多くも提言させていただきたいのですが、年に一度、素晴らしいこの日を『記念日』と設定しまして、記念祭を催し、世界を救ったイヴァ様の偉大さを民衆に示していただきたく存じます!!」
と喜々として提言して来るルアンドロは腹立たしい存在でしかなかった。
『この・・・余計な事を・・・・。』
それがルアンドロの提言に対するイヴァの率直な感想だった。集まって来た大勢の人族たちに自分の偉大さを知らしめる・・・それにはどうしても『魅惑』のスキルは不可欠だった。
感謝されるのは良いが、いちいちそんなに多くの魔力を消費するわけにはいかなかったイヴァは『どうしたものかしら・・・。』と必死に頭を捻っていた・・・・・のだが、うずうずしているルアンドロが「いかがでしょうか?」と答えを迫ってきた。
『チッ・・本当に余計な事ばかり・・・』
その顔にイラッとするも、どうしても『記念祭』を避けたかったイヴァが思い付いたのは『アルストへの感謝』という思ってもいない言葉だった。
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