第4章 魔力晶石編

第4章プロローグ (短めですm(_ _"m))


―イヴァリア歴16年7月14日―


ガタッ!!!と音を立て興奮気味にルアンドロが王座から立ち上がった。


「何!!!!!!!!!誠か!!!!!!!!」


絢爛豪華な王の間にルアンドロの声が響き渡る。


「はいっ!!イヴァ様がご所望の大きさの原石が発掘致しました!」


「そうか!!!!!そうか!!イヴァ様もお喜びになられるだろう!」


膝まづいている大臣が、さも自分の手柄であるかのように皺だらけの顔をさらにクシャクシャにして笑みを浮かべると、ルアンドロは安堵しドスッ!と王座に腰を下ろした。


「それでイヴァリアにはいつ届くのだ?」


「これからアリエナの工場区域に運ばれまして、研磨するのに1ヶ月強ほどは掛かるかと・・言う事です。」


「そうか・・・やはりかかるな。以前もそのくらいだったか?」


「はい。ここ、イヴァリアにある『女神の心』の大きさでさえ1か月弱は掛かりましたから。」


「そうか・・いや、それよりも見つけた事が大義だな!!!よくやった!後で褒美を出す。」


「ありがたき幸せ。」


深く首を垂れた大臣が立ち去った後、背もたれに体を預けたルアンドロは肩の荷が下りグッタリとしていた。イヴァに命ぜられてから約1年・・・ルアンドロに取っ手これほど長く感じた1年は無かった。何度も何度も女神に催促され、胃に穴が空くほど神経をすり減らしていたのだったが・・・それでも1年で見つかったのは奇跡と言うべきだ。このまま永遠に見つからないのでは・・・そう思っていた矢先の報告にルアンドロは胸を撫で下ろした。


「あぁあああああああああああ・・・・本当に良かった・・・・。」




そして




「・・・・・・。」


王座にへたり込むルアンドロの背後に垂れ下がる真っ赤なカーテンの裏で、その話の内容に驚き目を見開いているエストが息を潜めていた。





****




―イヴァリア歴16年7月3日―


「久しぶりだなぁ。」


フェリー船に乗っていたエストは、眼前に広がるアリエナの街を見渡し目を細めていた。


アルストの過去を追いホロネルまで周り終えたエストは、一度ガルシアの家に顔を出し、その後数日滞在してからグラティアに立ち寄った。


先日魔物の森で偶然出くわしたガルシアから


『まぁ、いい!!話は今度ゆっくり聞かせてもらう!!ひと段落したら遊びに来い!あと、リュナにも顔を出せよ。』


と言われていたエストがなぜ先にガルシアのもとに訪れたかと言うと、ただただ船に乗りたかっただけだった。


初めてグラティアに降り立った際に船を目にしていたエストは、アリエナに帰る時は船に乗って帰ると決めていた。


『おおおおおおおおお!!かっけーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』


8歳の頃・・・カラフルで洗練されたデザインのフェリーを初めて目にした時のエストが発した言葉がそれだった。『いつかあの船に乗ってみたい。』幼い頃からずっとそう思っていたエストにとって、リュナからグラティアに行けと言われた際に『徒歩で行け。』と言われたのはかなりの衝撃だったようだ。


それゆえ、ホロネルを出て一度アリエナに戻ろうと思ったエストの胸に自然と蘇った『フェリーに乗ってみたい。』という意欲が、エストの足をグラティアに向けた。



風を受け気持ちよさそうに目を閉じているエストの表情は、是が非でも帰りは船に乗ると決めたその行動の理由をありありと示してた。




ボーーーーーーーーーー!!!ボーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!




汽笛を上げて間もなく到着する事を知らせたフェリーがゆっくりと港に近づいていく。


「そろそろか・・・あっという間だったな・・ん!!!」


そう呟き一度大きく背伸びをしたエストは、下船するため足元の甲板に置いていたリュックを背負い直した。



「おい!!さっさと運べ!!!」


「こっちこっちーーー!!」


人だけではなく物資や魚類の運搬も兼ねていたフェリーは着岸するなり、荷物を取りに来た業者の威勢のいい声が飛び交った。そんな中、ゆっくりとフェリーに掛けられた階段を降りきったエストを待っている者は誰もいなかった。


それもそのはず、エストは誰にも知らせずアリエナに帰ってきていた。言わば驚かせたかったのだ。


「よし、じゃあ帰りますか!」


港を出たエストは青空を見上げ静かに微笑むと、さっそく農産区に向かって歩みを進めるのだった。

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